Sweet Romance "drei"/lost graduation-8
 

< はじめに >

○この製品は

  [ 5.25型電波メルヘン音楽形連載ショートストーリー、 「 lost graduation 」 ]

 です。本製品は一般ショートストーリー(以下"SS"へ略)に属しますが、使用上のご注意などをご確認の上、細心の注意をはらってご
 使用ください。
 

< お願い >

○この度はお買いあげ(??)いただき誠にありがとうございます。本製品については万全を期しておりますが、万一、品質、パッケージ  
 に不都合、不快な点がありましたら、恐れ入りますが、ご自分で対処するようお願いいたします。
 

< 動作環境 >

○四畳半の和室または縁側推奨(緑茶付き)
○20分以上の空き時間(気持ちが不安定なときは、1時間以上推奨)
 

< 成分表示[ 第8話(約11KB)当たり]>
 

主成分   含有量

Kanon 1コ

世界    1コ

月宮あゆ  1人

相沢祐一  1人

シリアス  微量

詩     作者の精神状態による(調子は下降気味)

作者    作者の精神状態による(調子は下降気味)
 

< 使用上のご注意 >

○警告表示の意味

「 < 警告 > 」 ○この表示の注意事項を守らないと感電破裂等により死亡などの人身事故が生じます。

「 < 注意 > 」 ○この表示の注意事項を守らないと感電その他によりけがをしたり、損害を与えたりします。
 

< 警告 >

○分解や改造をしない。電波発生の原因になります。

○内部に水や汚物をいれない。爆発する可能性があります。

○強力な電波を発生することが稀にあります。老人、妊婦はご使用を控えて下さい。

○万一、異常が起きたら、変な音、においがしたら、煙が出たら、誠に申し訳ありませんがご自分で対処して下さい。
 

< 注意 >

○安全のため注意事項を守る。

○定期的に点検する。(1日1度は)

○小児の手の届かないところに保管すること。お子様がマネをすると大変危険です。

○本製品の使用により、悪心、嘔吐、眩暈等の症状が現れた場合はもう一度、使用上の注意などをよく読み、最初から改めて使用を開始し
 てください。
 

< 故障かな?と思ったら >

○他人のせいにしないで、まず自分を疑ってください。
 

< 最後に >

○あなたの健康を損なうおそれがありますのでSSの読みすぎに注意しましょう。

○SSマナーを守りましょう。

○今まで書き忘れていましたけど、ネタバレ有りなのです/苦笑

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 ここで僕は僕自身の言葉の限界を知る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
【 Sweet Romance "drei" / lost graduation-8 】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「……遅すぎ」
 

 教室で二人っきりだった
 部屋の中は暗く、もうすぐ蛍光灯に頼ろうか、という時刻である
 すでに太陽も沈んでいってしまった
 何時間くらいぼーっとして、あゆを待っていただろうか
 

「うぐぅ…ごめんなさい…」
 

 あゆは涙目で謝ってくる
 

「大体、学校で迷子になるなっ」
 

「だって、はじめて来たんだもん…」
 

「その辺の生徒に道を聞けっ」
 

「生徒どころか誰もいないもんっ、祐一君も知ってるはずだよっ??」
 

「迷うような探検に出るならちゃんと目印を置きながら…」
 

「…うぐぅ、そんな大冒険じゃないもん…」
 

 あゆはすっかりしょぼんとしてしまった
 

「…祐一君のいじわる…」
 

 ちょっといじめすぎたかな、と思い、この辺でからかうのを止める
 俺はあゆの頭に手をぽん、と置いて髪を撫でるようにした
 あゆはすこし恥ずかしそうだった 
 

「……はぁ…まあ、もう帰ろう」
 

 そして、溜め息まじりにそう言った
 

「……うん、そうだね」
 

 あゆもそれには同意する
 

 …俺はどこに帰るのだろう…どこから来たのだろう…
 

 そんな答えのない自問を繰り返しても仕方ないことは解っていた
 まあ、とりあえずは水瀬家に帰ればいいだろう
 ……誰もここにはいないのだから
 

 とりあえず二人で教室を出る
 完全に暗くなる前に学校を出たいと思った
 二人ともどちらからともなく早足で歩いていた
 

 下駄箱まで着くと靴を履いて外へ出る
 下駄箱に靴は入れてはいなかったので何時もより早かった
 まあ、あゆの使う下駄箱はないけど……
 

「……鍵、開けたままで平気なのか??」
 

 独り言の様にそう言う
 

「大丈夫だよ、泥棒する人はいないもん」
 

「まあ、鍵自体俺は持ってはいないから閉める手段もないんだけどな」
 

 俺とあゆはそのまま校庭を通って学校を出た
 

「……商店街でも寄ってゆくか」
 

 俺はなんとなくそう思って行く先をそちら側へ向けた
 あゆといえば自分の意見は何も言わずに黙って俺に付いてきた
 二人で歩いている間は他愛もない話をしていた
 
 

