- こんにちわ -

(Forget me, Forgive me / Original Side-Real Epilogue)


栞&あゆSS。
このSSを、このシリーズ群をとても愛してくださった飛鳥夢路さんに捧げます。

シリーズ:Forget me, Forgive me / Original Side

では、どうぞ

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わたしたちは望みました
わたしたちは願いました
わたしたちが祈りました

互いに手を繋ぎ
互いの目を見つめ

ただ一つのことを
ただ一つの願いを

この酷い夢の中で
この冷たい現実の中で
このわたしたちが夢見た現実の中で

たった一つの真実
わたしたちが知った
真実
 

それは
 

   - こんにちわ - (Forget me, Forgive me / Original Side-Real Epilogue)
 

12月24日 Christmas Eve
 

紅い空
雲一つない赤い空
公園も
噴水の水も
赤く染まっている。

公園のベンチ
わたしは一人座って
遠い落ちる夕日を
ぼんやり眺めている。

遠い
紅い
夕日はまるであの日のように
真っ赤に染まりながら落ちていくのが見える。
わたしとあなたがこの場所で出会ったあの日のように

あの日と同じ夕暮れ
あの日と同じ冷たい風
あの日と同じ水しぶきが跳ねるこの噴水そばのベンチで
わたしは待っています。
あの人を待っています。
待っています。

待つことはなんでもありません。
わたしの中の死は、今はもういないから。
わたしを待ち受けていた死
あなたを待ちうけていた死
わたしたちの現実は
今はもういないから。

ここで待ち合わせと決めたのはわたしでした。
わたしが言いだしてここに決めました。

なぜでしょうね?
わたしにも分かりません。
でも

ここがふさわしいと思ったんです。
このクリスマスの日に
この天使が降る日にあの人と会う場所として
ここがふさわしいと思ったんです。
ここしかないと思ってしまったんです。
真っ青に晴れた空を見上げていたら
雲一つない空を見上げていたら
銀に光る雪を見つめていたら
なぜか思ってしまったんです。
あなたの顔を思い出しながら
思ってしまったんです。

どうしてでしょうね?
わたしにもよくわかりません。
あなたのあの小さな羽が
天使を思い出させたからかもしれません。
あなたのあの白い羽が
噴水を思い出させたのかもしれません。

ううん
違いました
わたしは分かっているんです。
ここで待ちあわせをしたのは
ここと決めたのは

分かっています
あなたの夢を見たからなんです。

最近、夢を見ました。
あなたが笑っている夢。
わたしを見て笑っている夢を見ました。
あなたが微笑んでわたしを見ている夢を。

だからだと思うんです。
わたしがここに座って
そして夕日を眺めながら待っていることにしたのは。

何だか自分でも分かりませんけど
それがふさわしいと思ったんです。
わたしには分かっていたんです。
なぜだか分からないけど
わたしには分かっていたから
 

だからわたしはこの場所で
この真っ赤な空の下で
待っているんです
待って
 

わたしが待っているのは
 

わたしが信じているのは

わたしには分かっていました
それは分かっていたことでした
 

Some Sunny Day, We'll meet Again
 
 

わたしたちは出会う
ある晴れた日に
わたしたちは出会うから
きっと出会うから
その時は
微笑みながら

きっとわたしたちは微笑んで
 
 
 
 
 
 
 
 

微笑んで
 
 
 
 
 
 
 
 
 

微笑みながら
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

見た
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「こんにちわ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

真っ赤な夕日
落ちていく陽
真っ赤に染まった空
真っ赤な空の下

真っ赤に染まった雪
あの夜には銀に輝いてた雪
真っ赤に染まった雪の中
わたしは手をかざして
あの日しっかり繋いだ
その温もりが今も残っている手をかざして
 
 
 

見た
 
 
 
 
 
 
 

見つめて
 
 
 
 
 
 

分かっていました。
わたしには分かっていました。
今日がその日なんだって
あの青い空を
この赤い夕日を見て
分かっていたんです。
分かっていたんですけど
 

何も言えませんでした。
ただわたしは顔を見つめていました。
夕日に真っ赤に染まった顔を
わたしを見ながら微笑んでいる顔を
その大きな瞳を
背中の白い小さな羽を
わたしは
 
 
 
 
 
 
 
 

「こんにちは」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

もう一度
あなたが言ったから

わたしは目をこすって
涙を拭きながら
どうしてもこぼれ落ちる涙を拭きながら

わたしが待っていた人
わたしが会えると
また会えるとずっと信じていた人

わたしの夢を見ていた人
わたしと同じ現実を泣いていた人
わたしの友達
そして
わたしの分身に

わたしは
 
 

言いました
 
 
 
 
 
 

「……こんにちわ」
 
 
 
 
 
 
 

そして
なんとか微笑んで
わたしは
 

あゆさんは
 
 
 
 
 

そうですね
今日に決まっていたんですね
だって
 
 
 
 
 
 
 
 

「メリー・クリスマス」
「メリー・クリスマス」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

今日は天使が降る日だよ…
 
 
 
 

<END>

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今さら何を言うこともありません。

既に終わってしまった話をまだこうして書いていることや
センチベタベタな話だってことや
全く不要な話であるということや
もうわたしにはあの栞は書けないのだろうなということや
そんなことはわたしにも分かっているのですけれど

このエピローグは書きたかった。
これがわたしのF,F/OS、わたしの栞シナリオの本当のエピローグだから。

そしてこんなでき損ないの、意味のない話ではありますが、
あのF,Fの栞をとても愛してくださった飛鳥夢路さんに、このSSを捧げます。

2000.12.24 LOTH

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