Sweet Romance "zwei"/lost graduation-7
 

< はじめに >

○この製品は

  [ 5.25型電波メルヘン音楽形連載ショートストーリー、 「 lost graduation 」 ]

 です。本製品は一般ショートストーリー(以下"SS"へ略)に属しますが、使用上のご注意などをご確認の上、細心の注意をはらってご
 使用ください。
 

< お願い >

○この度はお買いあげ(??)いただき誠にありがとうございます。本製品については万全を期しておりますが、万一、品質、パッケージ  
 に不都合、不快な点がありましたら、恐れ入りますが、ご自分で対処するようお願いいたします。
 

< 動作環境 >

○四畳半の和室または縁側推奨(緑茶付き)
○20分以上の空き時間(気持ちが不安定なときは、1時間以上推奨)
 

< 成分表示[ 第7話(約11KB)当たり]>
 

主成分   含有量

Kanon 1コ

世界    1コ

月宮あゆ  1人

相沢祐一  1人

シリアス  微量

詩     作者の精神状態による(全体的に不完全燃焼)

作者    作者の精神状態による(全体的に不完全燃焼)
 

< 使用上のご注意 >

○警告表示の意味

「 < 警告 > 」 ○この表示の注意事項を守らないと感電破裂等により死亡などの人身事故が生じます。

「 < 注意 > 」 ○この表示の注意事項を守らないと感電その他によりけがをしたり、損害を与えたりします。
 

< 警告 >

○分解や改造をしない。電波発生の原因になります。

○内部に水や汚物をいれない。爆発する可能性があります。

○強力な電波を発生することが稀にあります。老人、妊婦はご使用を控えて下さい。

○万一、異常が起きたら、変な音、においがしたら、煙が出たら、誠に申し訳ありませんがご自分で対処して下さい。
 

< 注意 >

○安全のため注意事項を守る。

○定期的に点検する。(1日1度は)

○小児の手の届かないところに保管すること。お子様がマネをすると大変危険です。

○本製品の使用により、悪心、嘔吐、眩暈等の症状が現れた場合はもう一度、使用上の注意などをよく読み、最初から改めて使用を開始し
 てください。
 

< 故障かな?と思ったら >

○他人のせいにしないで、まず自分を疑ってください。
 

< 最後に >

○あなたの健康を損なうおそれがありますのでSSの読みすぎに注意しましょう。

○SSマナーを守りましょう。

○今まで書き忘れていましたけど、ネタバレ有りなのです/苦笑

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 僕の自慰行為は止まらない
 僕のマインドマスタベーションは止まらない

 ピンク色のお部屋は現実逃避のお部屋
 お部屋の壁の中には鉄格子、お部屋の中は妄想と被害妄想でいっぱい
 誰にも言えない、僕だけのお部屋
 僕の、僕の中に創造した " 僕だけのkanon "

 ここに君を閉じ込めて、僕は僕だけの " 理想郷 " を描く

 想いは永遠なら、どんなに歪んだ想いでも永遠なら、きっとこの想いは半永久的に続いてゆくのだろう
 仮に僕があの時と同じ様に、" 永遠はいらない " と言ったとしても、きっと、終わらないだろう

 それでも自分自身を赦している、あなたが僕はとても羨ましい

 どうして、イケナイのか
 どうして、イケナイことをしてはイケナイのか、理解してはいないから

 さあ、今の僕に出来る限界で、異常の境界線を越えましょう
 さあ、今の僕に出来る限界で、異常の境界線を越えましょう
 さあ、今の僕に出来る限界で、異常の境界線を越えましょう

 そして、このお話は僕だけの、僕の秘密

 WELCOME TO MY " SWEET SWEET ROMANCE "
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【  Sweet Romance "zwei" / lost graduation-7  】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 寝返りをして、顔に当たった柔らかい壁で俺の意識は覚醒めた
 頭が痺れている、ぼーっとしてほとんど何も考えられない
 

 とりあえず瞳を開けた、怖々と
 が、予想以上の眩い光が降り注いで、俺は再び瞳を閉じた
 どうやら、ここは室内ではなく外の様だ
 

 俺が薄目をして何とか状況を確認しようとすると、ふっと影に光が遮られた
 

「祐一君、おはよ」
 

 その影は朧気に輪郭を見せたあと、見知った少女の顔へと変化して見せた
 

「……あゆ、か」
 

 そうして、俺はやっとあゆの膝の上で寝ていたことに気付く
 寝返りを打ったときに当たった柔らかい壁はあゆの身体だったのだろう
 俺は素早く、と同時にそのことをあゆに悟られないように上体を起こすと辺りを見渡す
 植物の緑と、空の青と、雲の白と、そして、遠くには人工的な色彩の街が見えた
 どうやら、ここはあの丘の上らしい
 

「……おはよう、はちょっと変だったかな??」
 

「……ははっ」
 

 俺はその言葉を聞くと、何も言わず苦笑いして見せた
 ちょっとの安心感と、同じくらいの不安感の同居
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 そして、予感がした
 それはお終いの予感
 この世界のお終い、その予感
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 あゆはそんな俺を見て、にこにこと微笑っていた
 

 ……ん??
 