 商店街に着くと、予想外にそこは煌々としていた
 人は一人もいないこの街で人工的なものだけは正常に動いている事実はとても不可思議な光景を生み出していた
 

「たい焼き屋さんの屋台に行ってみようよ」
 

 あゆの笑顔だけは、朧に現実感を保っていた
 俺は軽く相槌をして、屋台のある方へ足を向けた
 

「……はぁ」
 

 溜め息を吐きたくもなる
 屋台は存在するが、おやじの姿は当然の様になかった
 その光景はもう俺を気持ち悪くさせるだけでしかなかった
 

 あゆの方を見ると嬉しそうな顔でたい焼きを袋に詰めている
 

 ぼかっ
 

「うぐぅ、痛いよ〜、祐一君〜」
 

「勝手なことをするなっ、犯罪だぞ、それはっ」
 

「うぐぅ〜、殴ることないよ〜」
 

 実際こうするしかないことは俺も解っている
 痛みのない世界で必死にその現実を保とうとしている自分を間抜けに思えた
 俺の望んだ世界
 でも、どこかで否定している
 矛盾
 

 思考することも厭になる
 

 俺は自分の財布を出すと屋台の台の上に千円札を置く
 

「……とりあえず、これでいいよな」
 

 無理矢理に自分を納得させると、あゆに瞳で合図をする
 

 あゆは本当に嬉しそうにたい焼きの掴み取りを楽しんでいた
 
 

「……盗りすぎ」
 

 あゆは袋から溢れそうなたい焼きを抱えて嬉しそうに戦利品を平らげている
 ちなみに俺も持たされている
 どう考えても千円では割に合わないだろう
 

 ……今日の夕食はたい焼きになることを覚悟していた
 

「はぐはぐ、美味しいねぇ、祐一君」
 

 あゆはとても倖せそうな顔をしてたい焼きを頬張っている
 ……この量をすべて平らげるつもりだろうか
 

「ほどほどにしておけよ……」
 

 最早その言葉は右から左へ流れては消えてゆくしかなかった
 ……早く帰ろ……
 

 俺は足早に水瀬家へと向かった
 

「……ただいま」
 

 答えてくれる人はこの世界にはいなかった
 ただ、なんとなく出てしまった言葉だが、矢張り少し寂しいものはある
 

「お邪魔します〜」
 

 あゆは以外と他人行儀にそう言って家に上がる
 とりあえず食卓へ行って夕食を食べることにする
 ……当然の様にメニューはたい焼きである
 

「はぐはぐ……」
 

「……食べ過ぎ」
 

 あゆは未だにたい焼きと格闘している
 恐ろしい食欲である
 たい焼きの大食いならあゆは天下を取るだろう
 

「大丈夫だよ、甘いものは別腹だからね」
 

「…お前はずっと甘いものだろ…」
 

「美味しいよ〜」
 

「…はぁ」    
 

 俺はその食欲に負けて、満腹感も無いまま食卓を離れると居間のソファーに座るとテレビを見てみることにする
 しかし、どのチャンネルも画面は砂で満たされていた
 すぐに厭になってスイッチを切ってしまった
 

 すると、あゆも居間に来る
 

「…うぐぅ、食べ過ぎ…」
 

 どことなくふらふらしながら、ソファーに倒れ込む
 

「子供じゃないんだから、加減っていうものをしろ」
 

「…うぐぅ〜」
 

 あゆはそれどころじゃない様子でうぐうぐと言っていた
 

 俺は、そんなあゆをそのままにして、入浴することにした 
 さっさと湯を作ると、さっさとはいる、一人暮らしでもしている感じだった
 落ち着いて浸かることもなく風呂から出るとさっさと着替える
 

「…ふぅ」
 

 何をそんなにも急いでいるのか自分でも解らない
 居間に戻るとあゆはまだうぐうぐと言っている
 

 俺は風呂に入るなら勝手にしろ、俺は二階の自分の部屋にいるから、など適当に用件をだけを言ってさっさと自分の部屋に戻る
 そして、ベッドに倒れる、凄まじい疲労を感じた
 身体は確実に睡眠を要求していた、すぐに意識は微睡み、消えようとしている
 

