「あっ、祐一だ!」

放課後の、今日も下校途中の生徒で賑わう百花屋の店内。
その店内に、突如叫び声が響き渡った。
当然その声に、お客と店員の目がいっせいにこっちに集中する……

「ちょっと、名雪……店のなかであんまり大声ださないでよ…」
あたしは小声で名雪をたしなめる。
「祐一だよぉ…」
けれど名雪はその声が聞こえていない様子で、とろんとした表情を浮かべながら窓の外を見ていた。
「ちょっと……ねぇ、名雪ってば…」
「祐一だよぉ…可愛いよぉ…抱きしめたいよぉ…」
あたしの呼びかけは、既にモードの切り替わった名雪には届いていなかった。
……っていうか……なぜ猫の時と反応が一緒なの……?
しかも……相沢君って可愛いかしら……?
あたしは本気で疑問だったけれど、もし今の名雪にそんな事を言おうものなら、百花屋に出入り禁止になるような騒ぎになりそうなのでやめておく。

「……はぁ」
とりあえず名雪の説得を諦めて、あたしも窓の外を眺めてみる。
そこには商店街を1人歩く相沢君の姿があった。
「……?」
でも、なんとなくその相沢君の様子がおかしい気がした。
特にどこが…って、訳じゃないんだけど…なんとなく……
あたしがその違和感の正体を確かめようとしていると、1人の少女が相沢君に近寄って話しかけて来た。
……名雪だった。
「……え!?」
慌てて視線を前に戻す……と、そこにはさっきまでいたはずの場所に名雪はなく、空になったイチゴサンデーの器だけがあった。
「い……いつのまに……?」
…この頃……相沢君の事となると、名雪が人間離れしてきた気がする……
このまま1人でコーヒーを飲んでいても仕方がないので、あたしも席をたつ事にする。
「……」
…けど……あの娘のイチゴサンデーの分もあたしが払うの? もしかして……
 
 
 
 
 
 
 

結局、予定外の手痛い出費を払う事になってしまった。
店の外に出ると、すぐに相沢君と話している名雪が見つかった。
……でも、なんだか少し様子がおかしい……
名雪が必死な様子で、相沢君に呼びかけていた。
「祐一……ねぇ、祐一!」
「……」
「……祐一……いったいどうしちゃったの……?」
「……」
そして、それに対して相沢君の方はなんの反応も示さず、戸惑うような目で名雪を見ていた。
いったいなにがあったっていうの……?

「…あの……」
あたしが今の状況を図りかねていると、相沢君が躊躇いがちながら口を開いた。
「う、うん、なに?」
ようやく相沢君の返事が返って来たのに安心したのか、名雪が嬉々として聞き返す。
しかし、そんな名雪に、相沢君は困惑の表情を浮かべたまま言った。

「……どちらさま……ですか……?」

……え……?
 
 




名雪まっしぐら、香里まっくろけ(1)




 

相沢君……今……名雪にどちらさまでしょうかって言った……?
何言ってるの……? またいつもの冗談……ではなさそうね……なんだか雰囲気がそんな感じじゃないし……
…人違い……?
……でもないわよね……どうみても相沢君だし、それにうちの学校の制服も着てるし……
「……」
あたしが色々と考えていると、呆然と立ち尽くしている名雪が目に入った。
まぁ、あの娘が相沢君に、『誰?』なんて言われたら、そりゃあショックでしょうけど……

