そしてきみとうたううた


初公開(笑)
 …そんなことはどうでもいいとして、100本記念。
 とりとめもなく、叶うことならぽっぷに(^^;
 

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            『そしてきみとうたううた』
 
 
 
 

 雪がふってる。

 さみしがりやの雪。

 あたしみたいな雪。

 なーんにも言えないで、だまってふってる。
 
 
 
 

 そんな雪を見上げるあたし。

 まわりの麦畑もまっしろで、

 白いほかにはなんにもなくて。

 ちょっとだけ、手が冷たかった。
 
 
 
 

「おーい、ごめんごめーん」

 楽しそうな声。

 うれしい声。

 あたしは凍ったあぜ道のほうに顔を向けた。

 白いカーテンの向こうから、男の子が走ってくる。
 
 

 男の子は笑ってた。

 あたしも笑ってた。
 

 ぼたん雪が少し、笑ったように見えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「…ねーえ、祐一くん」

 やみそうにない雪を見つめながら、あたしはゆっくり言った。

 うすく積もった雪の上に、足をのばしてぺたんと座って。

 背中合わせになって、祐一くんもおんなじ格好してる。

「んー?」

 ちょっとうわの空な、祐一くんの声。

 でもちゃんと聞いてるってこと、あたしはわかってるから。
 
 

 夏休みみたいな、あんな色いっぱいの世界じゃないけど。

 白しかない世界だけど。

 でもやっぱり、きれいに見えるから。

 だから、あたしは笑って言った。
 

「たのしいね」

「…んー」
 

 さっきとおんなじ言葉。

 うごいてるのは雪だけ。

 風もなくて。

 上から下へ、しずかに落ちてくる。
 

「ちょっと寒いね」

「んー」
 

 つめたくて、あったかい。

 きみの背中は少し丸い。

 こつん、と音をたてて、きみの頭がボクの頭に当たる。

 やわらかい髪の音。きみは一度頭をはなして、また
 

 こつん。
 

 ちょっとだけ背の低いあたしの頭に、祐一くんの頭がのっかってる。
 

「重いよー」

「ぼくは軽いよ」

「あたしが重いのー」
 

 あはは、って、きみは笑ってる。

 あたしは重いのに。
 

「重いよー重いよー」
 

 あたしはぐらぐらと体をゆする。

 それに合わせて、祐一くんの体もぐらぐらゆれる。

 あはは、って、もう一度笑う声。
 

「楽しまないのーっ」

「あははは…ごめんごめん」
 

 祐一くんは笑ったまま、ひょいっと頭をどけてくれた。

 急に軽くなった頭が、なんだかちょっとさみしくて、あたしは祐一くんの背中によりかかる。
 

「どーした? あまえんぼ」

「あたしのほうがおねーさんだもん」
 

 ちょっとすまして言ってみたけど、ほんとによりかかってるんだからやっぱりあまえんぼかも。
 

「あまえんぼー、あまえんぼー」

「あまえんぼでいいもーん」
 

 あたしはもうちょっとだけ、祐一くんの背中によりかかる。
 

「あめんぼー、あめんぼー」

「あめんぼじゃあないよーっ」
 

 ぱっ、とふりかえるあたしに、祐一くんは笑ったまま、
 

「あめんぼまいー」

「ちがうってばぁー」
 

 あたしはそばの雪をすくって、えいってかけた。

 うわっ、て祐一くんはよけた。
 

 あたしは笑ってた。

 祐一くんも笑ってた。
 

 白い景色が、なんだかあったかく見えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 雪はまだふっている。

 あたしたちの上にも、ちょっとずつ積もってる。

 このままうもれちゃおうか。

 そんなことをきいたら、きみはなんて答えるのかな。

 うーん、気になるよね。

 きいてみよっか。
 

「…ねえ、祐一くん」

「んー?」
 

 楽しそうな祐一くんの声。
 

「このままさー、雪にうもれちゃおうか」
 

 ちょっとだけじょうだんっぽく、笑って言った。

 てれちゃってたのかもしれない。

 でも、祐一くんの答えは、
 

「…いいよ」
 

 …えっ?

 あたしはちょっとおどろいた。
 

「いいよって…うもれちゃうんだよ?」

「うん」

「雪の中なんだよ?」

「うん」

「…さむいよ?」

「そうかもね」
 

 楽しそうな祐一くん。

 あたしもなんか楽しくなって、でもちょっと不安だったから、もう一回きいてみた。
 

「…ほんとに…いいの?」
 

 ちょっとだけ、祐一くんはだまってた。

 でも、すぐに
 

「……いいよ」
 
 
 
 

 あたしにもう、言うことはなくなっちゃった。

 でも、それも入れて全部がうれしくて。

 思ったよりも広かった祐一くんの背中を、思い出してた。

 あったかかった。

 きもちよかった。

 …だから、祐一くん。

 きみのその丸い背中も。

 もう少しあたしに、あずけてもいいから。

 でも、そんなこと口に出したら…
 

「それっ」

「うわ、あずけすぎっ!」
 

 ぐぐーっと祐一くんは背中をのばして、あたしは柔軟体操やってるみたいな格好になった。
 

「…そっか」
 

 また、ぐぐーっと祐一くんが背中を戻す。

 ふわぁ、とため息をついたあたしに、もう一度、
 

 こつん。
 

 そして今度は、そのままはなれない。

 …ううん、なんとなく、さっきより重くない。
 
 

 雪はまだふってる。

 世界は、あたしたち二人だけ。
 
 

「…ねーえ、祐一くん」
 

 乗せた頭にちょっとだけ力を入れて、祐一くんは返事をする。

 それがちょっとくすぐったくて、あたしは笑った。
 

「ずっとこうしていられたら、いーよねー」

「トクベツなことなんか、なーんにもなくて」

「こうやってさー」

「ぼけーっとしてさー」

「ふたりでさー」
 
 
 
 

 ……あぁっ!

 …言っちゃってから、気づいた…

 最後の一言…よけいだったよぅ…

 うわーっ、どうしよう…
 

 …なんてあたしが赤くなってたら、祐一くんがまた頭をゆらした。

 祐一くんが頭を下げると、あたしはうなずくみたいな格好になる。
 

「……そうだねー」
 

 それだけだった。

 だからあたしは、もしかして寝てるのかもと思った。

 でも祐一くんは、変わらずに頭をゆらしてる。

 だから、あたしも
 

「…そうだよねー」
 

 お返しみたいに、頭をゆらした。
 
 

 ゆらゆら、ゆらゆら。

 ゆらゆら、ゆらゆら。
 
 

 雪の中で、あたしたちはしばらくそうやって、二人してゆれてた。

 ほほえみながら、ゆれていた。
 
 

                                                   <終>
 

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 えーっと、なんだかんだ言って100本目だったりします。
 半年ちょいで100本…
 …う〜ん…
 粗悪品量産の感もアリ(^^;

 とにもかくにも、ですね。
 これまでのお話を、一度でも読んでくださった方々にお礼を。
 コメント下さった方々に感謝を。

 まあ、これからは…
 とりあえずレモミルを終わらせて(汗)
 それから…名前でも変えよっかな(爆)
 

 さぁて、一区切りついたコトだし…
 超イタイ連続モノでも書くかぁ!
「…ほんきですか?」
 ……うそですー(爆)
 

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