二人の旅(偽) 寝ない子だれだ


真琴SS?

シリーズ:二人の旅(偽)
 

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「なあ、真琴」

オレはプラットホームで
身体を前のめりにしながら
列車の来る方向を
じっと見つめる真琴に声をかけた。

「次の列車が来るの、楽しみか?」

真琴がオレの方を見る。

「ううん、楽しみじゃないないよ。でもね…」
「私は楽しみだよっ」

言いかけた真琴の声を遮って
不意に後ろから弾むような声。

「列車、列車」

オレと真琴がその声に同時に振り返ると
楽しそうに謎の歌を口ずさむ少女がいた。

「って、名雪!?」
「な、なんで名雪がここにいるのよぅ!?」

驚くオレと真琴の声に
名雪はのんびりとした声で答えた。

「あのね、これからは私も旅に加わろうと思って」
「なに言ってんだよ、お前はっ」
「だって真琴ばっかり祐一と旅をしてずるいよ。私も祐一と旅をしたいよ〜…」
「しょうがないだろう。これはそういうシリーズなんだから…」
「うー、いやだよ…これからは私も旅に入れてよ」
「駄目だ。いいか、これは『二人の旅』なんだぞ。それなのにお前が加わったら三人になるだろう」
「じゃあ、次からは『三人の旅』にしようよ」
「勝手にシリーズ名を変えるなっ!!」
「うー…」

名雪は不満そうな顔をしながら
それでも何かを考えていた。

「あ、そうだ。いいアイデアがあったよ」

不意に名雪が名案とばかりに手をたたきながら言った。

「却下だ」
「わ、私まだなにも言ってないよ〜」
「聞かなくてもわかる。絶対にろくなアイデアじゃない」
「うー、酷いよ。そんな事ないよ〜」
「分かった分かった。それで、なんだいいアイデアって」
「うん、このシリーズは『二人の旅』なんだよね?」
「ああ、そうだ」
「だったら、これからは私と祐一の『二人の旅』シリーズにすればいいんだよ」
「は…?」
「な、なに言ってるのよぅ! 祐一は真琴と一緒に旅をしてるんだからね!!」
「だからそれは第一部ってことで、
これからは『二人の旅・第二部 〜名雪と祐一のラブラブ紀行編〜』にすればいいんだよ」
「大却下だっ!!」
「そんなの駄目ぇ! 祐一は真琴と旅を続けるのっ!!」
「えー」
「えー、じゃないっ!」
「うー」
「うーでもない!」
「が、がお……」
「キャラが違うっ!!」

そんなやりとりが続くうちに
列車がプラットホームに入って来た。
そして、発車直前のドアが閉まる瞬間。

「こいっ、真琴!」
「あっ!?」

俺は真琴の腕を引張って飛び乗った。

「わ…」

突然の事で呆気にとられている
名雪の前でドアが閉まった。

「…悪いな。でも、いつか……必ず帰るから。それまで大人しく待っていてくれ」

ドア越しで届くかどうか分からないけど、
俺は名雪にそう言った。

「……」
真琴は無言で名雪を見ていた。

「うー、今回は失敗だよ…でもね、私は諦めないよ! いつの日か必ず第二第三の私が……」

ドア越しにもはっきりと名雪の意志を伝えながら
列車が徐々に動き出し
名雪の声と姿が徐々に遠ざかっていく。

名雪の姿が見えなくなってもオレ達は、
しばらくの間、デッキにたたずんでいた。

願わくば、もう二度と現われませんように…と心の中で祈りながら。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

超豪華・実は二本立て!(笑)
では、第二話をどうぞ(^_^/
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ウナイ
 

真琴SS?

シリーズ:二人の旅(偽)
 

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「なあ、真琴」

名雪を振り切って乗った列車を
終点で降りたオレは
名雪と別れて以来、どこか元気のない真琴に声をかけた。

「うー、祐一、置いていくなんて酷いよ〜」

しかし、そこにいたのは不満気な視線でオレを見る名雪だった…

「って、お前どうやって追いついた!?」
「ふふ…伊達に陸上部の部長さんをつとめてる訳じゃないよ」
「だからって電車より早く走るな…」

平然と言う名雪にツッコミを入れながら
オレは一つ足りない事があるのに気付いた。

「あれ…真琴はどうした?」
「真琴なら借金をつくって他所の男と逃げちゃったよ」
「そんな訳あるか!」
「わ、どうして分かったの?」
「あいつがいきなりそんな場末のホステスみたいなまねするかっ!!」
「分からないよ、女狐だし」
「……そんな事より、真琴はどこにいったんだ?」