「名雪」
「……」
あたしが名前を呼ぶと、ゆっくりと振り帰る。
その振り返った名雪の目は虚ろだった……
「あ、あの……名雪……?」
「香里」
けれど、その表情に反して、名雪の声は予想外に静かで落ち着いていた。
「……今までありがとう」
そして、なぜか感謝の言葉だった。
「え……あの……名雪……?」
「香里と出会ってからの5年間…色々あったけど楽しかったよ」
「名雪……? なにを言ってるの……? なんでそんなに澄んだ目をして言うの……?」
「いいんだよ、もう……私、分かってるんだから……全部……」
「分かってるって……なにを……?」
「私……これから永遠にいこうとしてるんだよね……」
……は?
「な、なに言ってるの……? そんなわけないでしょ!?」
「良いんだよ、隠さなくても……私は祐一に忘れられたんだから……私の行き場所なんてもうそこしかないんだから……ふふ……うふふふふふ……」
焦点の合わない、遠くを見詰めた目で薄ら笑いを浮かべながらうわ言のように呟く。
はっきり言って、かなり怖かった。
「ちょっ……名雪! なに馬鹿な事言ってるのよ! 戻ってきなさい!!」
「いいんだよ……私には祐一と激しくも切なく狂おしく愛し合ったこの17年間の幸せな思い出があるから……」
「だからいっちゃ駄目よ! …っていうか、そんな思い出ないでしょ!」
…どさくさにまぎれて、思い出が捏造されていた……
BR> 「あ、あの……」
それまで黙ってあたしと名雪のやりとりを見ていた相沢君が、口をはさむ。
「ちょっと、どういう事よ、相沢君! あんたが変な事を言うから名雪が大変な事になっちゃったじゃないの!」
「……相沢…君……?」
けれど、あたしに名前を呼ばれた相沢君が、不思議そうに首をかしげる。
「あれ……? あなた……相沢君じゃないの……?」
その反応に、急にあたしの自信も揺らぐ。
どうも見ても相沢君なんだけど……でも…世の中には似た人間が3人はいるっていうから……
…もしかしたら人違い……?
あたしがそんな風に考え始めた時、相沢君が今にも消えそうなか細い声で呟いた。
「……それが……分からないんです」
「……は?」
「自分が誰なのか……自分で分からないんです……」
「……な……なに言ってるの……?」
自分が誰だか分からないなんて……そんな、記憶喪失じゃあるまいし……
……
……それとも……まさか本当に……?
「……あなた……もしかして記憶がないの!?」
「……はい……ここがどこなのかも……今まで何をしていたのかも……なにもかも…」
そんな……そんな事って実際にあるの?
でも、目の前の相沢君はどうみても本物だし、とても演技をしているようにも見えないし……
それに、百花屋で見た時に感じた違和感の正体がそれだったとすれば納得出来る…
「…気がついたらこの場所を歩いていて…そしたらいきなりその人に話し掛けられたんですけど……」
「……そう……」
「あの…ところで……」
「なあに?」
「……その人は大丈夫なんですか…?」
相沢君が少し怯えたように、私の横を指差す。
「…え?」
言われてあたしも横を見てみる。

「……みずかちゃ〜ん……」
そこには、死んだ魚の様な目で空を見上げながら、そこにはいないはずの誰かにむかって話しかける名雪がいた……
「……私…もうすぐそっちにいくからね〜……」
「…」
「…」
「……」
「……」
「えっと……それで相沢君は本当に何一つ覚えてないの?」
「えっ!? 無視ですか!?」
「いいのいいの。この娘、こういう娘だから」
「……そうなんですか……?……なんか大変な人なんですね……」
「大丈夫よ。相沢君さえさっさと元に戻れば、この娘も元に戻るから」
「はぁ……そうですか……」
「それで……相沢君は自分の名前すら覚えてないの?」
「……はい……その…さっきから呼んでる『相沢』っていうのが僕の名前なんですか?」
「そうよ。『相沢祐一』があなたの名前」
「……相沢……祐一……」
「どう? 自分の名前を聞いてなにか思い出す事とかない?」
「……いえ……残念ながら……」
「そう……そうよね」
「……ところで……あなたは……?」
「え? あたし?」
「はい」
ああ、そうか……全部を忘れてるんだから、当然改めて自己紹介する必要があるわよね。
「あたしは美坂香里。相沢君とはクラスメートよ」
「クラスメートの美坂さん……ですか……」
「……あたしの事は香里でいいわ。相沢君に美坂さんなんて呼ばれるとくすぐったいから」
「じゃあ…香里さん……」
「本当はさん付けもやめてほしいんだけど……まぁ、いいわ」
どうもこの相沢君は遠慮深いみたいだから…いきなり呼び捨てさせるのも抵抗あるみたいだし。
「それで……こっちで放心してるのがあなたのいとこの……」
そう言って私が名雪を紹介しようとした時だった……

