MoonLight〜おもいでのはじまり〜SS

シリーズ:SunSet, SunRise
第一部"SunSet, MoonRise"

では、どうぞ

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長い長い橋
いつも越えていた長い橋を渡る。

水面に反射する陽
川を渡る風

多くの生徒たちが渡っていた橋
暑さにむせびながら
白い息を吐きながら
渡っていた橋を渡って

そして

その場所にたどり着いたオレは
そこで立ち尽くた。
立ち尽くしていた
 
 

  - この場所に、この空の下に -

 

 
 

たどり着いたその場所には、かつて学校があった。
オレたちが通い、学び、遊んだ学校がそこにあった。
そこでオレたちは出会い、そして別れた。
オレたちがその中で時を過ごした場所。

でも
ここにはもう何もない。
ただ、土地の境界線を囲う金網だけが残って
後は工事用の車たちが出入りして荒らされた土と
何もかも壊されて平らになった地面と
そこから生え始めた雑草だけがあった。

ここにはもう何もない。
もう、何もない。
ただ
オレたちの中にある、おもいでを残しては。
 

オレは小さく息をついた。
そして、空を見上げた。

この場所にいる頃、オレは知らなかった。
おもいでは出来るものだと思っていた。
雪が地面に降り積もっていくように。
枯れ葉が森に降り積もっていくように。

だが、今はオレたちも知っている。
おもいでは作りあげていくものだということが。
かけがえのない仲間たちと。
かけがえのない人と。
時の中で失われ
時の中で磨かれる
そんなおもいでの重さを
そして、その力を

一人その場所にオレはたたずみながら
晴れ上がった空を一人見上げながら

オレは思いだしていた。
無邪気だった時間を
自分が無邪気だったことすら気づかないほどに
それほどに無邪気だった時間を

そして
その時間の中で出会い
その時間の中で作り上げたおもいでを
ずっとこれからも繋がっていくおもいでを
思い出していた。

この空の下で
この青い空の下で
この空の彼方できっと同じ空を見上げている君のことを
オレはおもいだしていた。
おもっていた。

この場所で
このおもいでの中で

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