“晴れた日は、空を見上げて”
 

LOTHさんに捧げる美汐SS そのニ

 

 晴れた日は、空を見上げて

 私は、あなたのことを思い出す。
 
 

    “晴れた日は、空を見上げて”
 
 

「天野さん」
 声をかけられ、私は振り返る。
「はい?」
 そこには私のクラスメイトがいた。
 私みたいな人でも気さくに声をかけてくれる人。
 何かと世話を焼いてくれる人。
 私を、友達と呼んでくれた人。
 以前の私なら、ただ鬱陶しいだけとしか感じなかった。
「天野さんって、さ……」
「はい」
「ちょっと、変わったよね」
「そう、ですか?」
 多少自分でも自覚しているが、改まって言われるとなんだか変な感じがする。
「そうだよ、だって以前は『私に近づかないで』って無言のオーラだしてたもの」
 ……自覚はあるものの正面きって言われるとなんか複雑。
「今は違うよね」
「どんな風に、違いますか?」
「そだね、う〜んと……、声かけてみようかな、って思えるくらい」
 よくわからない。でも、心のどこかが喜んでいる。
 
 
 

 晴れた日は、空を見上げて

 思い出たちと、語り合う。
 
 
 

「ねぇ、天野さん」
「なんですか?」
「美汐、ってよんでも、いい?」
「?構いませんが……?」
「じゃあさ、じゃあさ、私のことも名前で呼んでよ。真琴って」
「真琴……?」
 まこ、と……
「どうしたの?」
 同じ、名前……
「……嫌?」
 私は、ゆっくりと首を横に振った。
「いいえ。すみません、知り合いに同じ名前の人がいたもので……」
「……そうなんだ。どんな人なの?」
「私の友達でした。たったふたりの友達のうちの、ひとり」
「……でした?」
「はい。その人は――真琴は、もう、いないのです」
「あ!ご、ごめんなさい、変なこと聞いて」
「気にしないで下さい」
「でも……」
「私よりも、もうひとりの友人の方が辛いと思いますし……」
 どうしたんだろう。私はこんなにおしゃべりな女だったのだろうか。
「……ねぇ」
「はい」
「もうひとりの友達って、ひょっとしてたまに一緒にいる先輩のこと?」
「たぶん、真琴……の言ってる人であっていると思います」
 複雑な表情の「真琴」
「どうか、しましたか?」
「……名前、呼び辛かったら、無理しなくてもいいよ」
「え?」
「まだ、辛いんでしょ?」
 
 
 

 晴れた日は、空を見上げて

 心の棚の中をひとつひとつ、抱きしめる。
 
 
 

「大丈夫、ですよ」
「でも……」
「『友達』なのでしょう?名前でくらい、呼ばせてください」
 私は、うまく笑えてるだろうか。
 相沢さんのように、強くなれるだろうか。
 自身なんて、まるで無い。
 でも、今は――
 
 
 

「美汐の笑ってるところ、始めてみたよ」
「そうですか?」
「いつも、そうしてればいいのに」
「愛想良くするのは苦手です」
「今できたじゃない」
「真琴がいたからです。きっと」
 
 
 

 きっと、出来るような気がしてる。
 
 
 

「ねぇ、今日学校終わったら、どっか遊びに行かない?」
「どこへですか?」
「どこでもいいよ、ふたりでいっぱいお話できるところ」
「――はい」
 
 
 

 晴れた日は、空を見上げて、

 あなたのことを、思い出す。

 どんな小さな出来事も、どんな些細な思い出も。
 
 
 

「私絶対あの先輩美汐の彼氏だと思ってた」
「絶対に違います」
「ちからいっぱい否定したね……」
「当然です」
「……嫌いなの?」
「そうでもないです」
「じゃあ、なんでそんなに嫌がるの?」
「タイプではないです」
「そう?あんまりじっくり見たこと無いけど、結構いい感じだったと思うんだけど」
「変だからです」
「変?何が?」
「やることなすこと全てです」
「そこまで言わなくても……」
「本当のことです。ですから、つきあいたいとは思いません」
「ふぅん、でも、嫌いじゃないんだね」
「どうしてですか?」
「結構、楽しそうにしゃべってるからね」
 
 
 

 こんな晴れた日は、空を見上げて、

 私は、思う。

 巡り行く季節。

 新しい日々。

 変わっていく、自分。
 
 
 

「ねぇ、二年になっても、さ」
「はい」
「同じクラスになりたいね」
「――私もです」
 
 
 

 晴れた日は、空を見上げて――
 

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どもども、NAOYAです
香「仕切屋・香里です」
受け取っていただけるかどうかわかりませんが
香「まあ、こんなんじゃね。そのニじゃまたオリキャラでてるし
でもこういうのってやっぱり気持ちだと思うんだ
香「いいわけね」
ううっ………

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ささやかなコメント by LOTH

わたしの掲示板での注目の作家さん、NAOYAさんから捧げていただいたものです。
わたしが『わたしは何を望んだの?』という、あの…『Forget me, Forgive me』のOpeningを捧げたお返しに
捧げてくださったもの、と理解しています。
…わたしの後悔の元ですね。あんな酷いものを捧げたのに…申し訳なくて…
美汐、です。わたしの美汐ではありませんが、美汐、ですね。
何か、わたし、『真琴書き』をずっと自称していたんですが、もう今では『美汐書き』だと思われてるんでしょうね…
まあ、それは間違いではない気がしますけど…でも、『真琴書き』の称号を捨てたわけじゃないんですよ…
でも、もちろん、美汐を捧げられるのは、とてもうれしかったです。
F,Fを書いていた、気持ちが最低の状況でしたから…こういう優しいSSは…

本来はNAOYAさんにはもうちょっとマシなSSを捧げ返すべきなのですが、
わたしの個人的な思いとして、一度でも捧げてしまった人には二度と捧げない、というのがありまして…
申し訳ないです… inserted by FC2 system