ChangeきゃすてぃんぐKANON-1月11日


違和感コメディChangeのバリエーション…では既にないっす(涙)

注1:キャラは全体に壊れ過ぎて、原作はもうキャラクターが出てくる日と場面展開しか参照できません。読んでくださる皆さまにはそこのところをご容赦願います(こんなはずじゃなかったのにぃ)
注2:基本的に役名で進んでいますので、時折、本来が誰だったかを確認しないとよくわからなくなることがあると思いますが、それは作者の意図ですので、申し訳ありませんが頑張ってお読みください。(ほんとは本来の名前でやってもよかったんだけど…Changeの名前を冠してしまったのでしょうがないっす <をい)

現在まで判明しているキャスティング
・名雪役---香里
・秋子さん役---天野
・あゆ役---秋子さん
・香里役---佐祐理さん
・栞役---舞
・真琴役---栞

では、どうぞ。

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ChangeきゃすてぃんぐKANON-1月11日
 

1月11日 月曜日
 

…朝の光がまぶしくて、オレはなんとなく意識が…
「…朝です。朝ご飯を食べて学校に行ってください。」
「…はい。」
柔らかい声で、オレは目が覚めた。
「…おはようございます。」
「ええ、おはようございます。」
にっこり笑う顔。
「早く起きないと、みんなもう朝食に行ってしまいましたよ。」
「そうですか…」
オレは大きく伸びをして、そして向き直ると
「…一つ、聞いていいですか?」
「はい。」
「…あなた…あゆですよね?」
「…え?」
あゆ(秋子さん)はちょっと首を傾げた。
そして…
「…ああ、そうでした。」
思い出したようにあゆが手をぽんと叩くと、
「すいません、間違えました。」
「…ですよね。」
「ええ。では…えっと…うぐぅ。」
言うと、あゆはドアに向かって、
「では、また。」
と、丁寧に頭を下げて出ていった。
…何だったんだ?
オレはあゆの出ていったドアを呆然と見ていた。
でも…おかげで今日は時限爆弾で起こされずにすんだらしい。
オレはため息をついて時計を見た。
…8時。
おいおい…
オレはあわてて起きると着替え、階下へ降りてリビングへ。
「…何で起こしてくれないんですか!」
オレが言いながら飛び込むと、
「…あら?」
「…え?」
「…ああ。」
3人の目がオレをびっくりしたように見た。
名雪(香里)と真琴(栞)は仲良く並んで食事中。秋子さん(天野)はキッチンから顔を出していた。
「…いたんだっけ。」
「…しぶといですね。」
「…忘れていました。」
…オレの存在なんて…しくしく
だいたい、オレの分の皿も出してないし…
「…学校、行きます。」
「…了承。」
…そういうのだけはちゃんとやるんだな、秋子さん…
「…行きます。」
「早く行ってください。」
ニコニコしながら言う真琴。
…何かな…
「…あ、あたしも行かないと。」
名雪が立ち上がる。
「え〜〜〜」
思い切り甘える真琴。
「行ってほしくないですぅ…」
「困った子ね…」
名雪はにっこり微笑むと、
「じゃあ、3回回って、わんと言ったら行かないであげる。」
「…はい!」
…やるんかい。本当にやるんかい?
…やってるよ、おい。
オレはうんざりしながら、玄関に行った。
…本当は、ここで名雪が犬みたいになるんじゃなかったけか…
なぜか、オレの頭にシナリオが浮かんだ。
…多分、作者が原作に戻したいんだろうな…
(そうなんですぅ…)
…バカ?
「さ、行くわよ。」
「え?」
気がつくと、名雪が隣に立っていた。
「お姉さま〜ひどいです〜」
奥から追いかけてくる真琴。
「…行くわよ。」
「…おう。」
「お姉さま〜早く帰ってきてくださいね〜」
真琴の叫びを後ろに、オレたちは家を出た。
…みっともなすぎ…