オレが名雪を無視して真琴の姿を探そうとした時だった。

「んー、んー」

どこからかうめき声の様なものが聞こえた。
オレはそれが聞こえた方向に行って見る。

「んー、んー」

するとベンチの影に
口には猿轡をされ、両手両足を縛られて涙目になっている真琴がいた。

「ま、真琴ぉーーーっ!!」

オレは慌てて真琴を拘束しているものを外す。

「あ、あぅ……苦しかったよ……」
「真琴…なんでこんな事……一体誰が……」
「わ、もう見つかっちゃったんだ」
「お前かあぁぁぁっ!!」

名雪が悪びれた様子もなく
むしろ可愛らしいぐらいの照れた様なしぐさをしながら言った。

「だって…やっぱり私も祐一と旅したいんだもん」
「悪いが諦めてくれ、俺は真琴以外の奴を道連れに旅をする気はない。それがこの『二人の旅』シリーズだからな」
「じゃあ今度からは、『二人の旅』(+一匹)シリーズっていうのは?」
「超却下だっ!」
「真琴を一匹で数えないでよぅ!」
「いいアイデアだと思ったのに…」
「どこがだっ!」
「そうだ! これが『二人の旅』シリーズだから祐一は私と旅を出来ないんだよね?」
「まぁ…それはそうだが…」
「だったら今度からこのシリーズは、『ぶらりみちのく三人旅』にしようよっ」
「タイトルを根本から変えるなぁっ!!」
「それなら『みちのく温泉旅行殺人事件 〜湯煙に消えたおでん種〜』でどう?」
「2時間ドラマかっ!!!」
「真琴を勝手に消さないでよぅ!!」
「いいと思ったのに…このタイトルも駄目なの?」
「…というか…タイトルを変えようとするのはマジでやめてくれ……本気でヤバいから」
「…じゃあ、そのまま『みちのく二人の旅』?」
「なんでみちのくがついたままなんだぁ!」
 
 

そんなやりとりが続くうちに
プラットホームには乗り継ぎの列車が入って来た。

「今度は絶対においていかれないよ!」

さっきの事にこりた名雪が我先にと乗り込む。
そんな名雪を、オレと真琴は黙って立ったまま見送っていた。

「あれ、祐一?」

振り返った名雪の目の前でドアが閉まる。

「わ…もしかしてまた失敗?」

「じゃあな、名雪…こんどこそ大人しくあの街に帰れよ」
オレは冷ややかな視線を送りながら、わざとらしく手を振ってやる。

「う〜…このぐらいじゃ私は諦めないよっ!
いつの日か必ず、『二人の旅・第三部 〜名雪と祐一のアツアツ新婚旅行編〜』を……!!」

謎の台詞を残しながら、名雪をのせた列車が遠ざかっていく。

オレと真琴は肩を寄せ合って、その列車を見送っていた。
絶対にあいつを旅の道連れにするものか、と心に誓いながら……
 

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ささやかなコメント by LOTH

…ていうか、何をか言わんやだと思いますけど(笑)

100000hit記念に芥さんからいただきました。
これは見てのとおり、わたしのほのぼの系においてあるシリーズ『二人の旅』のパロディです。
このシリーズはなぜかとっても好きだという方がおられまして…芥さんもそのお一人です。
で、3次創作として、そして100000HITの記念に、この作品を…

…って、そんなことは既にどうでもいいって感じ(笑)
ともかく、芥さんの真骨頂、暴走する名雪のおバカぶりを思いっきり笑っちゃって下さい。
ていうか、わたしは大笑いしてしまいました。特に、第二部、第3部のネーミング(爆)

一応言っておきますけど、『二人の旅』はまだ終わってませんし、第二部にも入りません(苦笑)
もちろん、名雪が登場することも、真琴と入れかわって『みちのく二人旅』も『ラブラブ旅行』もしません(核爆)
…って、そんなのあたり前か(笑)

やっぱり、コメディ系、特に壊れ暴走系ではまだまだわたしなぞかなわないなあ…とあらためて思います。
うーむ、頑張ろう…頑張って、その成果を『ヒロイン入れ換え戦』にっ!!
…いいから、書かなきゃ(苦笑)

芥さん、ほんとうにありがとうございます。

2000.9.16 LOTH inserted by FC2 system