『遠い処から還ってきた少女』
間奏 〜夢の中〜
……あぅ？
あっ、気が付いた？
………誰？
ボク？
えへへっ
ボクは天使
小さな天使
おんなじ処をぐるぐる廻る
ホントは遠くに飛んでいきたいけど
ボクには羽がないから
飛びたつことができなくて
だから
おんなじ処をぐるぐる廻る
ぐるぐるぐるぐる廻り続ける
あぅ……あたしは？
キミ？ キミも天使……なのかな？
う〜ん、よくわからないよっ
でもね
此処にいるってことは、たぶん天使なんじゃないかと思うよ
天使って、何をしてるの？
みんなに幸せを届けるんだよっ
みんなの願いを叶えて、みんなが幸せな道を歩けるようにするんだっ
ボクには羽がないから
みんなを笑顔にすることはできないけど
キミには立派な羽があるはずだから
きっとみんなを笑顔にすることができるはずだよっ
………ふ〜ん
……なんかやる気なさそうだねっ
だってやる気ないもん
どうしてっ
それがボクたちの役目なんだよっ
キミには何処にでも行ける羽があるのにっ
それなのに、どうしてっ
あたし、天使なんかじゃないわよぅ
あたしは『人間』なんだから
そんなことないよっ
だってキミは此処にいるんだからっ
それに……
それに？
あたしは、あいつが笑顔でいればいいから
あいつが幸せなら、それだけでいいから
…………………
みんなが幸せなのはいいことだけど
あたしがいないと、きっとあいつは笑顔になれないから
だからみんなを幸せにしてるヒマはないの
………そんなの…ひどいよっ
…………………ボクだって……
ボクだって本当はそうなんだから……
ボクの大好きな人が笑顔になれば
それだけでボクも幸せになれるんだから……
じゃあ、それでいいじゃない
でも
ボクは天使だから
みんなを幸せにしなくちゃいけないから……
ふ〜ん、天使って大変なのね
うぐぅ……
じゃあ、あたしそろそろ行くわね
えっ？ もう行っちゃうの？
ここにはあいつがいないから
あいつのところへ戻らなくちゃ
そっか……
行っちゃうんだね
あんたも一緒に来る？
……ううん
だってボクには羽がないから
だから、一緒には行けないんだよ
そう…じゃあ、ね
うん……バイバイ
あ、そうだっ
えっ？
天使さん、みんなを幸せにするんでしょ？
う、うん そうだよっ
じゃあ、あたしのことも、幸せにしてくれる？
……そうだねっ 頑張るよっ
えへへっ ありがとっ
じゃあね
……うん
あ、それともうひとつ
えっ？ なに？
天使さんがみんなを幸せにする
うん
じゃあ、天使さんのことは
誰が幸せにするの？
えっ？
それは…………
わから…ないよ…ボクには……
ふ〜ん、つくづく天使って大変ね
もし、あたしが天使だったら
真っ先にあんたを幸せにしてあげるんだけどな
えっ？ どうしてっ？
だって
天使さん、すっごく悲しそうに見えるよ
幸せをはこぶ天使が、全然幸せそうじゃないなんて
なんかおかしいでしょっ
……そ、そんなことないよっ
ボクは元気で、幸せだよっ
うん、だったらいいけど
それじゃあ、本当に行くね
うん…バイバイ
また、会えるといいね
そう？
うぐぅ そうなんだよっ
あははっ 冗談よぅ
また会えるといいわね
うん、本当に会えるといいね
じゃあねっ
……………行っちゃった
遠い処へ行っちゃったんだね
うらやましいよ
ボクも
ボクも帰りたいよ
大好きな人の処へ
……………本当は
本当は分かってるんだ
ボクも天使なんかじゃないってこと
でも
それを認めちゃうと、此処にいることもできなくなりそうで
此処にいれば、まだ微かだけど大好きな人のぬくもりを感じることができるから
だから…………
ボクは天使
小さな天使
おんなじ処をぐるぐる廻る
ぐるぐるぐるぐる廻り続ける
でもいつかは
遠い処へ飛んでいきたい
此処から遠い、あの場所へ帰っていきたい
それだけを夢見て
今は……
おんなじ処をぐるぐる廻る
ぐるぐるぐるぐる廻り続ける
ぐるぐる
ぐるぐる
ぐるぐる
ぐるぐる…………
To be continued