外は変わらず雪が積もっていた。
オレは息を白くしながら、凍った道を歩いていた。
「…寒い。」
「あたしのせいじゃないわよ。」
…それはそうだけど…
「間に合うかな?」
「そうね…」
名雪はちらっと時計を見た。
「…走ればね。」
「やっぱりか…」
オレはまたため息をついて、まわりを見回した。
「…なんか、走らなくてもいい近道とか、ないのか?」
「…あっても、あなたには教えないわよ。」
…なんでだよっ
オレは名雪の顔を見た。
「…冗談よ。」
「…面白くないわっ!」
「…センスがないわね。」
…それはお前だっ
しかし、寒い。さっさと学校に行ってしまいたい。
「…試しに、そのあたりの脇道に入ってみるか?」
「…無駄よ。」
「やってみてもいいだろっ!」
オレはちょっと、むきになって言った。
というのは…なんとなく、ここで脇道を探すことで、ごたごたが一つ減りそうな気がしたからで…
名雪はオレの顔を見た。
「…これ以上、あたしを巻き込まないで下さい。」
…それはお前のセリフじゃないぞ…
「…あ、でも、今ならいいかもしれないわね。」
と、急に名雪がにやりと笑った。
「…どういう意味だ?」
「…ま、やってみたら。」
ニヤニヤ笑う名雪。
…何でだろ?
オレは首を傾げたが、ともかく横道へ…
ドン
…なんか、壁のようなものが。
目には見えないのだが…曲がれない。
「…他に絵がないから行けないのか?」
「…そういう事をいう人、嫌いです。」
…それもセリフ違うぞ、名雪…
ともかく、オレはもう一度、脇道へ…
ドカッ
…今度は跳ねとばされた。
「…何でだよ。」
「…もう一回、やってみたら?」
「…何でオレに掴まってるんだ?」
なぜか名雪がオレの腰に掴まっていた。
「…気にしないで、さ、もう一度チャレンジよっ!」
「…おう。」
言われて、オレはもう一度、今度は勢いをつけて…
『…いいかげんにして。』
ボコッ!
なんか、聞いたことのある声と共に、オレは弾き飛ばされて…
「…はえ〜、びっくりしましたーっ」
…え?
オレはあたりを見回した。
「…おはよう、香里。」
「おはようございますーっ、相沢くん」
…校門だった。
香里(佐祐理さん)がオレたちの前に立って、ニコニコしながらオレたちを見ていた。
「なんか、急に目の前に現れたからびっくりしましたー」
「…え?」
「…やっぱりね。」
名雪がオレの腰から手を離すと、うなずきながら香里に向き直り
「…おはよう、香里。」
「おはようございますーっ、名雪。」
「今日はおかげで間に合ったわね。」
「はいっ」
…何が起こったんだ?
オレは名雪の顔を見た。
「…だから言ったでしょう?この作者のことだから、『力』を使えばたどり着けるのよ。」
「はえー、栞(舞)のしわざですね。」
…香里までうなずいてるし…
(…それはシリアスな舞の話なのにぃ…パロディにしないでぇ…て、オレだ)
「…やっぱり、栞の姉なんでしょう?」
オレは香里の顔を見た。
香里は首をかしげると
「あははははーっ、わたしは栞なんて知りませんよー。だって、わたしに妹なんっていないんですからーっ。あ、でも、栞、なんか、今日は不機嫌でしたーっ」
「…なんで?」
「さあ。香里は知りませんけどー。あ、でも、香里は栞なんて知りませんからーっ」
…頭、くらくらする…
オレは頭を抱えながら、教室へと向かった。

