『TRUE LIES』−1st
 

 こんにちわ。詐欺師です。
 一日に三本書くのは始めてです。
 しかし、大丈夫なんだろうか、私のアタマ…。

 今回は、あゆの話です。メインシナリオは、名雪。
 本当はLOTHさんに捧げたい…のですが、読み飛ばされる可能性大(笑)
 

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     『TRUE LIES』−1st
 
 

 西に沈みゆく大きな夕日。
 一面オレンジの世界に、長い影を落とす。
 街に。
 心に。
 消えない影を、落とす。
 

 
 1月26日 火曜日
 
 

「…まったく、困ったもんだな…」
 口に出してから、別にたいして困ってもいないな、とも思う。
 夕暮れの帰り道。
 立ち寄った商店街。
 買ったものは、名雪の…
「誕生日プレゼント…で、いいのか?」
 買った当人の俺としてもよくわからない。
 一ヶ月遅れのプレゼント…
 …まあ、それは俺たちらしいかもな。
 問題なのは、その中身。
 イチゴのショートケーキ。
「…しかし、どうしてあんなに好きなんだ?」
 好きなものは好きなんだよ、と真顔で抗議する顔がすぐに浮かぶ。
「…ま、いっか」
 その時の名雪は幸せそうなのだから、俺がとやかく言うことでもない。
「そろそろ帰るか、な…」
 他に特に用事があるわけでもない。
 今日はさっさと帰って、名雪の帰りを待つか。
 そう決めて振り返る。

 そして、俺は立ち尽くした。

 見渡す限りオレンジの世界。
 赤い雲。
 赤い空。
 いつか、どこかで見たような…
 美しくて、悲しい…

「…祐一君」

 俺を呼ぶ声。
 ゆっくりと、視線を戻す。

「…祐一君」

「なんだ、あゆか」

 赤く染まった少女。
 赤く染まった世界で。

「祐一君、あのね…」

 白い羽も、
 白い肌も、
 すべて…

「探し物、見つかったんだよ…」

 喜ばしいはずの内容と一致しない表情。
 寂しげな瞳。
 力ない、沈んだ…

「よかったじゃないか」

「…うん」

「大切な物だったんだろ」

「…うん」

 言葉を交わしても、重ねても、寂しさは消えない。
 むしろ、その思いは…

「大切な…本当に大切な物…」

「見つかってよかったな、あゆ」

 いつしか、俺の口調は励ます時のそれになっていた。
 何故かはわからない。
 そうなってしまっていた。

 俺たちの周りを、人が通りすぎる。
 ここだけを残して。
 二人だけ、どこかに取り残して。

「あのね…」
 
 

 そして、あゆが口を開く。
 目を伏せて。
 顔を伏せて。
 一息に、たたみかけるように…
 それは、まるで…
 
 

「ボク…そろそろ行くね…」

 あゆが、顔を上げる。
 俺の目を見る。
 俺の髪を、口を…
 まぶたに焼き付けるように、じっと見つめ続ける。
 そして、どこまでも赤い世界の中で…

「…ばいばい、祐一君」

 あゆが、背を向ける。
 俺に。
 赤い世界に。

『ばいばい…』

 どこからか、響く声。
 それは夢の…
 現実の…
 あゆの、声。

「あゆ!」

 俺は叫んだ。道ゆく人の視線が集まる。
 あゆの視線も。

「あゆ!」

 もう一度。
 少しの間。
 あゆの顔が歪むのが、ここからでもわかった。
 …ちっ!
 俺は駆け出した。あゆの元へ。
 何故か、そうしなければいけない気がしたから。
 しかしあゆは、黙って俺を待ってはいなかった。
 …くそっ! 
 俺から逃げるように、あゆも走り出す。
 けれど俺は、今ので確信した。
 何か、ある。
 あゆには、俺に知られたくない何かが…
「あゆ!…くそっ」
 群がる人をかきわけて、あゆのところへ…
 でも、何故かあゆの足はとても速くて、俺との距離は広がるばかり。
 …いっつも、食い逃げで鍛えてたからな…
 そんなことも、慰めにもならなくて。
 夕方の人ごみを抜け出した頃には…

「…はぁ…はぁ…」

 息を切らせる俺の前にあるものは、鬱蒼と茂った森だった。
「…ここに…?」
 肩で息をしながら、すでに闇が訪れている奥深くに目をやる。
 まさか…でも…

 『森の方だよ』

 いつかのあゆの言葉。
 学校の場所を、本当に楽しそうに話していた…
「…行くか」
 俺はその森に足を踏み入れた。
 …ごめんな。
 右手にあるイチゴショートと、その向こうの名雪に謝りながら。
 

                                <つづく>

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 あらためまして。詐欺師です。
 LOTHさんに捧げた(かった)このSS、必要以上にDream/Realを意識してます。
 名雪シナリオとなってますが、本当は誰でもよかったんです。あゆ以外なら。
 …いえ、張り合おうってワケじゃないんですよ。ただどうせなら…と(^^;
 「ちょっと困るなあ」というのであれば、言って下さい。

 全三回を予定してます。
 

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