美汐です。
NAOYAさんの美汐。
でも…
わたしの書く美汐は、ある意味で特殊です。
わたしのSSの中の美汐は、どの話でも結局、『心象風景画』を経た美汐。
真琴の還った世界で、どこかで美宇を追い続け、還らないと分かっていながら待ち続ける美汐。
だから、他の人の美汐を見ても、美汐だな、そう思って終わりになってしまう。
悲しいね、楽しそうだね、良かったね…そう思うけど、それだけです。
後、ひきません。だって、わたしの美汐はわたしの中にいるから。
『この美汐は違いますね。』そう言って、無表情に、でも揺れる瞳でわたしを見るから。
唯一、わたしが美汐を感じたのは、このシリーズ。
この美汐も、もちろんわたしの美汐とは違います。
でも…わたしの美汐、これを見て悲しい目をして言いました。
『悲しいです。わたしは。』
この話はわたしの中にいる美汐が、唯一認めた、わたし以外の人が書いた美汐です。
『わたしじゃないけど、わたしです。』
そう言った美汐です。
どこがそう思わせるのか。
読んだ方には分からないかもしれない。
実はわたしにも、どこがなんだ、と聞かれても答えられません。
でも…わたしの中の美汐は、これ見て泣きました。
だから、この美汐がもう一人、わたしの中に淡く存在し続けて。
そして、『グノシェンヌ』が生まれました。
わたしは美汐と祐一の関係を、真琴シナリオ後には微妙なバランスなど設定しなかった。
でも…それを設定できる美汐がわたしの中に、淡く存在し始めた。
それが、このシリーズの影響であることは、疑いようもありません。
他のどんな素晴らしい、感動的なSSでも、わたしは美汐と祐一の関係に恋愛を設定したり、
あるいは、その後に二人が結婚して子供が、ちび真琴が生まれる、なんて話には、
感銘したり、そういうのもアリだね、と思っても、なんの影響も受けなかったのに、
この話だけは…間違いなく、影響を受けました。
そして、こんな優しい目で、こんな美汐を書けるNAOYAさんという人に、わたしは注目しはじめました。
そして、それは裏切られなかった。
優しい人です。優しい話が書ける人です。優しい目線を持っている人です。優しい表現を持っている人です。
だから…
だから、わたしは『Forget me, Forgive me』のOpeningなど捧げるべきではなかった。
あんな話に注目させるべきではなかった。
この世は優しいだけじゃない、そんなことはあたり前だけど、わたしはあなたにそんな話を見せることはなかったのです。
見させるきっかけ、与えるべきじゃなかった。
あれがあなたに、あなたの目線に影響を与えなかった事を祈るばかりです。
わたしは…大バカでした。あの時は、自分で精一杯だったから。
だから、自分のしている行為に気づかず、NAOYAさんだけでなく、何人も傷つけて、また傷つけそうになった。
足…踏み外させそうになったから。
祈るばかりです。祈るしか、もうわたしにはできません。
過ぎてしまった事には、もう取り返しなどつかないから。
そして…あの栞を愛してしまったわたしは、あの作品を消すことはできないから。
でもね、NAOYAさん。
あなたは今も優しい目線、変わらないなって思ってます。
それは、本当にわたしにとっては救いです。
でも…
これはやっぱりNAOYAさんの書く美汐。
どんどん作品としての質は上がっていき、それと同時にわたしの美汐観から外れていきます。
でも、それは悪いことじゃない。間違いなく、素晴らしいSSになっていきました。
そして…
最後の話。
もう、わたしは泣くしかなかった。
素晴らしい話です。
でも、美汐がかわいそうで。悲しくて。
わたしの中の美汐、わたしの分身の美汐も泣いてました。
わたしには、こんな悲しい、でも優しい話は書けない。
書こうとすると、手が、頭が拒否してしまう。
でも、それがNAOYAさんの美汐であり、美汐観であり、そうする事が必要と思ったのでしょう。
これはNAOYAさんの美汐。
そして間違いなく、NAOYAさんの優しい目線の話。
それは、間違いないから。
間違いなく、わたしはこの話を受け取ります。そして、このシリーズとしてここに置きますね。
でも…
ここのラストから始まる物語は、もうわたしはここには置けません。
もう、見ていられないです。わたしが。わたしの中の美汐が
だから、わたしは『グノシェンヌ』、真琴のいない世界、貫きます。
それが…わたしの美汐だから。わたしの贖罪の旅なのだから。
わたしの美汐の旅だから。優しくなれなかったわたしの旅だから。
だけど
素晴らしい話です。
最初から最後まで…最後かどうかはまだ分かりませんが…素晴らしい話。
わたしの美汐観をちょっと変えて、わたしに一つの話、グノシェンヌを書かせた話です。
そして、優しい話です。
NAOYAさん。
わたしは優しい人間だったらよかった。
本当に…あなたのような優しい視点、持てる人間だったらよかった。
あの時。わたしが…『心象風景画』を書いた時。何かを間違えた時に。そう、思います。
きっと、あなたを見ていると、そう思い続けるんです。見たくないようで、見ていたい。そう思って…います。