『心象風景画』について


『心象風景画』Picture1〜Epilogue&『お姉ちゃん泣かないで』
天野美汐を、わたしは愛していなかった。
「恋はいつだって唐突だ」を書いた当時、わたしは愛していなかった。
ただ、この少女のことを考えながら、真琴を書いていたのは事実です。

美汐はかつて妖狐と出会い、そして別れを経て社会を、人間関係を拒絶するに至ります。
なぜそこまでに彼女は拒絶をしなければならなかったのか。
ただの妖狐との出会いと別れの悲しみだけで説明する人はいました。
しかし、わたしにはそれは信じられなかった。
人間は、もっと強くてかつ弱いはずです。
彼女にも両親が、友人がいたはずです。
なのに、なぜ彼女は多分、その人々までも拒絶するに至ったのか。
そこには、通り一遍ではない出会いと別れがあったはずだ…

…わたしの過ちはそこから始まりました。
わたしは何かを間違えた。
美汐と美宇が出会ったことは間違いじゃない。
美汐が美宇を愛したことは間違いじゃない。
美宇が美汐を愛したことも。
美宇が消えねばならない存在であったことも、美宇のせいじゃない。
すべて、二人の罪ではない。
なのに…
わたしは真琴は帰らせることができた。
でも、美汐に美宇は還らない。
わたしには、美宇を還してやれない。
Epilogueに至っても、思いの整理しかしてやれなかった。
ただ、それだけしか。

全てはわたしの罪です。
わたしにもう少し優しさがあれば、美汐に美宇を還してやれたのに。
わたしがもう少し美汐を愛していれば、『14才の別れ』を書かず、
もうちょっと優しい話を書いてやれたのに。
美宇が消えるその時に、美汐がどこにも行かず、ただ、ただ美宇を抱きしめて
美宇のあの『お姉ちゃん泣かないで』を美汐に聞かせてやれたら
ただそれだけでよかったのかもしれないのに。
卑怯なわたしは今になって美宇の思いを書いている。
酷い話です。
酷い奴です、わたしは。

だから他の人に言いたい。
痛いだけの話を書かないでほしい。
キャラを救うつもりがないのなら、悲しませないでほしいって。

そんなわけでこの美汐はわたしに取り憑いて、わたしの一部となってしまいました。
これは愛と呼ぶべきでしょうか。だとしたら、それは自己愛ですね(苦笑)

このシリーズはそんな、わたしの罪とわたしの一部を得たシリーズです。
な、仕切り屋・美汐。
お前はオレの一部であり、オレの罪の意識の産物だから。ははは。

『美汐さんに花束を』
内容については、『心象風景画』でやり残した事柄の整理。
墓参り、日記を燃やすこと。そして…二人に美汐が美宇の思い出を語りはじめる。これが美汐にとっての一つの始まりでもあるから。間に挟まれた童謡は…美汐がかつて美宇に歌ってやった童謡なのでしょう。悲しみを整理していく時、こうして思い出は浮かび上がってくるのかも。
後書きについては…本当は、このSSでわたしは美汐と手を切り、SSを書くことから手を引きはじめるつもりでした。というのは、この頃、『わたしがあなたと出会うまで』を終えた頃だったから。なぜそんな思いを持ったかは…そちらのほうで語るとして。
でも、結局、わたしには美汐は切れなかった。あまりにわたしの一部になっていたから。だから…できなかった。そこで、『Lunatic』を、今まで愛せていなかった香里を書いてみようと思いました。だから…これも一つの転機となるSSでした。

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