 あゆをよく見てみると、あゆは俺と同じ学校の制服を着てることに気付く
 ただ、上の服の色は白く薄く、胸の辺りに大きめのリボンが付いている
 どうやら、俺ははじめてみるがこれは夏服らしい
 ……ただ、制服に羽根の付いたリュックは不味いと思う
 

「あゆ、お前、その服どうしたんだよ??」
 

「えっ、服?? あ、この制服の事??」
 

「えへへっ、今日は祐一君と一緒に学校行こうかな、って思ったんだよ」
 

 あゆは徐に立ち上がると、その場でくるっと一回転してみせた
 ふわっと、スカートが舞って、少しだけ心臓を高鳴らせる
 

「……似合うかな??」
 

「まあ、可もなく不可もなく、だな」
 

 俺は正確な解答を避けると話を変える
 あゆはちょっと不満そうな顔をして、くるくると舞いながら自分の制服を見ている
 

「……じゃ一緒に学校行くか??」
 

 俺は立ち上がって服に付いた埃を払うとそう言った
 

「うんっ」
 

「そういえば今何時だよ?? もう完全に遅刻だろ??」
 

「別に気にしなくて大丈夫だと思うよ、時計とか動いてないから、先生も居ないし」
 

「ははっ、大体今日は何曜日だよ??」
 

「何曜日にする??」
 

「じゃ、金曜日」
 

「土曜日は半日授業だから??」
 

「正解」
 

「じゃ、行こうよ」  
 

 俺とあゆはゆっくりと学校を目指して歩いた
 こんな時だから、何でもないくだらない話をしながら歩いていった
 

 世界は静寂に包まれている
 誰もいない世界
 俺と、あゆ以外は
 

 街に入ってもその静けさはあまり変わらなかった
 太陽に灼かれたコンクリートですこしだけその外気温度は上がっているように感じた
 

「……誰もいないな」
 

 俺は何の気もなしにそう言った
 

「祐一君とボク以外は誰もいないよ」
 

「……そうか」
 

「うん」
 

 あゆは笑顔のままだった
 

「でも……」
 

 あゆは突然飛びつくように俺の手を取った
 

「これなら、一人じゃないみたいだよね??」
 

 俺は何も言わなかった
 お互いの体温が同じになるまで、その手を握っていたいと思った
 そして、その感触を忘れないようにと思った
 

 しばらくすると学校の正門へ到着する
 

「そういえば俺の学校来るの、はじめてだろ??」
 

「そうだよ」
 

 あゆは嬉しそうにそう言った
 何となく以前どこかで見た子供を思い出す
 どうしてそんなに楽しそうなのかわからないくらい楽しそうにしていた
 恐らく理由などはないのだろう
 でも、笑えるということはなんていいことなのだろう、正直にそう思えた
 

「えへへっ、到着っ」
 

 あゆは俺と手を繋いで、どこかのテレビ番組の真似のようにぴょん、と軽く飛び跳ねて校門をくぐった
 ここまで来ただけで歩き疲れてふらふらしている俺とは全く正反対で、嬉しいような楽しいような、そんな笑顔をしている    
 俺はあゆに手をひっぱられて、変な体勢で飛び跳ねたような、つまずいたような、良くわからない格好で校門をくぐった
 

「ねぇ、祐一君 祐一君の教室ってどこにあるの??」
 

「ああ、案内してやるよ」
 

 そう言って俺とあゆは校舎の方に歩きだした
 俺はまだすこしふらふらしていた
 校舎の中にも誰もいない
 

 さっき、繋いだ手はもう当たり前の様に離れていた
 
 

「……おはようございます」
 

 教室にも誰もいなかった
 誰もいない学校というのは昼間でも随分と不気味なものだった
 

「おそようございますっ」
 

 あゆはそう言って俺を押しのけるように教室の扉から中にはいるときょろきょろと物珍しそうに中を見ている
 

「さて、と」
 

 俺はとりあえず自分の席に座る
 別に学校に来てもすることは特になかったけど、こんな時だからこそ普通の事がしたくなるものだ、と思う
 俺は机の中から適当な教科書とノートを出すと、ペラペラとめくりはじめた
 

