申し訳ないコメントもどき

文責:LOTH


えっと…いきなり、『申し訳ない』『もどき』になってしまっているコメントなんですが…
というのは、中身に対するコメント云々よりも、延々、言いわけをし、かつ自分のことを語るだけで終わるだろうからです。

では、言い訳、その1。
こんな素晴らしいSSを、わたしに捧げてもらえるとは、実はわたしは思っていなかったのです。
いや、sainsainさんご本人からは『捧げてもいいですか』という話はされていたのですが…
途中までの出来や、その長さから見て、きっとわたしなどに捧げようなどという気を失うに違いないだろうと高をくくっていまして…
実際に完結してから、本当に捧げられて、ちょっと…いや、すごくびっくりしている、というのが本音です。

そして、言い訳、その2。
…わたしにはこんな素晴らしい話をいただく資格はないと思うのです。
というのは、わたしは…ほのぼの書きを自称していながら…本当の意味で、優しい話を書いたことなどないからです。
この話に見たとおり…sainsainさんはとても優しい方だと思うのです。
優しさって何?という話もあるでしょう。優しい雰囲気。優しい気持ち。優しい…
わたしは、SS書きにとって、いや、物書きが優しいということは、実は結構、致命的なことでもあると思います。
というのは、優しい話を書こうとすれば…優しくキャラを包もうとすれば…実は、ご本人もおっしゃっているように、
安っぽい、安易な話を書かざるを得ないことがあるからです。
全ての人に…全てのキャラクターに優しい話を書こうとすれば、きっとご都合主義で、リアリティーもなくて、安易で、安っぽい話…
そんな話を書くことになってしまうかもしれない。いや、そうなることが半ば決まっているとわたしなぞは思うのです(失礼)

でも、物書きというものは、『こんな話を書くなんて、オレのプライドが許さない』とか、『こんな話ばっかり書いてると満足できない』とか、
そんな勝手な理屈で、そんな話を書くことを拒否します。
そして、緻密なドラマを、リアリティを追っていく…
でも、それだって実際にはただのフィクションだし、嘘だし…勝手です。
人を落としといて引き上げても、そんなのは本当は優しさじゃないからです。
癒しとか何とか言っても、読んだ人は癒されても、本当の意味でキャラクターは…キャラに対する愛は、それで満たされるわけがないからです。
満たされた気になっているとしたら、それは勝手な自己満足で…うぬぼれで、傲慢でしかないからです。
実際に自分がキャラになって、キャラと同じ目線になって…彼らと友達になれば、それは明らかなのです。
でも…そんなひどい話をこそ、人は評価し…また、良い話として残っていくことも確かなのです。
ある意味でそれは正しい…でも、間違いでもあると思います。

sainsainさんは…真琴と、一弥くんと、栞と、祐衣と…あゆと友達になって、そして彼らと一緒に幸せになっていると思うのです。
それは素晴らしいことだって、わたしは思うのです。
省みれば、わたしは…常に一人の人間しか幸せにしてない。
シリアスと言い…ほのぼのと言いながら、いつも他のキャラ達には目をつぶった話…そんな話しか、常に書いていないのですから。
それがわたしの幻燈の限界…淡い幻燈の光の、限界なのです。
ですから…全てのキャラクターに幸せを与えようとし、また与えることができるこんな話を…
わたしのような幻燈屋風情が頂くのは、過分に過ぎる行為…そう思うしかないと思うのです。
でも、こうして頂いてしまった…だから、こうして言い訳などしている、そういうわけなのです。

さあ、このへんで下らない言い訳はやめましょうか。
こんな素晴らしい話の最後に…ひどいコメントもどきを書いているものだと、我ながら苦笑することしきりです、さしものわたしでも…
でも、言わずにはいられない…そんな、素晴らしい話なのですから。

最後に、ちょっとだけ、わたしとsainsainさんのことを語って…終わらせてください。
わたしとsainsainさんの出会いは…Keyさまの旧掲示板でした。
多分、時期的に見て、sainsainさんはわたしを『Forget me, Forgive me』で初めて見たのではないかと思います。
…非常に不幸な出会いですね、お互いにとって(苦笑)
一方、わたしがsainsainさんに注目しだしたのは…あとがきにもあります、『The Divine Invasion 〜白光〜』、
『遊び場にて  〜Now Wait for Last Year〜 』というSSを見たところからはじまります。
なぜわたしが注目したのか…sainsainさんははっきり言っておられませんが、
まず、題名が…わたしの大好きな作家、P.K.Dickの作品から取っておられるからです。
その題名でどんな話が書けるのかと覗いて…そして、この人はと思った、それがわたしにとっての出会いでした。
ちなみに、今回の『遠い処から還ってきた少女』の副題、"Time Out of Joint""World of Chance"も同じくその作品からですね。
(なお、上記2つの作品は、sainsainさんもおっしゃっているように、あゆと…奇跡と、大きな木というモチーフ、そして救いのテーマ…
その意味でも、確かに3部作と言っていいものだと思います。)
わたしはそれらにコメントし…当時はわたしは他の人にコメントすることはなかった頃なのですが…
その後、掲示板消失があり、その頃に開いたわたしのページにsainsainさんが来てくださって、そこに置いてあったSSたちに感想を下さり…
過分な賞賛をくださって…そうして今、このSSを捧げてもらうことになった次第です。

さて…このような素晴らしいSSを捧げられて、わたしはどうすればいいのやら、少し困っています。
とりあえず…わたしのくすんだガラス玉たち、わたしの幻燈の主人公たちにこの話を見せて、そして一緒に喜びましょう。
『ほら、こんな素晴らしい話で、お前たちも幸せになってるよ』って、ガラス玉たちに話して…一緒に抱いて寝るとします。

…実際には、sainsainさんもおっしゃっているように、もう一人…真琴と言えば出てくるはずのお方が(苦笑)残っているのですが。
この方は…わたしが責任持って幸せにしてあげないといけない…わたしの原罪。そして…分身のお方。
この方は…わたしの方でも、わたしの幻燈で幸せに映してあげよう、そう思いながら…

この素晴らしい話の、全くもって蛇足にして汚点のようなコメントもどきを終えます。
sainsainさん、本当に申し訳ありません。
そして…感謝を。本当に、尽きぬ感謝の念をこめて…

本当に、ありがとうございます。

2000.6.28 LOTH

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