「私は水瀬名雪、祐一の恋人、だよっ♪」
いつのまに復活したのか、名雪が自分で自己紹介していた……
「そうこの娘が名雪。相沢君の恋人……って、ええっ!?」
……今……なんて言った!? この娘はぁっ!!?
「ええっ!? そうだったんですか!?」
当然それを真に受けた相沢君は、顔を真っ赤にして名雪の方を見ている。
「そうだよ。私と祐一はもう7年間も付き合ってるほどの仲なんだよ」
「7年も前からですか…」
「うん。それはもう学校でもお似合いだって評判のカップルなんだよ」
「へぇ…そうなんですか……」
着々と偽の記憶を植え付けていく名雪。
「そして、夜はもちろん、ベッドの上で毎日くんずほぐれず激しく愛し合……うう゛っ!?」
「はい、さすがにそこまでよ、名雪っ」
あたしは名雪の口を塞いでから、戸惑いの様子を隠せない相沢君の方を見る。
「ごめんね、相沢君。ちょっと名雪と話があるから、少しだけそこで待っててくれる?」
「…あ……は、はい……」
「ううぅ〜〜〜!」
名雪がなにか言っていたけど、あたしが口を塞いでいるため声にはならない。
「うぅ〜〜〜!!」
足をじたばたさせながら抵抗する名雪を、ずるずると引きずるかたちで物陰へと引張っていった。
 
 
 

相沢君からこっちの姿が見えなくなったところで、手を放して名雪を解放する。
「酷いよ、香里! いきなりなにするの!」
ようやく声を出せるようになった名雪、いきなり抗議の声をあげる。
「酷いよじゃないでしょ! あなたこそなに考えてるのよ!」
「なにって……なにが?」
本気で分かっていない様子で聞き返してくる名雪。
「なにがじゃないでしょ! あなたいつから相沢君の恋人になったのよ!?」
「ごめんね、香里……今まで黙ってて……」
「いいのよ。その事なら気にしないで……って、なにさらっと嘘ついてるのよ!!」
「わ、どうして分かったの…?」
「分からない訳でしょ。大体、もしあなたが相沢君と恋人になったら、それをまわりに隠せるはずがないんだから」
「うー…」
不満そうな顔をする名雪。でも否定はしないらしい。

「あのねぇ、名雪……あなたの気持ちは知ってるけど……
だからって記憶がないのをいい事に、自分を恋人だって偽るのはさすがにどうかと思うのよ」
あたしはやんわりと、諭すような口調で言う。
「香里、それは違うよ」
けれど、名雪はあっさりと否定する。
「なにが違うの?」
「私は別に……祐一が記憶喪失なのをいい事に恋人だと偽って幸せを満喫して……
……その上、肉体関係を結んで既成事実を作って……
……あわよくば祐一の子供までやどして祐一を一生私のものにしようなんて……そんな事企んでる訳じゃないんだよ」
「……だ……誰もそこまでは思ってなかったんだけど……」
……そんな事考えたのね、この娘は……
…なんか……ちょっと友達やめたくなってきたかも……
「私はただね、記憶がなくて不安な祐一を見て、少しでも元気付けてあげようと思っただけだよ」
「……」
「それで、元気付けてあげるなら、ただのいとこより恋人の方が安心するでしょ?
だから私は祐一の恋人役をかって出ただけなんだよ」
「……」
……非常に嘘くさかった……

