『遠い処から還ってきた少女』


epilogue II〜夢の跡〜


















何処にもない場所



何時でもない時の中











……あぅ?


あっ、気が付いた?

 



………誰?

 



忘れちゃったの? 前に会ったことあるよ

 



……そうだっけ? 忘れちゃったわっ。




うぐぅ、しかたないね……


こほんっ!


ボクは天使っ


小さな天使だよっ





…………………よいしょっと。

 


うぐぅ、無視しないでよっ

 


ごめんね。あたし行く処があるから、

 

ここでのんびりしてるワケにはいかないのよっ。

 


何処へ行くの?

 


お家に帰るに決まってるじゃないっ。



お家って何処にあるの?

 


あぅ……そんなのも知らないの? 



歩いてれば自然に辿り着ける場所がお家なのよっ。

 




そうなんだ。知らなかったよ

 



なんにも知らないのね、あんた。

 


うぐぅ……そんなことないよっ

 




まあいいわっ。それより早く行くわよっ。

 



えっ? ボ、ボクも一緒に行って、いいの?

 



へ? あんたずっと此処にいる気?


 


だって……ボクには帰るお家がないんだよ


 


あんた…あたしの言うことちゃんと聞いてたっ?



歩いてれば、誰でもお家に帰れるものなのっ。



帰るお家のない人間なんていないのよっ!


 


うぐぅ……でも……ボクは人間じゃないよ……


 


へ? 人間じゃないなら、何だっていうのよっ? もしかして、狐っ? あははっ。


 


違うよっ!



じゃあ、何なの?



うぐぅ、さっき言ったよっ。ボクは天使だってっ。




……ぷっ、あははははははっ! 天使っ? あんたがっ?

 



そうだよっ! わ、笑うなんてひどいよっ!!

 



あはは……だ、だって、あんた、なんかドジそうだしっ……



……全然イメージじゃないから…あははっ、おっかしい……

 




うぐぅ……ひどい………

 




あぅ……ご、ごめん。ちょっと笑いすぎたかな。

 



………いいんだよ。……ボクはきっと天使でも、人間でもないんだ……

 



そ、そんなに落ち込まないでよぅ。



……わかったっ、じゃあ、ほらっ。


 


………なに? その手?


 


いいから、手を繋ぎなさいよっ。


 


………どうして?



あたしが、お家に連れてったげる。


 



えっ?





あんたが人間でもそうじゃなくても、



あたしとずっと手を繋いでいれば、



お家に帰ることができるでしょ?


 



でも……其処はキミのお家でしょ?


 


大丈夫よっ。祐一は1人くらい増えたって気にしないわっ。



 


祐一………君?


 



そうっ、祐一が居る処が、あたしの帰る場所なのっ。


 



ボクも…………祐一君って男の子を、知ってるよ



 


ふーん、偶然ね。あんたの知ってる祐一って、どんなヤツなの?



 



……僕の知っている祐一君は……



……いじわるなことばかり言ってて………



……でも、ホントはすごくやさしくて……



……いつも、いつも……ボクのために一生懸命で……






……………会いたい?




えっ!?




その祐一に……会いたいの?




………うん、会いたいよっ

 




……なんだ。じゃあ、あんたにも帰るお家があるじゃないっ。


 



えっ? ……どういうこと?


 



だからっ、会いたい人がいる場所を、お家って言うのよっ。



あんたには会いたい人がいるんだから、その人がいる処に帰ればいいのよ。


 




………帰れるのかな………




帰れるに決まってるわっ。



言ったでしょ、歩いてれば、誰でもお家に帰れるものだってっ。


 



……うん、そうだねっ……


 



じゃあ一緒に行きましょっ。ほらっ、早く手を繋いでっ。



 



………うん……………ありがとぅ…………



 



し、仕方ないでしょ。あんた1人にしとくの、なんか不安だしっ。



それに……………………



…………………………あたしも1人で行くの……ちょっと怖いし…………。


 



えっ!?




な、なんでもないっ!



さあっ、行くわよっ! 早くお家に帰らなくちゃっ!




 



うん………帰ろうっ!










 












光の中をふたりで歩く



飛んでるみたいに身体が軽くて



手………あったかくて



心も………あったかくて



隣りを歩く少女に



みんなに幸せをはこぶ少女に



ありがとうって



何度も何度も



ありがとうって



白い光の中



夢見てたあの場所へ


 

 

 

 

 

 

 

 

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