春の花咲く頃には (夢の頃・夢の季節 遠距離恋愛編−受験編)


(Opening)
回想。電話。「しばらく連絡しないです…」「なぜ?」「…集中したいんです。」
「でも…」「…お願いします。」「………」「…………」
「…分かった。いつまで?」「受験が終わるまで…」「…分かった。でも…」
「…じゃあ、これで…」「おい、美汐?」「では…」
受話器を置く美汐。受話器を押さえて、首を振る。

(美汐サイド)
駅に到着。ホテルに向かう。

(祐一サイド)
バイト先。交代でやってきた北川とそれについてきた香里に、祐一は責められる。
「どうして今日、こんなところにいるんだ?」「…バイトだから。」
「そういうこと言ってるんじゃなくて…天野さんは?」「…どっかのホテルだろ。」
「どこかって…どうしたんだ、いったい?喧嘩でもしてるのか?」
「ちがうよ。あいつが…集中したいからって。だから…正月に帰ってきてから先、電話もしてないし…」
「…あなた、バカ?」「何だよ。」「…なんでそんなこと、真に受けるのよ。」
「真に受けるって…あいつが望んだから。」「…バカ。」「………」
「あの子のこと、一番分かってるの…あなたでしょ?あの子の気持ち…あなたと同じ大学、受けるって言った、あの子と気持ち」「………」

回想。美汐と祐一の雪の街での別れの日のシーン。

「………これ以上は、あたしたちの口から言わなくても、分かってると思うけど?」
「………」「………」「…でも、あいつ…言ってくれないから。」「……?」「………」
「……はあ。あんたたちって…どうしようもなく、バカなカップルね。」
「何だよ、そりゃ。」「言ったとおりよ。さ、さっさと家に帰って、一人寂しく寝ちゃいなさい。今日は…そして、この先もね。」「………」
祐一、黙って着替えに入ろうとする。でも、振り返って「分かってるんだ。だけど…言ってほしい時だって、あるだろ?」「それは…誰も同じよ。きっと天野さんも…わたしだって…」
香里、北川をちらっと見る。祐一、北川に笑って「やっぱり、きちんとプロポーズしてやれよ。そりゃ、今でも夫婦同然だろうけど…」「…おいおい」相沢くん、そういう意味じゃ…」
祐一、笑って着替えに入って、暗い窓の外を見る。

(美汐サイド)
暗い窓の外を見ている美汐。おもむろに鞄から問題集などを引っ張り出す。
その中に、お守り。美汐、ふと微笑んでお守りを見つめる…

回想。河野との会話。
二人で買ったお守り…
「まあ、天野さんの場合は、もっといいお守りがあるけどね。」
「…?」
「恋人と同じ大学に行くって、それが一番、頑張れることだもんね…」
「…いえ、そんなつもりでは…」
「……?」
不思議そうに見る河野。
美汐、黙って目を落すと、お守りを見る…

息をついて、お守りを見る美汐。
また窓を見る。窓に映る自分。ため息。
そして、電話を見つめて…ベッドに転がる。

(祐一サイド)
自分の部屋。電話を見ている祐一。
振り返ってみる自分の机。その上の写真立て…美汐の写真。

祐一、息をついて電話を見つめる。
その時、電話が鳴る。
「もしもし?」

(美汐サイド)
受験の朝。大学へ向かう美汐。大学の前で、門を見あげて、そして…

「…よう。」
「……祐一さん…」
祐一、美汐を学校そばの道まで引っ張っていく。
美汐「どうして…」
「昨日、見知らぬ女の子から電話があってな。」「…?」
「河野です、って名乗ったよ、その子。」「河野、さん…」

回想。
「…もしもし。そちら、相沢祐一さんのお宅でしょうか?」
美汐ではない女の声。
祐一、ちょっとがっかりしながら
「…はい。えっと、どなた…」
「…ええと、わたし、河野と言いますけど…」
「河野?ああ、美汐の友達…」
河野、祐一に美汐のことを語る。
祐一、受話器を置いて、頭をごんとベッドサイドにぶつけると…

「いい友達を持ったよな、美汐。」
「……はい。」



ある意味で非常に問題作(苦笑)のメモ。それも、不完全なものです。

というのも、しょうがないのです。このメモは書きながらころころ書き換えていたので…
実は、メモを書く前に既に10kB書いてしまっていて、しかしそれが息詰まったためにあわてて構成をしながらメモを書いて…
またSS書いて、そしてなんか違うなって思ってはメモのシーンの部分を差し替え、書き換え、切り張りをして…
最後の部分は、もうメモを書き直す気にもなれず、書く気にすらなれずにそのまま書き下しました。
でも、その部分が書きたくて書いたんですけどね…はあ…

しかし、その部分が…腐ってたので、メモに書かなくて良かった感じですね(爆)
メモに書いたら…きっと最後まで書く気にならなかったんじゃないかと(苦笑)

ちなみに、最初の草稿では、美汐が駅に降り立つシーンから始まり、そこに到着を教えられていなかった祐一が迎えている…
そして、二人がホテルへと歩きながら会話をする…それに回想シーンが入って…
美汐のテストが2日間にわたっていて、次の日がその1日めで…よくできなくて。
で、来ないでと言われていた祐一が、やっぱりそこで待っていた…
そういう、ある意味わたしが書きたかった話をストレートに書く話、だったんですけど。
でも、あまりにストレートすぎだし、なんかあまりに美汐が意固地過ぎて嘘っぽい…そう思って、没にして…
で、今の形になっていったんですよね…

…どうせ腐ってるんだったら、そっちにままにした方が短かったはずだし、楽だったですよね(笑) inserted by FC2 system