「うん、なるほど……あなたの言う事も確かに一理あるわね」
「でしょ?」
「でも、相沢君を安心させてあげたいんなら、恋人じゃなくて家族でも十分だったじゃない」
「……う……」
「ううん、両親が海外に行ってて家族がいないこんな時だからこそ、一緒に住んでるあなたが家族として接するべきなんじゃないの?」
「……」
「記憶がなくて不安な時だからこそ、家族として支えてあげれば……それでいいじゃないの」
「……うん……そうだね……」
「そうでしょう。相手が不安な時にこそ、少しでもその不安を減らしてあげる…それが家族っていうものよ」
「うん、確かにそうだよ……香里の言う事は分かるし……その通りだとも思うよ……でも……」
「……でも、なによ?」
「でもね、香里に家族がどうのこうの言われても全然説得力ないよ……」
「……え?」
「自分の妹が病気の時に、その妹の事を見ないようにしてた香里に家族が支えるなんて言われても、素直に頷く気になれないよ…」
「……」
「私、知ってるよ。香里……今、栞ちゃんから『お姉ちゃん』って呼んでもらえてないんでしょ?」
「な、なんであなたがそれを……!?」
「実の妹なのに、栞ちゃんから『美坂先輩』って呼ばれてるんでしょ?」
「……ぐっ……」
「……普通ありえないよ…実の妹から先輩って…しかも名字の方で呼ばれるなんて……」
「……」
「だから……そんな香里に家族の絆を説かれても……ね……」
「……ふ……」
「……香里……?」
「……ふっ……ふふ……ふふふふふ……」
「(ビクッ)か、香里……?」
「……うふふ……甘いわよ…名雪……」
「え?」 「私が栞から『美坂先輩』なんて呼ばれていたのは…昔の話よ……」
「……もしかして……もう仲直りしたの?」
「……いいえ……その逆よ……最近じゃ、声すらかけてもらえないのよ……」
「……え……?」
「……栞にとって……あたしはもはや透明な存在でしかないの……」
「……」
「びっくりするわよ……廊下ですれ違っても、本当にあたしが視界に入ってないんじゃないかって思うぐらい、綺麗に無視してくれるんだから……」
「……」
「あのアイス好きの栞があたしの買って来たアイスだけは食べようともしなし……」
「なんでそんな事になっちゃったの……?」
「……服を……プレゼントしたの……」
「服…?」
「そう…栞に少しでも機嫌をなおしてもらおうと思って……あたしの服の中から一番のお気に入りだった服をプレゼントしたの……その服……絶対に栞にも似合うと思ったから……栞が来たら絶対に可愛いと思ったから……」
「それなのに……栞ちゃん怒っちゃったの…?」
「そう……あたしは良かれと思ってプレゼントしたのに……」
「……あれ? でも……香里の服だと、栞ちゃんのサイズに合わないんじゃ……?」
「そうよ……だから……」
「だから?」
「……あたしが小学6年生の時に、一番のお気に入りだった服を……」
「……」
「……そしたら……それ以来、口さえきいてくれなくなっちゃって……」
「……それは怒ると思うよ」
「だって、栞に凄く似合いそうだったのよ! それはもうあつらえたかの様に、今の栞にぴったりだったのよ!」
「ごめん、香里……今初めて、香里の事をちょっと頭悪いと思ったよ……」
「がんばれぇ……負けるなぁ……ちからの限り生きてやれぇ……」
「……それ……お話違う……」
「……ううぅ……」
「か、香里……とりあえず元気だそうよ、ね……栞ちゃんもいつかきっと分かってくれるよ」
「……そうね……」
「うん、ふぁいとっ、だよ」
「ありがとう……そうよね。それに今は私の事より、相沢君の事をどうにかしなきゃいけなかったのよね……」
「うん、そうだったね」
「……いいわ……名雪が相沢君の恋人役になるのは認めてあげる」
「ホントに!?」
「ええ。ただし、1つだけ条件があるわ」
「条件……?」
「まぁ、条件っていっても簡単な事だけどね」
「うん、分かったよ。それで……その条件ってなに?」
「肉体関係は禁止」
「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「な、なんでそんなに不満そうなのよ…」
「だって、そんな事をしたら私の計画、『記憶がなくても大丈夫、なくしたものは私の愛で埋めてあげるからね(はあと)大作戦』が……!」
「だから、それを阻止する為に言ってるのよ」
……しかし……酷い作戦名ね……
「酷いよ、香里! 私になにか恨みでもあるの!?」
「そうじゃないけど、記憶が戻った時の相沢君の事を考えたらそうするべきでしょ」
「うー、でも……」
まだ不満な様子をありありと見せる名雪。
「じゃあ聞くけど、もし名雪が記憶喪失になって、気がついたら斉藤くんと肉体関係になってたらどう?」
「……そ、それは……」
さすがの名雪も言葉に詰まる。
「そうだね……もしそんな事になってたら人生真っ暗だね……」
「そうでしょう。人生真っ暗でしょ」
「うん、分かったよ……だったら肉体関係までいくのは我慢するよ…」
「うん。そうしておきなさい」
言っておいてなんだけど……こうまで素直に納得してくれるとは思わなかったわ……
……斉藤くんっていったい……
 
