7年間に口づけを


名雪誕生日おめでとうSS。

では、どうぞ。

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7年間に口づけを
 

別に…
何でもなかったんだよ…
 

「…ここで、ずっと待ってるから…」
「…帰る前に…」
「…少しでいいから…」
「…お願い、祐一…」
 

待つことなんて…
何でもなかったんだよ…
 

「…名雪ちゃん?」
「…うん?」
「三つ編み…やめちゃったんだ?」
「…うん。」
「…どうして?」
「……別に…なんとなく…」
「…ふ〜ん…」
「………」
 

そんなこと…
今は…
 

「…名雪?」
「うん…なに、お母さん?」
「…祐一さんに年賀状、出した?」
「うん…」
「…じゃあ、まだ来ないだけかしら…」
「……さあ……」
 

祐一がね…
わたしのこと…
 

「…え?」
「だからぁ〜、名雪はどうなの?好きな人、いるの?」
「…え?」
「またまた、とぼけて〜。いるんでしょ?」
「……あはは。」
「…名雪?」
「……どうだろうね……」
 

一緒にいてくれるって…
ずっと一緒にいてくれるって…
 

「…名雪?」
「…あ、香里。」
「どうしたの、立ち止まって。」
「…雪、だね…」
「…そうね。」
「………」
「…名雪?どうかした?」
「……ううん。何でもないよ。」
「……そう。」
「…うん。さ、急がないと、遅れるよ」
「え?…え、ええ…」
 

誓ってくれたから…
だから…
 

「名雪。」
「ん?なあに、お母さん」
「今度、祐一さん、うちに預かることになったのよ。」
「……え?」
「ほら、祐一さんの両親、海外転勤になったでしょう?だから…」
「………」
「…名雪?」
「………」
「……名雪?聞いてる?」
「……え?」
「…どうかしたの、名雪?」
「…ううん。何でもないよ、お母さん。」
「……そう。」
「…そうだよ。で、いつ、来るの?」
「正月が開けたら、来るって連絡あったわ。」
「……そうなんだ…」
「ええ。楽しみでしょう、名雪?」
「……そうなんだ…」
「賑やかになっていいわね…」
「……そうなんだ…」
 

寂しくて…
悲しくて…
 

「じゃあ、お願いね、名雪。お母さん、仕事で行けないから。」
「分かったよ。」
「駅前で、1時だから。頼みますね。」
「うん。」
「いつものように、遅れたりしないでね」
「…大丈夫だよ。」
「…本当に?」
「…大丈夫だよ…」
「…じゃあ、頼みましたよ。」
「…大丈夫だよ…」
 

恐かった…
忘れられてるかって…
 

でも…
 

見上げれば、時計は1時。
駅前の雪をかぶったベンチ。
舞い降りてくる雪。
白い雪。
灰色の空。
舞い落ちる
風に舞って落ちる雪。
何もかも埋めるように…

「…すまん。待ったか?」

「…ううん。ぴったりだよ。」

「…しかし、別にこんなとこで待ってなくても、家で待てばよかったのに。」

「……待っていたかったんだよ。」

「……?」

「…待ってるのも、別に何でもないから。」

「………」

「本当に、何でもないから…」

「………名雪。」

「なあに、祐一?」

「…一つだけ、聞いてもいいか?」

「…なあに?」

「寒く…ないか?」

「………」

「缶コーヒー、ないけど…」

「……祐一?」

「…一つ、願いをかなえてやる。」

「………え?」

「誕生日のプレゼント。今、一つだけ、願い、かなえてやるから。」

「………」

「…何でも、言ってみろ。」

「……じゃあ…」

「……?」

「……抱きしめて。」

「……おう。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「キス…して…」

「……願い事は、一つだけだぞ…」

「…………」

「…………」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

それだけでいいから…
これからあなたがいてくれたら…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

わたし、待てるよ…
二時間でも…
7年でも…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

待っててよかったって思えるから…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

抱きしめてくれる暖かさ
あなたの温もりの中で
きゅって抱きしめられながら
7年間に、口づけを…
 

<END>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です」
…まあ、こんなもんだね。オレが書ける名雪って。
「…誕生日記念ですから。」
…本気で、名雪で何か、長いの書いてやりたいね…最近、進行役ばかりだから…『明日の君…』再検討、ちゃんとやろう…
「…そうですね。」
…では、名雪の誕生日に…おめでとうを。そして、メリークリスマス… inserted by FC2 system