「祐一君、ちゃんと学校で勉強してる??」

 
 あゆは俺の前の席に座ると教科書やノートを覗き込む
 

「……祐一君、字、汚いよ」
 

「……五月蠅い、きっと、男の中ではまだましなほうだ」
 

 きっと、だけどな
 

「……祐一君、これからどうしようか??」
 

「……どうしようか、と言われてもな……先生もいないんじゃ授業は無理だしな……」
 

「じゃ、ボクが先生してあげるよ」
 

「……は??」
 

 あゆはぱたぱたと教壇の方に駆けて、教壇へ立った
 

「……えーっと」
 

「……」
 

「では相沢君、質問をどうぞ」
 

 ……しょうがない、付き合ってやろう……
 

「……はーい」
 

 手も挙げてやる
 ……俺って適応力はあるよな……
 

「はい、相沢君、なんですか??」
 

 あゆはにこにこして俺を指す
 ……妙に嬉しそうなのは何故だろう……
 

「いちたすいちは??(1+1=??)」
 

「……祐一君、ひょっとしてボクの事、頭悪いと思ってる??」
 

「だったら、いちひくいちは??(1−1=??)」
 

「……祐一君……」
 

 ……あゆから殺気を感じた様な……
 

「……解った、ちゃんとやる」
 

「もう、ボクだってちゃんとお勉強できるもん……」
 

「じゃ、必然的存在者の現実的存在に関するすべての先験的証明における弁償的仮称の説明を……」
 

「……」
 

「……」
 

 あゆはすこし潤む瞳で抗議の視線を浴びせる
 

「……謝る、悪い」
 

「……祐一君のいじわる……」
 

 結局、あゆは教壇から下りて俺の前の席に座る
 

「祐一君、本当は聞きたいこと、一杯あるでしょ??」
 

「……は??」
 

 急に変なことを聞いてくるので、俺は間抜けに聞き返してしまう
 あゆの声のトーンはさっきまでと明らかに変わっていた
 ただし、表情は笑顔のままで
 

「たとえば、ここはどこ?? とか、ね」
 

 俺は苦笑する、そして、黙ったまま何も答えない
 

「ここはボクと祐一君しかいない世界、今は、だけど」
 

「そして、俺の逃げこんだ世界、か??」
 

「ふふっ、相沢君、正解ですっ」
 

 まださっきの真似事が抜け切れてないらしい
 

「でも、これは答えじゃないだろ??」
 

 あゆは腕を組むと、んーっ、と考える仕草をする
 そして……
 

 ぱあんっ!!
 

「……答えはこう、かな」
 

 乾いた音と同時に頬に軽い痛みを感じる
 それは平手で頬を打った音だった
 

「……祐一君、痛い??」
 

 真面目な顔をしてあゆはそう聞いてくる
 さっきまでの笑顔はもうそこにはない
 

「痛い」
 

 正直、頬の痛みはそうでもない
 女の子の、特にあゆの細い腕でたたかれてもそんなに大した痛みは感じない
 でも、痛みには別の力、別の想いの痛みを感じた
 

「えっ?? ホント?? 痛いの??」
 

 俺は再びさっきと同じ言葉を繰り返してあゆへ言う
 

「……だったら、ここは?? 痛い??」
 

 そう言うとあゆは俺の胸の周辺、丁度心臓の所に手をあてて俺の瞳を真っ直ぐに見た
 

「……」
 

「……」
 

 そのまま、お互いの瞳を見たまま無音の刻は暫く続いた
 

 学校中に鐘の音が鳴り響いて、俺は視線を教室の壁にある時計に向けた
 時間的には始業のチャイムではなく、終業のチャイムの様だ
 

「……休み時間??」
 

 沈黙を破ってあゆはそう聞いてきた
 

「まあ、普通はそうだな」
 

 俺は短く、それだけ答える
 

「じゃあ、ボク、学校の中を探検してくるよっ」
 

 あゆは笑顔に戻ってそう言った
 その笑顔に濁りはない
 

「……お前は子供か」
 

「じゃ、行って来るよっ」
 

 あゆは俺の言葉には反応せずに手を振りながらぱたぱたと教室を出ていってしまった
 
 
 
 

 俺はすこし赤くなった頬を手で押さえて、ぼーっと外の世界を見ながら、世界が橙色に汚される瞬間を、夕焼けの来るのを待っていた
 

                                               【 to be continude...... 】

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
  inserted by FC2 system