 
 
 
 
 
 
 

こうしてなんとか話がまとまったあたしと名雪は、言われた通りにその場で待っていた相沢君の所に戻って来た。
「ごめん、待たせたわね」
「いえ…それより……どうかしたんですか?」
「なんでもないよ。私が祐一の恋人に決定しただけだから」
「け、決定……?」
「う、ううん、なんでもないのよ! それより、どう? 相沢君の方は待ってる間、なにか思い出した?」
「いいえ…これと言っては…」
「まぁ、そうよね。さて……それなら、これからどうするかだけど……」
「私の家に行こうよ!」
「……名雪の家に?」
「うん。まずは祐一が自分の住んでるところを知っておいた方がいいと思うんだよ」
「それもそうね…じゃあ、まずは名雪の家にいきましょうか」
「あの…」
「ん? どうしたの?」
「これから行こうとしてるのって、名雪さんの家なんですよね?」
「そうだけど?」
「そこに僕が住んでるって…どういう事でしょうか…?」
「ああ、そう言えばまだ言ってなかったわね。相沢くんはね、名雪の家に居候…」
「祐一はね、私と同棲してるんだよ♪」
名雪が私の台詞を遮るように言う。
「え、そうなんですか!?」
事実、あたしの台詞は聞こえていなかったらしい。
「うん、当然だよ。だって私と祐一は、恋人どうしなんだから」
やたら『恋人同士』にアクセントをおいて言う。
別に恋人だからって同棲は当然じゃないと思うんだけど……

「あのさ、それより早くいきましょうよ」
これ以上話をややこしくしない為に、あたしは先を促す。
「うん、そうだね」
「それじゃあ、よろしくお願いします」
「じゃあ、しゅっぱーつ♪」
そう言いながら名雪が相沢君の腕に抱き着く。
「わ、ちょ、ちょっと!?」
「ん? どうかした?」
「いや、あの……腕に……その……」
「なに言ってるの。私たちいっつもこうやって歩いてたんだよ」
「そうだったんですか……?」
「うん、そうだよ。だって……私達……恋人同士なんだから……」
「…は、はい……」
「じゃ、行こっ♪」

…本当は手をつないで歩いた事もないくせに……
そう考えると妙におかしかったけれど、それは言葉にしないでおく。
それぐらい…今の名雪は幸せそうに見えたから。

…いつか……本当に相沢君とこうして歩ける日がくるといいわね……

あたしはそんな事を思いながら、わざとゆっくり歩く名雪達の後ろ姿をぼんやりと眺めていた。
 
 
 
 

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