後ろの正面だあれ


ONE SS。
七瀬留美。

では、どうぞ
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後ろの正面だあれ
 

何で待ってるんだろう。
あたし。

こんなところで
こんな恰好して
毎日毎日。

ねえ
折原
どうして…
 

誰もあんたを覚えてない。
あんたの友達たちも
瑞佳さえ
誰も覚えてない
覚えているのは
あたしだけ。
 

あんたの席もなくなって
あたしの後ろは誰もいない。
だけど
 

あの朝、あんたとぶつかって
あんたの前の席になって
いろんないたずらされたけど
だけど
 

風が窓を揺らすたびに
誰かが咳をするたびに
机がカタンと鳴るたびに

わたしは思わず振り返る。
だけど
そこには
 

誰もいない
 

あんたなんていなかった。
全部あたしの夢だった。
あの日々は
転校してからあんたと過ごした日々は
全部
全部夢だった。
そう思えばいいのよ。
そう思えば…
 

…そう思えたら
 

だけど
あたしはここにこうして立って
こんな恰好で
毎日あんたを待っている。
 

最初は冗談かと思った。
どこかに隠れてあたしのこと
見ながら笑ってるんじゃないかって。
だけどあんたは来なくって
何日経って来なくって

教室にも
あんたのうちにも
あんたの姿はどこにもなくて
誰もあんたを忘れてしまって
あんたがいたことなんて
どこにも跡形もなくて

だけど
だから
このドレスは
そして
ダンスの約束は

これがあんたがいた証拠で
そしてあんたの約束だって
あんたが帰ってきてくれる
その約束なんだからって
あたし
信じちゃったんだ。
 

だから
早く来なさいよ
ドレスも煤けてきちゃったじゃない
あんたが来てくれないから
早く来てくれないから
 

「…折原?」

振り返る。
だけど
そこには
 

誰もいない。
 

思わず涙が出そうになる。
だけど、あたしは我慢する。

だって
あんたはもうすぐ来るし
あたしたちが別れたのは
ほんのついさっきだもの。

あたしを乙女にしてくれた
あたしだけの王子さま
女の子の幸せを
あたしにくれるただ一人の

そして
そんなあんたといる時が
あたしの愛おしい時
あたしが一番輝いてる
一番奇麗でいられた時

だから
あたしは留めている
あたしの時を留めている
時を留めて待ってるから
あたしはあんたを待ってるから
 

だから
早く来なさいよっ
あたしはここで待ってるから
約束通り待ってるから
だから
 

早く来なさいよ
折原っ
 

<END>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…茜じゃないのか…
「…悪かったですね、待ち人じゃなくて。」
…いや…あははは。
「…しかし、今日は澪さんの予定じゃなかったんですか?」
…その予定だったけど…澪、一人称が何か分からなくて(苦笑)
「まあ…口がきけませんからね…」
…もうちょっと、中身を練ってからにする。で、属性のある七瀬を書いてみた。ラブラブでドタバタって感じが…これはこれで難しいけどね…
「…真琴とはちょっと違いますからね。」
…そういうこと。この子はこの子で可愛いけど…ね。 inserted by FC2 system