時間軸上のアリア/lost graduation-p

< はじめに >

○この製品は

  [ 5.25型電波メルヘン音楽形連作ショートストーリー、 「 lost graduation 」 ]

 です。本製品は一般ショートストーリー(以下"SS"へ略)に属しますが、使用上のご注意などをご確認の上、細心の注意をはらってご
 使用ください。
 

< お願い >

○この度はお買いあげ(??)いただき誠にありがとうございます。本製品については万全を期しておりますが、万一、品質、パッケージ  
 に不都合、不快な点がありましたら、恐れ入りますが、ご自分で対処するようお願いいたします。
 

< 動作環境 >

○四畳半の和室または縁側推奨(緑茶付き)
○20分以上の空き時間(気持ちが不安定なときは、1時間以上推奨)
 

< 成分表示[ prologue(約8KB)当たり]>
 

主成分   含有量

Kanon 1コ

月宮あゆ  1人

世界    1コ

シリアス  1080hPa(およその数値)

木     想像力による

空     想像力による(色なども含む)

雨     想像力による(冷たさなども含む)

微笑み   成人男性約3人卒倒量程度(個人差有り)

苦しみ   愛情に相応(未確認)

痛み    愛情に相応(未確認)

詩     作者の精神状態による

作者    作者の精神状態による
 

< 使用上のご注意 >

○警告表示の意味

「 < 警告 > 」 ○この表示の注意事項を守らないと感電破裂等により死亡などの人身事故が生じます。

「 < 注意 > 」 ○この表示の注意事項を守らないと感電その他によりけがをしたり、損害を与えたりします。
 

< 警告 >

○分解や改造をしない。電波発生の原因になります。

○内部に水や汚物をいれない。爆発する可能性があります。

○強力な電波を発生することが稀にあります。老人、妊婦はご使用を控えて下さい。

○万一、異常が起きたら、変な音、においがしたら、煙が出たら、誠に申し訳ありませんがご自分で対処して下さい。
 

< 注意 >

○安全のため注意事項を守る。

○定期的に点検する。(1日1度は)

○小児の手の届かないところに保管すること。お子様がマネをすると大変危険です。

○本製品の使用により、悪心、嘔吐、眩暈等の症状が現れた場合はもう一度、使用上の注意などをよく読み、最初から改めて使用を開始し
 てください。
 

< 故障かな?と思ったら >

○他人のせいにしないで、まず自分を疑ってください。
 

< 予備知識 >

[ 偏執病 ] ○ある妄想を始終待ち続ける精神病。誇大妄想病・被害妄想病・恋愛妄想病などがある。パラノイア。 
 

< 最後に >

○あなたの健康を損なうおそれがありますのでSSの読みすぎに注意しましょう。

○SSマナーを守りましょう。

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 硝子細工でできたの僕を簡単に壊した後も、僕はまだ " 非現実(ここ)" にいる
 

 どうしようもない僕の弱さを見るたびに生まれてからの先天的な " 生命の罪 " を意識させられる
 でも、それももうすぐおしまい、僕は君のことも、遊び飽きた玩具のように忘れてゆく、悲しいほどに
  
 誰も彼も君も僕も、その輝ける未来は神さまの悪戯で描かれて、息を吹き込まれた時からそのすべては決まっていたんだよ

 そんな言葉を否定してあげられるだけの優しさもなくて、すこしくるっている愛情表現で、君をうわべだけで抱きしめていただけで
 本当は君に殺めて欲しかったのかもしれない、赦されなくて、赦せなくて、罰をあたえて欲しかっただけなのかもしれない

 でも、ずっと、ずっと " 非現実(ここ) " にいられると思っているのなら、それは大きな間違いだよ
 僕のくるった愛情表現で生じる、君の傷跡の痛みを、僕は絶対にわからないでしょう?
 " 非現実(ここ) " で生きる君は決して、実に巧妙な商業ベースの通過物質として提示された " 嗜好品 " ではないのだから

 傷は誰でも、誰でも痛いのだから

 そして " 非現実(ここ)" に永遠はないのだから
 

 だから、忘れないで

 僕は最後に君と、君の生きる " 非現実(ここ)" へこの詩を残すから、だから、忘れないで
 
 

 忘れないで、お願いだから、忘れないで…………
 
 

 " 非現実(ここ)" に " 君 " を創造する神さまへ……この詩を捧げるから…………

 
 

