初のメールSS(主星さんのまねー)
 『M.W.』『ぶらんこ』統合エピローグ(LOTHさんのまねー)

 ……おりじなりてぃー、ゼロ(苦笑)
 

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     『はじめまして』
 
 

 ……きいっ…きいっ……

 ぶらんこの音が、誰もいない夕方の公園に響いている。

 ……きいっ…きいっ……

 乗っているのは黒髪の少女。意思の強そうな目をした、でもどこか寂しそうなそんな少女が、ひとりでぶらんこを揺らしている。

 ……きいっ…きいっ……

 どこからか、子供たちの声が聞こえる。
 誰が木から落ちただとか、
 誰の球が速くて打ちにくいだとか、
 今日の晩ご飯は何だろうとか。
 終わってしまう今日を惜しむような、夕日のほうからそんな声が聞こえる。
 そして、明日は何をしようとか。
 少女は静かにぶらんこをこいだまま、そんな景色をじっと見つめた。
 大きく揺れる街並みの中で、じっと動かない真っ赤な夕日。
 風を切るたびに耳鳴りがして、かすかな笑い声がその奥でこだまする。
 夕日を閉じ込めた少女の瞳が、始めて少しだけ震えた。その時、

 ……きいっ…

 錆びたような音。聞きなれた、でも少し控えめな音に、少女はふと横を見る。

 …きいっ……きいっ…

 一人の女の子がぶらんこをこいでいた。
 少女の隣で、ゆっくりと、どこか遠くを見るように、ぶらんこをこいでいる。
 しばらくその横顔を見つめていた少女も、やがて正面に視線を戻した。

 ……きいっ…きいっ……
 …きいっ……きいっ…
 
 オレンジ色に染まった小さな公園に、二つの不調和な音が響く。

 ……きいっ…きいっ……
 …きいっ……きいっ…

 どちらも、何も言わないまま。
 ゆっくりと…ただ前を見て、ぶらんこをこぐ。

 ……きいっ…きいっ……
 …きいっ……きいっ…

 そしてやがて、夕日が沈む。
 
 

 黄昏色の空気が、二人の少女を静かに包む。
 西の空にはまだ照り返しの赤が残っていて、雲は二色に塗り分けられている。

 少しだけ、風が冷たくなった。
 東の空に一番星が見えた。
 遠くから流れていた子供たちの声も、聞こえなくなった。

 …そして…

 ……きいっ…きいっ……
 …きいっ……きいっ…

 ……きいっ…
 ………きいっ。

 どこか切ない音を残して、ぶらんこは止まる。
 黒髪の少女は、土で黒くなった自分の靴を見つめていた。
 もう一人の少女は、だんだんと暗くなっていく西の空を眺めていたが、やがて静かにぶらんこを降りた。

 ………きいっ…

 後ろ髪を引くように、もう一度金属が音を立てる。
 それに重なって、少女は口を開いた。

「……ねえ」

 黒髪の少女は顔を上げた。そして黙って彼女を見上げた。
 おぼろげな明るさの中で、彼女は微笑を浮かべていた。

「…わたし、さゆり。…あなたは?」

 黒髪の少女は無表情の中にも驚きのエッセンスをのぞかせて、黙って彼女を見つめていた。
 しばしそんな時間が流れて、やがて小さくこう言った。

「……まい」

 その答えに、さゆり、と名乗った少女は、うれしそうに顔をほころばせる。

「…ねえ、まい、って呼んでいい?」
「……うん」
「わたしのことも、さゆり、でいいから」
「……うん。…さゆり」

 さゆりは大きくうなずいた。
 まいも小さくうなずいた。

「…はいっ」

 さゆりは右手をさしだした。
 うごいていないぶらんこに、まだ乗りつづけているまいに。

「…………」

 まいはしばらく驚いたようにその手を見つめていた。
 さゆりの笑顔を見つめていた。
 そして…

「……うん」

 まいはさゆりの手をとった。
 それから静かに立ちあがり、汚れたお尻をぱんぱん、と払う。
 右手はつないだままだった。
 星の数が少し多くなった気がした。
 優しく静かにそよぐ風が、二人の髪をさらって…

「……帰ろっか」
「……うん」

 二人は並んで歩き出した。
 つないだ手と手をはなして、またつないで。
 二人はゆっくり歩き出した。
 

                                                                                  <終>

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 これは幻の話です。
 二人の夢の世界です。
 でも、ホントの話です。
 きっと。

 LOTHさんがよく言う言葉ですが、私たちの業は深いですね。
 私が『ぶらんこ』を書いたのも、その「業」から逃れたかったのかもしれないですが…
 でも、ムリでした(苦笑)
 私の彼女に対する業は深すぎました。
 罪や罰や赦しなどとは、きっと違うところで。

 「Kanon」本編をやったとき、私の中で彼女は幻のような存在でした。
 幽霊のような儚さが、どうしても消えずに残っていました。
 だから私は『M.W.』を書いて、その償いのように『ぶらんこ』を書いた。
 彼女は私の中で、ようやくスタートラインに立てそうです。
 …ホントは「立てました」といえればいいのですが、どうもあのラストでは…(汗)
 だから、一歩前か、二歩手前です。
 やっと私は彼女の話が書けそうです。
 その前に、佐祐理さんの恋…なんてのも書きたいのですが…私が書くと悲恋になるか(苦笑)
 

 それでは、ここまで読んで下さったみなさん(というかmail行ったみなさん)、ありがとうございました。
 少しでも佐祐理さんが好きになってくれれば、私としては成功なのでしょうか(笑)
 私は多分…仮掲示板の方には投稿しないと思うので。復旧したとき、記憶の片隅にでもあれば幸いです。
 とりあえず余暇(笑)は…練習と…
「長編を一本読みたいですねーっ」
 …うがぁ…どうしてこんなところにまで…
「あなたの行くところなら、どこへでも行きますよ。わたしは」
 …うぐ…そのセリフは確かに浪漫かもしれないけど…
「こう言え、って、香里さんに言われましたーっ」
 …悪女…
 
 

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