Forbidden lover 5th
 

真琴シナリオネタバレです。というかやってないと意味不明です。
 
 
 

 苦しそうな吐息
 発熱する体。
 私は、為す術もなくそれをただ見ていることしかできない。
 やがて、その体が光に包まれ――消える。
 私の中で何かが音をたてて砕け散った。
 
 
 
 
 
 

       “Forbidden lover”
 
 
 
 
 

 私は、闇の中にいる。

 暗くて深い闇の中。

 抗うことはできない。

 ただ、落ちて行くだけ。

 深く、深く。
 
 
 
 
 
 

 何日たったのかわからない。
 どのみち、時間の経過なんてどうでもよかった。
 いまも、彼の消えた布団の上で、
 彼の最後のぬくもりが消えた場所で、
 私は、動けない。
 何でだろう。
 泣けないよ。
 辛いのに、
 悲しいのに、
 泣きたいのに。
 ドウシテ、私ハ泣ケナイノ―― 
 
 
 
 
 
 

 深く、深く私は沈んでいく。

 闇の中。

 だけど、この闇は心地良い。

 もっと潜ろう。

 もう、何も感じなくていいように。

 三度目を起こさないように。

 やがて、闇の中になにかが現れた。
 
 
 
 
 
 

 ふらり、と立ち上がる。
 ふと、視界に入った姿見に知らない人がいた。
 目を凝らす。
 何のことはない、私だった。
 こんなくしゃくしゃの顔じゃわからないのも無理はない。
 一度も泣いていないのに、非道い顔だ。
 ふらっ、とよろける。
 鏡の中の私の髪が、揺れた。
 

     『美汐の髪、綺麗だね』
 

 瞬間、私は駆け出した。
 リビングへ行ってカッターナイフを手に取る。
 カチカチ、と刃を出して、目的の場所へ宛う。
 そして、一息に、引いた。
 

     『うん、綺麗綺麗』
 

 荒い息。
 震える手。
 闇の中に舞う――私の髪。
 カッターナイフが私の手を離れ、カラン、と落ちる。
 自分で切り落とした髪を胸に抱く。
 ぽたっ。
 雫が落ちる。
 何?
 涙?
 泣いているのは――私?
 ぽたっ。ぽたっ。
 やっと、泣けるよ。
 思い切り、泣こう。
 涙が枯れるまで、思い切り。
 ずっと、ずっと私は泣いた。
 泣き疲れて、涙も出なくなって、その場で眠ってしまうまで、ずっと。
 
 
 
 
 
 

 私は、手を伸ばす。

 手が届く直前で、それが砕ける。

 何故かはわからないが、私はそうしなければならないという衝動に突き動かされて、その
欠片を必死で集める。

 でも、欠片は集める度にこぼれていく。

 私は、欠片を閉じこめる壁を作った。

 中からはでれない、外からは何も入らない、砕けたそれを守るための壁を。

 そして、私は――
 
 
 
 

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  五回目です。実は今回が一番書きたかったシーンなのです。
  このために2話で「腰まである長い髪」と表記したのです。
  ここで終わっても良いかな?とか考えたりしてますが、どうでしょう?
  一応番外編とエピローグも考えているんですが。
  なんか暗いですから救いのあるエピローグを、と思って書いてはあるんですが……
  どんなもんですかね。
 
 

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