「おはようございますーっ」
教室に入るなり、思いっきり元気な声で香里が叫ぶ。
「…おはよう、美坂。」
あわてて駆け寄ってくる…北川(久瀬)。
「あ、北川くん、おはようございますーっ」
「…美坂、今日もあなたは美しい…」
「あははははーっ、北川くんは冗談がお上手ですねー」
…北川…全然相手にされてないし。
でも、かわいそうだとは思わんが。
「おう、北川。」
「…なんだ、相沢。」
いきなり、態度が変わる。
「…なあ、香里。北川が…」
「相沢くん。今朝も元気そうで何よりだね。」
…そこまで変わるかな…
仕方がない。今日もこき使ってやろう。
「…香里、ちょっと。」
オレは香里を呼ぶと、耳元で小さく
「…オレが今から何を言っても、とりあえず頷いてくれるか?」
「…どうしてですかー?」
不思議そうな顔の香里に、オレは重ねて
「いいから、頷いてくれ。な?」
「…いいですけどーっ」
にっこりと微笑む香里。
オレは振り返ると、
「…北川。」
「何だ?」
さすがに昨日の今日で、北川も身構えている。
「…香里がな、今朝、朝食を食べそこねたそうだ。」
「…え?」
「それでな、誰かにパンでも買ってきてくれないかって…」
「相沢。いくら何でも、同じ手は二度と食わんぞ。」
北川が指を立てて振ってみせる。
「…そうか。ならいいんだ…ねえ、香里。本当だったのになあ。」
「はいっ」
香里はにっこり頷いた。
「…ほんとに?」
「本当だよ。な、香里。」
「はいっ!」
ますますにっこり笑う香里。
「…この北川、美坂のためならどこまでも!行ってまいります!!」
バビュン!
一瞬のうちに北川の姿が教室から消えた。
「…かわいそうなことするわね。」
名雪がめんどくさそうに言った。
「だったら、止めれば?」
「…面白いからやめとくわ。」
…かわいそうじゃなかったのか?
まあ…北川だけど。
「…はえー」
北川が消えた出入り口を見ていた香里が、オレの方に振り返り、
「…北川くんって、足、速いですねー」
「…そうだな。」
「でも…」
と、香里は首をかしげると、
「…何をしに出ていったんでしょうかー」
…マジか?
オレは香里の顔を見た。
香里はオレの顔を見て、そしてにっこり微笑み返した。
…マジか。香里、お前って…
…北川。かわいそうな奴。

ちなみに、北川が帰ってきたのは、1時間目が始まった直後だった。
教師に大目玉をくらっている北川から取り上げたパンで、オレの飢えが癒されたのは言うまでもない。ありがとう、パシリの北川!
「あははははーっ、北川くん、なんで一回学校に来たのに、わざわざ出かけて叱られてるんでしょうねーっ」
…北川。報われない奴…

