ふーふ喧嘩


まことの場合


「なによぉ! 祐一のわからずや!」
「そりゃお前だろうが!!」


――そして夜の帳が落ち始めるころ


……はらへったな。
ちきしょうめ、飯食ってから喧嘩すりゃ良かった。
なんかこんにゃくが食いたくなったな…。
真琴、もう寝てるよな…。
食いに行くか。
俺はゆっくりと身体を起こし
べちゃ
「のわぁあ!」
な、なんだ?
そこには、こんにゃくが吊るされていた。
……まてぃ
この家は俺が食いたいと思った食いもんが吊るされてんのか?
……んなわきゃないよなぁ。
…こんにゃくにはわさびしょうゆだよなぁ。(注:めちゃくちゃ質のいいこんにゃくだけです)
………
ちょっとでも期待した俺がバカだったな。
俺はベットから出て台所にむかい
つるっ
そこで何かに足をとられ
べちょ
……
うぁああああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!
は、鼻が! 鼻にツーンとするものが!



――そのころ、真琴は



「ね、祐一ったら酷いでしょ」
「確かにそれは祐一さんが悪いですね」
「うん、祐一横暴だよ」
「でしょでしょ。それなのに祐一ったら…」
pururururururu……
「はい、水瀬です。……あ、祐一」
『名雪か? そっちに真琴いるか?』
「え?真琴…………「いないって言って」だって」
ガチャン!
「名雪…なんで言っちゃうのよ〜」
「え? 言っちゃダメだったの?」

ピンポーン
「はーい、あ、祐一」
「名雪…真琴は?」
「うん。いるけど。…なんかわさびくさいよ」
「気にするな」
「……なにしにきたのよぉ」
「帰るぞ」
「イヤッ。祐一が謝るまで帰らない!」
「真琴…」
「な、なによぉ…」
「満足か?」
「……」
「こんなことして満足か?」
「……」
「おい!」
「……ないじゃない」
「あ?」
「そんなわけないでしょっ! 祐一のわからずやぁ!」
「お前なっ…」
「満足なわけ、ないじゃない…」

「祐一、あたしがどれだけ待ってたと思う?」

「どれだけ…心配したかわかる?」

「…どれだけ…泣きたくなったか…わかる?」

「不安…だったんだから…ぁ」

「祐一が…そばに…いなくて…寂し…かったん…だからぁ」


「真琴…」
「なによぉ…」
俺は真琴のあごを持ち上げる。
真琴は目を見開くがやがてゆっくりと目を閉じた。
俺は


ゆっくりと



真琴の口に




練りからしのチューブの中身をまるごと入れた。
「……!? 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
声にならない悲鳴を上げる真琴。
「な、な、な、なにすんのよぉ!!!」
「これであいこだろ? 俺もわさびまみれになったんだしな」
「だからって…」

ちゅっ

「ごめんな、真琴」
「あうぅ…そんなことされたら…怒れないじゃないのよぉう…ばかぁ」
「帰るぞ」
「うん………ごめんなさぃ」
「? なんかいったか?」
「う、ううん。なんでもないの」

おしまい

あとがき

ども、しゅらです
今回のふーふ喧嘩は真琴です
しかし子供っぽいな、こいつら……
秋子:あら、初々しくていいんじゃないですか?
うーん…どうなんでしょうかね? 意見あったらください
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ささやかなコメント by LOTH

しゅらさんにいただきました。

これはしゅらさんのお家で連載(?)している『ふーふ喧嘩』シリーズの真琴編ですね。

…ここでわたしは誰も知らない、というか気付いてないと思う話をしてしまいますが…
実はわたしのSSでは、今までたっくさんの話の中で、祐一とほとんどのキャラが恋人同士になっています。
(例外は秋子さんだけ…あ、香里もか(笑))
しかし…実は夫婦になっている姿を書いたことがあるのは、真琴だけなのです。
わたしは"ほのぼの"では『ただの後日談』を書くのが特色と言ってもいい人だと思うのですが、
そのわたしにして、夫婦姿を書いたのは真琴とだけ…
そう、わたしの中では、『風の音・鈴の音』の二人のエピローグがあまりにも強烈に焼きついているのです…

…ふーふ喧嘩という言葉だけで、何か関係ない話をしてしまいました(苦笑)
ともあれ、これは…もう間違いなく、真琴と祐一の犬も食ぬ喧嘩ですね。ええ。
この二人らしく、子供の喧嘩のような『いぢわる』の応酬…でも、それが本当にそれらしいですね。
こんな感じの二人が書きたくて、わたし自身も『にんぎょひめ』を書いていたりするので、こういうのは本当に好きです。
…まあ、あれは『実感ほのコメ』なんですけどね(苦笑)
ですから、こういうほのぼのした二人の姿は大好きです。

しゅらさん、どうもありがとうございます。
 

2000.10.15 LOTH
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