『この町に天使はいない』 あとがき



この話は元々、「Forget me, Foregive me」シリーズ群の最後の話です。
それは今回の話を見れば、知っている人はピンと来るはず。

そもそも「Forget me, Foregive me」(以下、F,F)シリーズを書くに至った理由は二つあって、

・栞シナリオで、栞とあゆの決着をきちんと付けてやりたい。
・栞と香里の姉妹をきちんと書いて救いたい。

それを書こうとして、あゆへの思い入れが暴走してストーリー全体を吹き飛ばしてしまったF,F。
それを救うため、そしてF,Fで書いてしまった栞に沸いてきた思い入れを形にするために書いたF,F/Fairy Tale。
そこで書くつもりだったのに結局掛けなかった姉妹の救済のみを目指して挫折したF,F/Serious。
原点に戻ってオリジナルなF,Fのストーリーを書くことを目指したF,F/Original Side。
F,Fの舞台を栞シナリオからオリジナルストーリーに移すことで栞とあゆの決着だけを目指したF,F/Fantasy。

ここまでのシリーズ群を書くことと、そして一連のあゆシナリオ改変SS(「夢の街」を含む)を書くことで、
栞とあゆの決着はわたしの中で付けたつもりです。
でも、栞と香里の救済は……

F,F/Sが挫折し、F,F以外のシリーズで栞と香里の、栞亡き後の香里をたくさん書いてきた後で、
ようやくわたしには分かってきたのです。
祐一には、栞と香里の姉妹を救うことが出来ない、と。
少なくとも、祐一と栞の愛では、香里を救うことなんて出来ない。少なくとも、わたしには。

でも、だとしたら、誰ならば二人を救えるのか?
何をしたら二人は救われるのか?

誰か、は分かりませんが、何をしたら、は分かっていました。
二人が舞台から降りること。
Kanonの舞台から。栞シナリオから。
あのひどい、書き割りの舞台から。身勝手な栞シナリオから。

だけど、F,F/Sと、そしてF,F/Fで分かったように、祐一がいる限り、栞シナリオからは離れられない。
栞がいて、香里がいて、祐一がいる限り、あゆがいなくても栞シナリオからわたしには逃れられない。
だとしたら。

必要なのは、香里を、栞を昔から知っている人間。
そんな人だけが、Kanonという舞台の上に登場させられ、栞シナリオという芝居に巻き込まれても、
舞台の裏を見ることが出来るかもしれない。
書き割りの舞台と、薄っぺらない台本のままごと芝居の裏側を。

そして舞台の上、スポットライトを自分に、自分だけに向けることで、二人を舞台から退場させることが出来るかもしれない。
たとえ、その役がピエロでも。ピエロの一人芝居でも。

それに該当するキャラクターは、Kanonの中に既に存在していました。
そうして、この物語が生まれました。

この物語は、あとがきの中だけで語られたことのあるF,F最後のシリーズ、F,F/Finalのなれの果て。
そして、あのF,Fで書いてしまった見にくい栞への、ある意味での花束、そしてレクイエム。
そんなつもりで……最後まで、書き終えました。
書ききったとは思いませんし、自分の全力だったかは疑問ですが、ともかく……書き終えました。

もしもまだ読んでいる方がいたら、どうもありがとうございます。
途中、読者無視で中断してしまったこんなお話に、よくおつき合い下さったと思います。

本当に……ありがとうございました。

2009年 10月 18日 LOTH

[創作メモ]



inserted by FC2 system