そんなこんなの1時間目が過ぎ、授業は2時間目に入っていた。
腹が膨れれば、次は眠気。
オレは眠い目をこすりながら、ふと窓の外を見た。
窓の外は雪景色。
校舎の裏の中庭にあたる場所。
一面を真新しい雪に覆われた、どこか物悲しい…
…嫌な予感がする。
『あ、でも、栞、なんか、今日は不機嫌でしたーっ』
…なんか、香里、そんなこと言ってなかったか?
オレは中庭をもう一度見た。
…そこに少女が立っていた。
手を腰にあて、ほとんど身動きひとつせず…
ガラッ
「おい、君、授業中に…」
…またかよ。
オレが顔を上げると、そこに少女が立っていた。
「…栞。」
「…来い。」
「…また変わり身の術?」
「………」
栞は無言でオレの襟を掴むと、そのまま引きずっていった。
逆らうまい…
オレは引きずられるまま、中庭まで引きずられた。
栞はオレを中庭のまん中に立たせると、自分はその前に立った。
そして…
「…さっさと始める。」
…何をだよ。
「…で、今日は何なんだよ。」
オレは栞の顔を見た。
「…何でもない。」
…じゃあ、オレをここまで引きずってくるなっ!
第一、今日は昼休みまで待ってるようにって、香里が言って…
…あれ?
『あ、でも、明日はちゃんと昼休みまで待つように言っておきますからねー。』
…香里がそう言ってたのって…土曜?
ということは…
「…お前、ひょっとして、昨日、ここで…待ってた?」
「………」
こくり
「…昨日、日曜だって知らなかったのか?」
「…知ってた。」
「じゃあ、何で…」
「…お姉ちゃんに言われたから。」
…なんか、こいつがお姉ちゃんって言うの…似あわねー…
「…ばか?」
チャキッ
…気がつくと、オレの首に剣が突きつけられていた。
「…撤回します。」
「…ならいい。」
剣はまたたく間に姿を消した。
オレは大きく息をつくと、
「…で、何を始めたらいいんだ?」
「…さあ。」
…おいおい。
オレは栞の顔を見た。
栞はぼーっとオレの顔を見ていた。
…どうしたもんか。
「あははははーっ、栞、また待てなかったんですねー」
誰なのか、振り向かなくても分かる声。
「ちゃんと昼休みまで待たないとダメじゃないですかーっ」
「…昨日は、いた。」
「昨日?」
近寄ってきた香里が、ちょっと首をかしげて
「あははははーっ、昨日は日曜じゃないですか。何で栞、日曜日にこんな所にいたんですかー」
「…いろって言った。」
「…あ」
と、香里は手をポンと叩いて
「そうでしたねー、香里が土曜日に、明日、昼までいろって言ったんですねー。あはははーっ、忘れてましたー」
…お前ら、姉妹だよ…
「でも、ちゃんと昼まで待たなきゃだめですよー。ね、栞?」
「…分かった。」
栞がこくりとうなずいた。
香里はにっこり笑うと、オレに向き直り、
「栞もこう言ってますんで、相沢くん、許してあげてくださいねー」
「…はあ。」
オレは栞の顔を見ながら
「…やっぱり、栞、香里の妹なんでしょ?」
「あははははーっ、違いますよ。」
香里はにっこり笑いながら
「香里に妹なんていないですからー。あ、でも、栞、ちゃんと薬も飲んでるし、ニンジンもピーマンも食べてるんですよーっ」
…聞いてないって。
「それに、お医者さんの言うことも聞きますし。」
「…で、何しに来たんですか?」
オレが言うと、香里がオレの背中をボンっと叩いて
「何を言ってるんですかー、相沢くんに会いに来たに決まってるじゃないですかー。」
「…そうなのか?」
オレは栞の顔を見た。
栞はこくりとうなずいた。
…うーむ、そうなのか。こいつ…オレに惚れたのか?
「あははははーっ、絶対違いますよー」
「………」
こくり
…何でだよ…
「あ、でも、栞は雪が好きなんですよー」
…だから、聞いてないって。
「この間なんか、直径20メートルもある雪玉作って、雪だるまにしようとしたんですけど、あいにくともう一つ作れなくて、ただの雪玉になっちゃってー。あはははーっ」
…どこにそれ、置いたんだ。迷惑な…
「それに雪合戦も好きで。でも、せっかく雪玉作ったのに、石を入れ忘れたんで面白くなくって、しょうがないからうちのお父様にぶつけて楽しもうと思ったんですけど、当ててみたら全然違った人で。栞ったら、おかしいんです。『全然違う人だった』なんて言って。」
「…全然違う人だった。」
…そのネタ、そうくるか。
「でも、面白かったですよ。頭にあたって、結構、血がぴゅーって出て、なんか救急車まで読んで大騒ぎだったんですよー。ねー、栞。」
「…大騒ぎだった。」
…頭、痛い。
オレが頭を抱えたところで、2時間目の終わりのチャイムがなった。
「あ、もうこんな時間ですねーっ。栞、まだ言うことありますか?」
栞は香里の顔を見た。
「…ない。」
「じゃあ、このへんで解散しましょう。栞、明日はちゃんと昼食時間まで待ってくださいねーっ」
「…分かった。」
栞は頷くと、中庭を歩いて出ていった。
「じゃあ、香里も戻りますねー」
校舎に帰ろうとする香里。
オレは香里を呼び止めた。
「なあ、香里。」
「はいっ」
「…お前、やっぱり栞の姉なんだろ?」
香里はオレの顔を見た。
そして、にっこり笑った。
「あははははーっ、香里に妹なんでいないですからーっ。あ、でも、明日は必ず、昼休みまで待つように、家でもちゃんと言い聞かせておきますからねー。ではーっ」
…そのまま、香里は出入り口に消えた。
オレはその後ろ姿を見送って…
…何だったんだ、今回のこの時間も。

