言葉よりも欲しいもの


真琴SSです。ほのぼのです。ラブラブです…
…が、床を転がりたくなるようなのは期待しないでください(涙)
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言葉よりも欲しいもの

日曜日。
オレはベッドで目が覚めた。
妙に右の腕が重い。
別に昨日は運動もしてないはずなのだが。
そう思いながら、オレは右腕の方を見る。
「………すー……」
オレの右腕を枕にして、幸せそうな寝顔があった。
幸せそうなのはいいのだが、よだれはなんとかしてほしい。
ついでに言わせてもらうと、オレのふとんは猫の毛だらけだ。
名雪だったら、一発でアレルギーだろう。
オレはそんなアレルギーがないことを、親に感謝しなくちゃならない。
それにだいたい、あの頃は冬だったからよかったが、
もう夏になろうとするのに、一つのふとんに2人は暑い。
だのにこいつがいつものように、夜中にオレの部屋に来て、
「…ぴろが一緒に寝たいって」
なんて言うもんだから…
…ダメだなんて、言わないけどな。

オレは右手を動かさないように、ゆっくり体を起こす。
それから自由な左手で、そいつの頭をくしゃくしゃにする。
「こら、起きろ。」
すると、そいつは寝ぼけながら言った。
「……ぴろ?」
…ぴろが言葉をしゃべるのか?
もしもそうならすごいことだが、もちろんそんなはずはない。
「ば〜か。朝だぞ。もう起きろ、真琴。」
オレがもう一度、今度は顔をつつくと、真琴はぼんやり目をあけて、それからぐっと伸びをした。
「……ぴろ?」
「…しつこいな。オレがぴろに見えるのか?」
「…見えない。」
言いながら、真琴はオレを見ていない。目が名雪になっている。
「ほら、起きろ。もう…10時だぞ。」
オレは時計を見ていった。
10時…何か、引っかかることが…
そうだ、昨日、名雪に10時に起こしてくれって頼まれたんだ。
部活がどうとか言ってたな。
「…いや、もうちょっと寝てていいぞ。」
オレは行ってベッドから降りた。
真琴はちらっと目をあけたが、また目をつぶってシーツをかぶった。
オレは部屋の戸をそっと開け、音がしないように廊下に出た。

名雪の部屋をノックする。
何度も、何度もノックする。
しかし、いつものように、名雪の部屋から物音がしない。
オレは溜め息をついてから、名雪の部屋のドアを開けた。
名雪は完璧に眠っていた。
寝相が悪いわけではないが、床にけろぴーが転がっている。
オレはベッドに近づくと、名雪の肩を揺らしてやった。
「名雪…約束の10時だ、起きろ。」
「……くぅ…」
目ぐらい、開いてもいいと思うが。
名雪は全然起きそうにない。
「おい、名雪!」
オレはもっと名雪を揺らす。
「………」
やっと名雪は目を開けて、ベッドから上半身を起こした。
「約束したから起こしたぞ。さあ、さっさと起きてくれ。」
オレの言葉に名雪は目をこすり、小さな声で何かを言った。
「……は?」
オレは名雪が何を言ったのか、聞こうと名雪に近づいた。
「……けろぴー」
いきなり、名雪が抱きついたので、オレはそのままベッドに倒れ込んだ。
「おい、オレはけろぴーじゃないぞ…」
「……けろぴー」
「…名雪ぃ、祐一、見ない……」
その時、後ろで声がした。
オレはかろうじて顔を向けた。
そこに真琴が立っていた。
呆然と立ちすくんでいた。
手からぴろが床に落ちた。

次の瞬間、真琴の姿が消えた。
廊下を走る足音が響いた。

オレはあわてて名雪をほどいた。
「…けろぴー…」
名雪はまだつぶやいていたが、とりあえずベッドに放り出し、オレは廊下に飛び出した。

「真琴!」
玄関を出て10m。
オレは真琴に追いついた。
「どうしたんだよ。」
オレは言いながら、真琴の手を掴んで引き寄せた。
「たいした事じゃないってのに…」
真琴はゆっくり振り向いた。
大きな瞳が揺れていた。
その瞳が、上目がちにオレを見た。
「……だって……」
…不安なの。
瞳がオレに語っていた。
溜まった涙が訴えていた。

真琴…何が不安なんだ?
ほとんど毎晩、一緒に寝てるのに、オレが何にもしないからか?
名雪がお前より前に、オレとの思い出を持ってるからか?

だって、お前があんまり安心して眠ってくれるから、オレはそれで満足だから。
だって、お前と作った思い出の方が、名雪と作った思い出よりも、ずっとずっと大切だから。
だから、お前が不安になるような、そんな理由はなにもないのに。

だけど、真琴の瞳には、そんな言葉で言うよりも
オレが今、してやるべきことは…

「……あっ……」

一瞬、閉じた目を開き、真琴は離れたオレの目を見た。
そして、それから顔を赤らめ、自分で自分の唇を、指でそっと触った。
そして、そのままオレの首に、思いっきり抱きついた。

「…さ、家に戻ろう。」
オレの言葉に、真琴はそのまま、いやいやをした。
「…でも、この格好でここにいるのは、ちょっと恥ずかしいんだけど。」
「……え?」
真琴はオレの首から手をほどくと、自分とあたりを見回した。
そして自分がけろぴーの寝間着を着たまま、裸足なことに、その時、ようやく気がついた。
「……あぅ…」
「…まったく、恥ずかしい奴だな。」
「…それを言うなら、祐一だって…」
確かに、そう言うオレも、真琴と変わらぬ格好だった。
オレたちは、あわてて家に駆け戻った。

家に帰ると秋子さんが、ふきんを手にして笑っていた。

<END>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
……どうかな。
「……甘いですね。これではラブ、くらいでしょう。転がれません。」
…美汐…転がりたいの?
「…違います。単に本当のことを言っているだけです。」
……あぅ…これが限界なんですけど…
「精進が足りません。」
…努力は認めてくださいよ…
「結果が出なくては、意味がありません。」
……しくしく
「泣いてる場合じゃないでしょう。」
…じゃあ、人のネタで思いついたの、書いてみる?
「…ラブラブですか?」
…多分。
「…では、さっそく書いてください。今夜中に投稿ですね。」
…しくしく。仕切らないで… inserted by FC2 system