Forget me, Forgive me / Fairy Tale

わたしのもう一つの、そして最大の問題作(苦笑)
でも、この話は…このメモは…



メモ

栞、あゆSS

Forget me, Forgive me

栞が祐一との1週間を選んだ後。
あゆが出てこない日、栞が祐一と別れてからあゆと出会う。(適当な日を調査)
あゆ、栞になんとなく責める態度。

1月29日
祐一と主人公が別れてから、主人公はあゆと会う。
別れて駆けていくあゆ。
そして、帰ろうとしている栞と出会う。
栞を責めて泣きながらあゆは駆けていく。

2月1日の別れ以後。
眠っている栞。
最後の時を待つ。
あゆの姿。
それでいいの?
病室から連れ出すあゆ。
そして、とある病室。
そこで眠るあゆを見る。
これが…ボク。
ぼくはもう…7年前に死んだ。
今まで7年間死んでいる。
そして…こうなった今、ボクは消える。
最初から決まっていた。
悲しげな微笑。

栞に生きることを望むあゆ。
拒絶する栞。
わたしは…醜い酷い、残酷な世界で
哀れな悲しい悲劇を拒み
強い、美しいわたしを
わたしを永遠に残すことを
やりきったのよ!
わたしは…勝ったの。
だからこのまま…死なせて…
あゆ、栞に2月1日を見せる。
パステルが落ちて…
栞は笑って…
香里が抱き上げて…
香里の目から涙がこぼれて…
落ちる涙…
栞を濡らし…
そして…
栞の笑い顔…
でも、目には…目には…溶けた雪じゃなく…香里の涙ではなく…目に…
偽りの涙?
観客もない偽りの涙?
それともそれは…なに?
そして、泣く栞。
あゆは黙って見ている。
そして微笑んで
奇跡は起きるから。
ボクが消えるとき、
きっと奇跡が起きるから。
だから栞ちゃんはあの涙の意味を
栞ちゃんが何を望み
栞ちゃんが何を願って
そして泣いたのかを考えてほしいんだ。
栞、顔を上げてあゆの顔を見る。
それがあなたの望みなの?
こんなことを7年間待っていたの?
あなたは何を望んだの?
あなたは何を願ったの?
そして…
悲しげに微笑むあゆ。
分からない。
だから、僕はお願いするんだ。
ボクが何を望んだのか
ボクが何を願ったのか
栞ちゃんに考えてほしい。
ボクの代わりに考えてほしい。
それは栞ちゃんにしかできないことだから。
だって、ボク達は、死んで、
死後の世界をさまよって
ボクたちは一緒だから。
それはどういう…
栞の問いに、あゆは答えずに透けていく。
それから…本当は、もう一つ…お願い…
ボクのことを、死んだボクのことを祐一くんに…
一瞬。あゆ、微笑む。
…いや、絶対、言わないで。忘れて。栞ちゃんも…
あゆの笑顔…消えて…
全ては、暗闇に。
そして…
…奇跡後。
心の中。
ありがとう。
そして…
ごめんなさい。
<END>


これはF,F/FTのメモ。
元々のF,Fのメモは、この一次稿として書いてあったものです。
既に改変を繰り返し、その度にメモ自身を書き直したために、その原型はもう残ってないのですが…
F,F/OSをお読みになれば、どこが書き換えられて、どこが変わらなかったのかが分かると思います。
基本的には、最初の部分、そしてあゆが自分の眠っている部屋に栞を連れていくところまでは
第1稿とほとんど変わっていないはずです。
元々、そういう話だったのですから。
(F,F/OSではその辺の場面進行を変えてしまいましたが)

そしてもう一つ…最後の部分。

…奇跡後。
心の中。
ありがとう。
そして…
ごめんなさい。

この部分は…全く変わっていません。
何度改変しても、ここだけは最初からあって、全く変えていない。
作品の中でも、一言一句変えずに使いました。このまま使いました。
なぜなら、これが言いたかったことだから。
このセリフが言える、心から言える栞を描くために、この作品を書くはずだっただから。
そして、書いたから。何度でも。何度だって。

でも、このメモはこの形のまま、書かれることはありませんでした。
第一稿は、F,Fのオープニングを書いた時点で破棄されました。そのことは、第1話の後書きで書いたとおりです。
F,F/OSとなる、それも『Dream/Real』のような話として書かれるはずだった第1稿は、破棄されました。
それは当然でした。だって、わたしはD/Rのあゆほどは栞を愛していなかったから。
最後のセリフを栞に言わせるには、せめて栞をあゆと同じくらい愛してないと書けない。
だけど…愛せるはずもなく、また書くことでだんだん愛していける気もしなかったから。

そして、書くことと愛することの平衡をとれなくなったわたしの心が、あの醜い栞を求めたのです…
普通、絶対愛せない栞を。愛せないからこそ、酷く、醜く、辛い…栞を書き始めました。
そして…

でも、多くの人の言葉と、いくつかの作品と、そして、この生んでしまった栞への愛が、わたしを立ち戻らせました。
だから、このメモへ、あゆと栞の話へと、わたしは戻ろうとしました。

だけど、わたしは書いてしまっていた。
醜い、でも、わたしが愛せる栞を。
そして、その栞では、第1稿のプロットには戻れなかった。

でも、戻る必要はなかったのです。
あゆの優しさが…栞の本当の心が…弱くて、もろくて、でも本当は世界を愛したかった栞の気持ちが…
それさえあれば、メモの後半部分へと栞と戻してやれる。そう思ったから。

だけど、それはおとぎ話にならざるをえませんでした。解説にあるように。
それはある意味、わたしの限界でもあり…でも、わたしらしい選択でした。
多分、わたし以外の方では無理な選択…自惚れさせてもらえれば、そういう選択でした。
幻燈屋であるわたしにできる最善の選択…それがF,Fの栞をF,F/FTに書くこと。
そして…おとぎ話を書くことでした。

常に文頭に置いていたおとぎ話の部分には、メモはありません。
このメモ、そして書こうとする話を頭に浮かべて、それをおとぎ話に変換しただけです。
『幸福の王子』をモチーフにしたのは、あゆの自己犠牲という、いつも言われる悲しい、酷い言葉、それに対する抗議です。
あの王子、そしてツバメは、神様と天子に救われた。
だけど…あゆは救われてない!!!
『幸福の王子』は…優しく見えて、実際は酷く残酷な嘘っぱち。
救われなかった者たち…探し出せなかった天使。
天使はあゆのモチーフとしてよく使われている。でも…羽のある天使は…死人ですから。
探し物を本当には探し出せなかった死人。それがあゆの本質。栞シナリオの。だから…

だから、最後にあゆは消えて、栞が残る。
そして、だからこそ、栞は最後に祈りを捧げる…

作品解説になってきたのでこれでやめますが…
このメモはそんな、わたしの迷いと作品の変遷をまざまざと見せるメモです。
はっきり言って、普通の人はこのメモから、あの作品群を書く事はないはずです。
でも…わたしにあの作品群を書かせたメモ。何ヶ月も放置され、何度も書き直された…
既にこのメモがわたしの作品のような気さえする、そんなメモです。 inserted by FC2 system