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怒濤の2時間は終わり、それからの授業は退屈そのものだった。
別に変な女の殴り込みもなく…
昼休みは無事に学食でご飯を食べて…
「…あたしは焼肉定食。」
「あははははーっ、香里はイチゴパフェ定食、イチゴ抜きですー」
「…なんだ、そりゃ。」
「おれは…」
「あ、北川、場所取りご苦労様。さ、自分の分を取りに行け。」
「なぜ…」
そのまま授業を受けて…
「ぐーっ」
「寝るな、名雪!」
「…あたしじゃないわよ。」
「あはははーっ」
「…寝言で笑うなよ、香里…」
あっという間に放課後。
「…手抜きね。」
「ほっとけ…」
オレはとりあえず、鞄を持って立ち上がった。
「名雪、今日も部活だよな。」
「え…」
名雪は一瞬、嫌そうな顔をしたが、すぐに気を取り直して
「…そうね。」
「…行かないと、秋子さんにチクるぞ。」
「………」
名雪はオレをじろっと睨むと、黙って教室を出ていった。
…これで帰っても、しばらくは静かに休めるな。
オレはとりあえず、まっすぐ帰ることにした。
本当は、CDでもほしい所だったのだが…商店街は…行きたくないし。
仕方がない。夜はさっさと…
…寝れるわけないけど。横であいつらが…
いやいや。そんなこと考えないで、さっさと…
「えっと…祐一くん!…でしたね。」
ボン!
「ぐわっ!」
校門を出た所で、オレはいきなり突き飛ばされた。
「…痛いってばよ!」
オレは手をついて立ち上がると、振り返った。
そして…
「…あゆ。」
「はい。こんにちわ。」
そこにあゆ(秋子さん)が立っていた。そして、オレに丁寧に挨拶をした。
「…こんにちわ。」
「…今、突き飛ばしたのは、あゆ?」
「…突き飛ばしたわけではないんですが…」
あゆはちょっと首をかしげて
「背中にしがみつくことになっているのですが…」
「…何のために?」
「…シナリオですから。」
あゆがにっこり笑う。
「…で?」
オレは頭がくらくらしながらあゆを見た。
「…それで、ですね…」
あゆはその場にゆっくり座ると、
「…うぐぅ…祐一くんが捨てた…ですね。」
「…あの…」
「ひどいです…」
大人の女性が、道に横座りをして、捨てただのひどいだの…
…気がつくと、学校帰りの生徒たちが周りに集まって、不思議そうにオレたちを見ていた。…やばい。また警察が…
「…と、ともかく、この場を離れましょう!」
「はい。えっと…うぐぅ」
…それはもういいっての。
オレはあゆの腕を取ると、その場を急いで逃げ出した。
「…では、商店街へ行きましょう。」
「とりあえず、どこへでも行きます!」
あゆの言うままに、オレは商店街へと…
…商店街?
オレは角を曲がったところで、立ち止まった。
「…それは、嫌です。」
「…どうしてですか?」
あゆが立ち止まってオレを見る。
「…人が多いじゃないですか。」
「…人が多いと困るようなことをする気なんですか?」
まじまじをあゆがオレを見た。
「違いますっ!」
「…だったら、構いませんね?」
あゆがにっこりと笑った。
…うっ…
この笑顔なのに感じるすごいプレッシャー…
「…行きます。」
「はい。」
オレはあゆの後をついて、商店街に向かった。