 こんな世界を何時まで続けるのだろう、と自問するぼーっとする頭で考えた
 どこまで逃げたとしても、所詮お釈迦様の掌の上でしょう、なんて言葉を思い出しながら、俺の意識は薄れていった
 

 ガチャ、とドアの開く音と射し込む光で俺の意識はすこしだけ現実に引き戻される
 

「…祐一君、寝てる??」
 

 薄暗い部屋に立っているのはあゆだった
 廊下から射し込む光で辛うじてその姿と顔を伺い知ることはできる
 

「…寝てる…」
 

「…ホントに寝てる人は返事しないもん…」
 

 俺は寝ぼけ眼で勢いに任せて起きあがると、部屋の電気を点ける
 

 今まで暗くて解らなかったけど、あゆはパジャマを着ている
 どうやら名雪の物らしい
 

「…借りても大丈夫かなぁ??」
 

 一応、そう聞いてくる
 

「まあ、大丈夫だろ…」
 

 それ以前にあゆが手にだらんとぶら下げて持っている物体に視線が行く
 

「…なあ、あゆ…それ…」
 

 その緑色の物体に指を指して、問いかける
 

「えっ?? 名雪さんの部屋から枕を借りてきたんだけど…」
 

「…枕じゃないぞ、それ」
 

「ええっ??」
 

 その物体は見間違うはずもなくけろぴーだった
 心無しその顔は寂しそうに見える
 

 …何故だろう
 

「たぶんパジャマの件よりそいつを枕にした方が名雪に怒られると思うぞ」
 

「…ボ、ボク、ホントの枕を持ってくるよ…」
 

 あゆは慌てて名雪の部屋に戻っていった
 …まあ、名雪の怒る姿はあまり想像できないけどな…
 ああいう奴ほど怒ると怖いんだろうな、となんとなく思った
 

「ただいま〜」
 

 さっさとあゆは戻ってくる
 …戻って…??
 

「ってゆーか、あゆ、どうしてお前が俺の部屋に枕なんか持ってくるんだよ??」
 

「え? えーっと…」
 

「……」
 

「…んーっと…」
 

「……」
 

「…あの…」
 

「……」
 

「…その…」
 

「……」
 

「…一緒に寝てもいい??」   
 

「……」
 

 あゆは予想通りの答えを返してくる
  

「…だめ??」
 

「……」
 

「……」
 

「…勝手にしろ」
 

 断る理由は特に無い
 …まあ、不純異性交遊は校則で禁じられている、ということを除けば…
 

「…えへへっ、ありがと」
 

 俺はその言葉を言うあゆの顔を見ないようにして、さっさと電気を消してベッドに潜り込んだ
 

「…あ、祐一君、待ってよ〜」
 

 慌ててあゆもベッドに潜り込む
 

「…ふぅ…」
 

 深い、深い溜め息を吐いた
 目の前には闇と白い壁だけしかない
 俺とあゆは背中を合わせるようにしてベッドに入った
 

 そして、二人とも、沈黙を続けた
 決して寝てはいない
 ただ、二人ともそうしたかったのだろう
 

「…ねぇ、祐一君」
 

 沈黙を破ったのはあゆの方だった
 

「…なんだよ…」
 

「…手首を切ってしまえば楽になると思ったこと、ない??」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「でも…ボクも、祐一君も、自殺することはできないよ…多分…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「夢の中で頬を抓ることを怖れるように」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「今、手首を切ってみても、多分、痛くもない、と思う」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「…祐一君の見たあの世界の解答と、未来…」
 

「…血はとめどなく流れるけど、傷跡は痛みもないまま増えるけど」
 

「きっと、終わるよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「…ねぇ、祐一君…頬、抓ってみてよ…」
 

「それは、この世界の解答だから…」
 

 俺はあゆを力任せにこちら側に向かせると、思い切り抱き締めた
 石鹸のいい匂いがした
 

 俺はあゆの言葉を黙らせるかの様に唇を重ねる 
 
 
 
 

 そして、二人の体温は同じになっていった  
 

                                                【 To Be Continude...... 】
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ああっ、前回の投稿から早幾年…ああっ、もう二部構成じゃないんだから/苦笑

どもども、ご機嫌いかがでしょうか?? あいえです。

完全に煮詰まりました/を
自分自身、何を書いているのやらさっぱりになってきてます/壊
もう、さっさと続き書いて終わらせよう…/泣

どうやら"Air"の延期はSSには吉だったようです。/苦笑

それでは、皆様に幸あれ、で御座います。あいえでした、さよーなら。
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