Forbidden lover  3rd
 

この話は続き物です。前2回を読んでからどうぞ。
あと、俺が勝手に作った設定がいくつか出てきますのでそういうのが嫌だって方は読まない方がいいと思います。
 
 
 
 

 
 

私は、夢を見ている。
『お父さん!お母さん!』
 これは、夢。
『いやだ!いやだよ……』
 自分で、自覚している。
『私を――』
 だから、
『私を、おいていかないで……』
 どんなに叫んでも、とどかない。
『私を、ひとりにしないで……』
 どんなに、叫んでも……
 
 
 
 
 
 
 

        “Forbidden lover”
 
 
 
 
 
 
 

 最悪の寝覚めだった。
 寝汗で体がベタついて気持ち悪い。
 体を起こす。
 何だか頬が冷たい。
 触れてみると濡れていた。
 どうやら泣いていたようだ。
 どんな夢かは覚えていなかったが。
 気怠い体を引きずるように私はベッドから這い出した。
 
 
 
 
 
 
 

「おはよう」
 リビングに出た瞬間そう声をかけられ、私はしばし呆然とした。
『おはよう』
 こんな言葉を聞くのはいつ以来だろう。
 最後に聞いたのはいつだっただろうか……
「どうしたの?」
「あ……い、いえ」
 久しぶりに口にする言葉。
 何だか、嬉しかった。
「おはようございます」
「うん、おはよう」
 テーブルに目を落とすと、朝食が並んでいた。
「あの、これ……」
「ああ、このくらいはさせてもらってもいいかな、ってね。そこに料理の本もあったし」
 そういって、ちょっと前に気まぐれで買った料理関係の本を指さす。
「私、朝は……」
 そこまで言って言葉を切った。
 目の前の料理を見る。
「どうしたの?」
 くすり、と笑って椅子に座る。
「いえ、何でもないです。
「……何でもなくないよ。今笑ってたでしょ。確かに見た目は――」
 彼の言葉を横目に、料理に口をつける。
 あまり美味しいとは言えない味だった。
 でも、こういうのもいいな、と思った。
 ひとりじゃない、二人で食べる食事も。
「ご馳走様でした」
 彼が、笑う。嬉しそうに。
 子供っぽい、無邪気な笑顔。
 私も、笑い返した。
 笑うのは得意じゃなかったけど、今はうまく笑えてる自信があった。
 
 
 
 
 
 
 

「そう言えば」
 後片付けが終わって、二人でお茶を飲んでいたときにふと思い出して私は言った。
「あなたの名前、まだ聞いていませんでした」
 今の今まで名前も聞いていなかったなんて何だか間抜けな話だ。
「名前?」
 聞き返す彼。
 こくん、と頷く私。
「名前、名前……」
 うーんうーん、とひとしきり悩んでから、彼は言った。
「思い出せない」
「そう、ですか……」
 少し考え込んでから私は言った。
「とおる、と言うのはどうですか?」
「とおる?」
「こんな字を書くんです」
 私は髪に漢字を書いた。
『透流』
 それを、彼に見せる。
「透流……うん、いいね。気に入ったよ」
 そう言って、微笑う彼。
 私は、彼の笑顔をずっと見ていたいと思った。
 ずっと、いつまでも。
 こんな朝が続けばいいと。
 そう、思った。
 
 
 
 

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  おはようございます。
  香里「おはようございます」
  三回目です。最初の注意書き読んどいてください。
  香里「あんまりしゃべることないわね」
  そうだな。多くは語らずまた次回。
  香里「お会いしましょう」 
  それでは
  香里「しーゆー♪」
 
 

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