This Story will never be Written.
「…祐一」
「ん？」
「…ありがとう」
あの夜に
「本当にありがとう」
「祐一のことは好きだから…」
「いつまでもずっと好きだから…」
冷たい月の下で
「春の日も…」
「夏の日も…」
「秋の日も…」
「冬の日も…」
「ずっと私の思い出が…」
「佐祐理や…祐一と共にありますように」
舞の微笑みと共に
「舞っ…舞っ…！」
オレの涙と共に
「…代わりに私がしりとりを始めてあげようか」
オレの目の前で
「…りんご」
「…ごりらさん」
「らっぱ…」
「ぱいなっぷる…」
「…るびー…」
「……びーだま…」
「………まり……」
「…………りすさん………」
「……………………すいか……」
「………………………………………」
全てが
「舞…」
終わった
はずだった
ただ一つのオレの義務を残して…
「…佐祐理さん。」
「あ、祐一さん。お見舞い、ありがとうございますー」
「………」
「あれ？舞、一緒じゃないんですねー」
「………」
「舞、全然お見舞いに来てくれないんですよー。気にしてるんですかねー。」
「舞のせいじゃないって、祐一さん、言ってあげて下さいねー」
「で、見舞いに来なさいって、言って下さいねー。」
「佐祐理、寂しいですー」
「………」
「…祐一さん？」
「………」
「…あの…」
「佐祐理さん。舞…舞は…」
それがオレの義務だと
だからそれで終わりだと
オレは思っていた
だけど
「…冗談ですよね？」
「………」
「…ねえ、祐一さん。冗談…なんですよね？」
「………」
「………」
「………」
「…ねえ…」
「………」
「………」
「………」
「……うそ…」
「………」
「………」
「………」
「…そ…」
「………」
「………」
「………」
「…ま…」
「………」
「………」
「………」
「舞ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
だけど
それは
はじまりだった
それは狂気なのか
「そんなところで何してるんですか、佐祐理さん？」
「………」
「…佐祐理さん？」
「……佐祐理？」
「わたしは…舞。」
変わっていく佐祐理
「佐祐理さん…あなたは佐祐理さんなんだ！」
「変な祐一。少しおかしい。」
「佐祐理さん！」
「どいて。わたしは…行くから。」
「どこへ？」
「……どこ？決まってる。」
「魔物を狩るため。」
「わたしは魔物を狩るものだから。」
夜の校舎に立つ
佐祐理
そして
「佐祐理さん！もう、終わったんだ！」
「終わった？何が？」
「もう…魔物なんていないんだよ！」
「………」
「…あの魔物は…」
「………」
「…あれは…」
「しっ！」
剣を構える佐祐理の前
それは
ガキッ
「外した」
消えたはずの魔物
「祐一…邪魔。」
「佐祐理さん！あなたじゃ…」
「どけっ！」
「……………せいっ」
砕け散るガラス
照らす銀の月
リノリウムの床
銀に輝く廊下
「手負い…か」
ドカッ
「ぐっ」
弾き飛ぶ佐祐理
「佐祐理さん！」
「…もう一体…」
「もう、無理だっ！だから…」
「これで…終わりにするっ」
「佐祐理さん！」
そして
「なんでこんなことになるんだよっ」
「………」
「なんでだよっ」
「……ゆういち…」
「終わったんじゃなかったのか？なあ…」
「………」
「…なんでだよ…なんでだよっ」
佐祐理をかき抱いて
なす術もない祐一
その前に
カツン カツン カツン
「誰だっ！！」
カツン
「…まさか…」
Eine Kleine Naght Musik
奏でられる不協和音
これは一夜の夢なのか？
あるいは
これこそが真実なのか
"Eine Kleine Naght Musik S"
人を不幸に落すことでしか幸せにできない
愚か者たちへのレクイエム
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