Some Sunny Day, We'll...

(Forget me, Forgive me / Original Side-Dream END)


栞&あゆSS。ネタバレあり。

シリーズ:Forget me, Forgive me / Original Side

では、どうぞ

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        何を望んでいたのだろう

        何を願っていたのだろう

        何に祈っていたのだろう

        そして…

        何が

        誰が

        なぜ

        残ってはいけなかったのだろう
 

Some Sunny Day, We'll... (Forget me, Forgive me / Original Side-Dream END)
 

晴れた空に太陽が
まぶしく輝いている。
暖かな風が
わたしの髪を揺らしている。

わたしは目が覚めた。
あの夜の後。
ベッドの上で
白いシーツに包まれて

見知らぬ病院だった。
わたしはいつの間にか移されて
お姉ちゃんがわたしを見て
涙で濡れた瞳で
にっこり笑っていた。

何が起こったのか
わたしは知らない。
新しい治療法
新しい薬
新しい手術
医者はそう言って
得意そうに笑って

だけど

わたしは知っていた。
わたしは信じていた。
本当のことを
この世界の真実を
たった一つの真実を

わたしは退院して
この街に戻り
この病院に来て
この場所にたどり着いた。

たどり着いたここには
白いドア
白い窓
白い
白い名札

だけどそこには
何も書いてなかった。

ゆっくりと開いたドア
白い壁
白い天井
そして
空っぽのベッド

わたしは立ち尽くして
ただ立ち尽くして
空っぽのベッドを
皺一つないシーツを
ただ見ていた。
見ていた。

これが真実。
たった一つの真実。
だけど

空っぽのベッドが
白いシーツが
白い部屋が
日の光の中で
歪んで
歪んで

本当は
こんな真実なんて
欲しくはなかった
こんな現実なんて
こんな夢なんて
信じたけれど
信じたくなかった

たとえ、これが現実で
たとえ、これが夢で
これが誰かの夢で
これがわたしの夢で
これが
これがあゆさんの夢だとしても

本当は
本当は

わたしは欲しくなんてなかった
こんなものは欲しくなかった
たとえ、それが誰かの
たとえ、それがわたしの
たとえ、それがあゆさんの

望んだ

願った

祈った

そして

夢だったとしても

欲しくなんてなかった

わたしは立っていた。
立ち尽くしていた。
誰もいない病室で
立ち尽くしていた。

目からあふれた涙が
頬を伝う涙が
落ちるのを
感じて

「…美坂、さん?」

誰かの声。
あの夜、聞こえた声。
あの夢の始まり
この現実の始まり
あの時に聞こえた声。

わたしは振り返った。

「…やっぱり。」

そこに立っていたのは、看護婦さんだった。
この病院の看護婦。
顔は知っていた。

「直ったのね。おめでとう。」

わたしは頷いた。
黙って頷いた。
この酷い世界に
この酷い夢に
わたしができることは
頷くことだけなのだろうか。
いつも
いつも

「…月宮さんと、お知り合い?」

看護婦さんの言葉。
わたしは見つめた。
看護婦さんの顔を見た。

看護婦はわたしを見た。
そして、不思議な顔をした。

「いつの間に、知り合いに…」

わたしは黙っていた。
わたしの知りあい
わたしの友達
わたしの仲間
わたしの
わたしの分身
あゆさんのことを
口にする気になれなかった。

看護婦はわたしを見つめた。
そして、口を開いた。

「月宮さんは…」

もう一人のわたし

「あなたが転院してから…」

わたしの夢を見ていた人

「すぐに…」

この世界を夢みていた人
わたしの恩人
そして
わたしの犠牲
きっとわたしには
償うことのできない

「…転院したわ。」

わたしは看護婦さんを見た。
顔を見つめた。
不思議そうな
でも真剣な顔を見た。

「…転院…ですか?」

やっと出たわたしの言葉に
看護婦さんは頷いた。

「ええ。目覚める兆しが見えたの。」
「その前まで、危篤だったのに」
「瞬きをして」
「呼吸が戻って」
「心臓の鼓動が激しくなって」
「だから、もっと大きい病院へ」
「転院したの。」
「だから…」

わたしは黙っていた。
言葉が出なかった。

ここは誰の夢だろう。
ここは誰の現実だろう。
わかりません。
だけど

誰の夢でも
誰の現実でも
そんなことは
どうでもいい。

立ち去ろうとしたわたしに
看護婦さんの声が

「…転院先、教えましょうか?」

わたしは振り向いた。
そして

「…必要、ありませんから。」

その必要はない。

わたしは笑っていた。

わたしには分かる。
ここが誰の夢でも
ここが誰の現実でも
そんなことは無意味だから。

ここは酷い現実で
ここは冷たい現実で
ここはわたしの夢で
ここはあゆさんの夢で
だけど

ここにわたしは生きていて

ここにあゆさんが生きている。

だから

聞く必要はなかった。
わたしには分かっていたから。
わたしは
あゆさんは
わたしたちは
きっと…
 

病院の出口
外のまぶしい光の中
わたしは瞬きをして
手をかざして

あの夜
あゆさんと繋いだ
しっかり繋いだ手を
その暖かさを思いだし

日の光の暖かさを
感じて

目を細めて
まぶしい陽を見つめた。
見つめていた。
 

Some Sunny Day, We'll meet Again...

<END>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…結局、このご都合主義エンドも、オレのエンドだからね。そして、オレが本当に栞シナリオで見たかったエンド。あの酷いエンドじゃなくて。オレはあのエンドが嫌いだ。あんなシナリオは大嫌いだ。キャラを愛したくてF,F/OSは書いた。だけど…やっぱり、シナリオは愛せなかった。コメント見れば分かる。それがにじみ出てたってことは。
だから結局、Eine...2のように、ある意味、作品性は放棄しても、これを書くのがオレらしい。だろ?
「…それがあなたの目指すものなら。」
…オレが目指すのは幻燈だから。さあ、すっきりした。また、次を書こう。ほのぼのか、コメディか…分からないけど。

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