 " 偏執病 <PARANOIA> " の僕から、" 神さま(あなた)" へ……この詩を捧げるから…………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 ……だから……
 

 ……忘れないで…………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

【   時間軸上のアリア   / lost graduation−prologue     】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 その日はめずらしく、いつもは朝焼けの頃に黒い雨が降ってきた 
 ボクは、ひとりぼっちで街をお散歩していた時だった
 もちろん、傘なんて持ってなくて、ボクはびしょびしょのまま、雨宿りの場所を目指していた
 
 

 やがて、雨宿りの場所……森の中に入ってきていた
 木々は頭上に緑色の傘をさしてくれている、ここはいつでもボクに優しかった、悲しくなるくらいに
 それでも、多少は雨の滴はボクに降り注いできている
 

「こんな日にはもうすこし強い雨にうたれていたい、かな」
 

 頑なに傘をささなかった青年と傘もさせなかった青年の同じ遺言を思い出して、彼を真似てそんな言葉を呟いてみる
 すこしだけ、可笑しくなって、すこしだけ、楽になれた気がした

 そして、目的の場所に到着した
 目の前にはあの時のままの学校、大きな木、二人だけの

 ボクは幹を背もたれにして、すこし休むことにした
 走ってきたので荒くなった息を落ち着かせるためだった
 何気なく、ぼーっと中空を見ていた視線を下に外す
 柔い土と泥だらけでぐちゃぐちゃの靴と、軽い不快感が見えた
 

「…うぐぅ…服も……身体に張り付いて……きもちわるいよ〜〜」
 

 ボクは諦めるように軽く溜め息を吐くと、すこしでも気分を変えようと学校の屋上を目指した
 

「……よい……しょっ……と……えへへっ……とうちゃく〜〜」
 

 あの時と同じ所に座る、思ったより簡単に昇れることができた

 ……あの時…………
 すこしだけあの映像が目の前でちらついた 

 ……だいじょうぶ、だいじょうぶ

 自分にそう言い聞かせた、大丈夫、と
 あの時と違って、もう枝が折れることはないのだから……と
 

 ふと、思い出したように世界を見渡した
 空も灰色であの時のように街はおぼろげにしか見えなかった
 でも、さっきまでよりはすこし天候は良くなっているように思えた
 

 もうすこしで、雨、降り止むかな……??

 
 希望もあった
 降り止んでくれたらいいな、と
 なんとなく、確信も 
 

 何もすることが無くなったボクはぼーっとしながらあの二人で過ごした時間を思い出していた
 
 

 ……思い出に還る…………
 
 

 悪い癖のようにも思える
 でも、そんなことに溺れていくことにもう慣れてしまっていた

 冬の日の記憶
 青空に浮かんだ白い息
 ざくざく音をたてながら、影踏みした帰り道
 むきになって咳き込むくらい、硝子を曇らせて、道端のたき火の真っ赤な火に顔を照らされて
 北風に笑われて、かじかんだ掌、その冷たい手が本当に優しかった……
 

 みんなボクがまだ "人" だった頃のお話 ―――。
 

 もちろん、辛いこともいっぱい、いっぱい、あったけど……
 それはボクが痛みにだけ正直なだけで……
 

 本当に……本当に……今は楽しいことしか見えてこないよ…………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

      

 でも、ボクの居場所、嘘だったみたいになくなった ―――。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 その時、思慮の森の中にいたボクは世界がすこし、またすこし、明るくなっていくのを感じた
  

「……あ」
 

 雨は止んでいた
 今、ボクに降っているのは木々から降り注ぐ雫で
 

 そして、視界に映るのはまばゆい朝の光と綺麗な街の景色
 あの時とすこしも変わらない、綺麗なままの街、痛いくらい綺麗なままで
 

「……あ……れ…………」
 

 それを見たときだったか、それともその前からだったのか……?
 ボクの掌に雫と一緒に涙が混ざって、零れ落ちて
 

「……なんで……」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 ……なんで泣いてるんだろ…………
 

 ……ボクらは……ボクらはもっと " おりこう " だったのにね…………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 それから、すぐに世界は気持ち良く晴れて、碧ざめた空は高く澄んで、街は大人しく、静かにくるいだして
 すこし落ち着いて、泣き止んで瞳をあけたボクはなんとなく……
 
 

「神さま、さようなら」
 
 
 

 なんとなく、微笑ってみた ―――。
 

                                          【 to be continude......    】
 
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