花束 〜Bouquet&You〜


佐祐理さんSS。誕生日おめでとう企画。

では、どうぞ

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花束 〜me&you&Bouquet
 

今年はいったい何をプレゼントしてくれるのでしょう?
舞の顔を見ながら、思わないではいられなくて。
 

ねえ、舞。
あなたは気がついていたのですか?
あの時、佐祐理が…
 

そう
誕生日の日
花束を抱えて、あなたが佐祐理の部屋の前に立っていた日。

あなたは途中で何度も電柱にぶつかって
赤くなった鼻で部屋の前に立って
やっとのことで抱えた山のような花束
ドアを開けた佐祐理にさしだして
 

その時、佐祐理は思わず笑いながら

『どうしたんですか、舞、その鼻の頭』

言ったら、あなたはやっぱり顔色を変えずに

『…前が見えなくて、電柱にぶつかった。』

それが一度や二度ではないことは、その鼻の頭の赤さで分かったから
佐祐理は思わず大笑いして
声を出して笑いだして

あなたの顔を見ながら
笑いましたけど

あなたはやっぱり顔色も変えずに
佐祐理の顔を見つめながら

『誕生日おめでとう』

一言言って
その花束を差し出して
 

でも
佐祐理はまだ笑っていましたね
涙が出るほど笑っていましたね
涙が出るほど
 


 


本当はあの涙は

だって
あなたはなにも言わなかった
誕生日を知ってるなんて知らなかった
あなたの誕生日は聞いて知っていたけれど
佐祐理の誕生日は教えたことはなかったから
だから

そしてあなたの言葉

『誕生日おめでとう』

いつも聞いている
誕生パーティーで大人たちから
大きなプレゼントと一緒に渡される言葉
たくさんの人
たくさんの言葉

だけど
あなたの言葉は
 

ねえ
気付いていたのでしょう?
あの時の佐祐理の涙
本当はおかしかったからじゃなくて
本当はあなたのその優しさが
佐祐理には本当にうれしくて
 

だからですよね

あなたは佐祐理に花束を差し出して
黙って差し出したまま立っていてくれて
佐祐理が受け取るまでずっと立っていてくれた

いっぱいの花束からの甘い香り

あなたは黙って立っていてくれた
佐祐理を見つめて立っていてくれた

鼻を真っ赤にしながら
 
 

ねえ、舞

今年はどんなプレゼントを佐祐理にくれるのですか?

何度聞いても、答えてくれないけれど。
祐一さんの姿も見えないけれど。

今年は3人だけの誕生日。
パーティーはないけれど
たくさんのお祝いの人たちもいないけれど
佐祐理は本当に楽しみにして


そして
祐一さん
そして

佐祐理は本当に楽しみにして

「…ねえ、教えてください、舞。」

部屋の前
振り返って言っても舞は黙って

去年の日の顔で黙って佐祐理を見て

甘い香りに包まれたあの日の
無表情なように見える
だけど優しい顔
 
 
 

甘い香り
 
 
 
 
 
 
 
 
 

かちゃっ
 
 
 
 
 
 
 
 
 

甘い香り
部屋いっぱいの香り

部屋いっぱいの
花束
 
 
 
 

「誕生日、おめでとう。佐祐理さん!」
「…おめでとう、佐祐理」
 
 
 
 
 
 
 
 

「…ありがとう…」
 
 
 
 

ありがとう

一つ
佐祐理は
わたしは
幸せに近づくことができました
きっと

だから
誕生日に花束を
わたしの生まれた日に
 

<END>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…佐祐理さん、誕生日おめでとう。
「…またいきなり…」
…だって…マジで今日思い出して、今日書いたから。即興の最たるもの…だから、例によってお手軽モノローグ(苦笑)
「分かってるなら…もうちょっと考えて書けばいいのでは。」
…あはは…鬼門だし。まあ…これ以上はどうせ無理。温泉ボケだし(爆)
「…はあ。まあ…では、分身のわたしからも…誕生日おめでとうございます、倉田先輩。」 inserted by FC2 system