商店街は、いつものように適当な人ごみだった。
…はずだが、人がいたためし、ない気がするぞ…
「それは絵の都合ですから、気にしないでくださいね。」
あゆがオレを見て言った。
「…はい。」
にっこり笑うあゆ。
「…で、商店街に何の用なんでしょうか?」
「はい…えっと…」
あゆは後ろを向くと、何やら読んでいるようだったが、
「…祐一くん、うぐぅって言っていただけますか?」
「…は?」
「…ですから、うぐぅと言ってください。」
「…はい?」
「…言ってくださいね。」
あゆがオレの顔を見た。
…プレッシャー…
「…えっと…うぐぅ。」
「もう一度、です。」
「…うぐぅ」
「もう一度。」
「…うぐぅ」
「…恥ずかしいですね。」
「あんたが言えって言ったんでしょうがっ!」
「…うぐぅ。祐一くん、意地悪ですね…」
「…うぐぅ。」
「………」
…他人のふりをするな…
「…帰ります。」
「あ、えっと…」
あゆはちょっと首をかしげて、
「次は、探し物です。」
「…だれの?」
「わたしのです。」
「…頑張ってください。」
オレはとりあえず、立ち去ろうとした。
「…あら。」
後ろであゆの声がして、
「…えっと…どうしましょうか…」
オレは無視して歩いて…
「しょうがありませんね。とりあえず、警察に…」
ピッピッピッ
「…あゆ!」
オレは振り返ると、あわててあゆから携帯を取り上げた。
「…それはやめてください!」
「…ああ、帰ってきましたね。」
あゆはにっこり微笑んだ。
…逃げられないわけね…
「…付き合います。」
「あら、悪いですね。」
…悪いのはあんただっ!
オレは心で泣きながら、あゆに微笑んでみせた。
「…で、何を探してるんですか?」
「…さあ。」
…おいおい。
「でも、大切な物らしいんですが。」
「…あゆは知らないんですか?」
「…はあ。」
「…どんなものかも…」
「…全く。」
「どのへんでなくしたとか…」
「…全然。」
「いつごろとか…」
「ずっと前らしいんですけど…」
そんなもん、見つかるかぁ!
…って言えたらいいけどな…
「…で、探していると。」
「はい。」
「…で、どうしたらいいでしょうか?」
「そうですね…」
あゆはちょっと首をかしげると、
「ともかく、商店街を歩いてみましょう。買いたいものもありますし…」
「…はい?」
「まずは…お米を一俵ですね。」
「ちょ、ちょっと待ってください。」
オレはあわててあゆの腕を掴んで
「それ…探し物じゃなくて、本当は買い物の荷物運びじゃないんですか?」
「いいえ。」
あゆはにっこり微笑んでオレを見た。
「探し物です。あくまでも。」
「…そうですか?」
「はい。」
あゆは微笑んだまま、商店街を歩きだした。
「それから、卵を一グロスと…たい焼きを20個…ケ○タッキーファミリーパック3つ…」
「…帰ります。」
「そうですか…」
そういったあゆの手には、携帯がしっかり握られていた。
…何個持ってるんだ…
「…行きます。」
「…では、探しに行きましょう。まずは米屋さんに…」
…はぅ…

…そして、死にそうになって運んだその荷物が、実は真琴(栞)の頼みであったことが判明したのは、オレがつぶれそうになって家にたどり着いてからだった。
「…あ、ありがとうございます、あゆさん」
「いいえ、いいんですよ。真琴さんの頼みですから。」
「はいっ!これでお姉さまに、おいしい料理がご馳走できますぅ!うふふ」
…ああ、そうかい。勝手にしてくれい…
オレはぐったりしながら、とりあえず、一番上にあった肉まんに手を伸ばし、すっかり冷たくなっているそれを口に入れて…
「…肉まんなんて真琴、頼んでませんけど。」
「ああ、あれは、中華食材の店の方が、捨ててくれって言われまして。何か、1ヶ月以上前のものだそうです。」
「ぶはっ!」
「…何してるんですか。汚いですぅ…」
「…祐一くん、行儀が悪いですね。」
…死んでやる…

オレがトイレから出られたのは、もう夜になってからだった。
「長いトイレね。」
オレがリビングに入ると、名雪がオレをちらっと見て言った。
「もう、夕食終わったわよ。」
「…オレの分は…」
「そんなもの、あるわけないでしょ。」
…また今日も夕食食べられなかった…
がっくりきたオレに、名雪がフッと笑うと、
「元気そうだから、仕事をあげるわ。」
「…は?」
オレは名雪の顔を見た。
「学校のあたしの机から、ノート持ってきて。大切なことが書いてあるから。」
「…なるほど。風呂入って湯冷めしないうちに寝ろと言うんだな。」
名雪はオレの顔を見た。
まじまじと見た。
「…祐一。」
「…なんだよ。」
「…人間が溺死するのにはね、たくさんの水は要らないのよ。洗面器一杯の水でいいの。お風呂いっぱいの水…溺死には十分よね…」
「…行かせていただきます!」
オレはすぐに立ち上がり、リビングを出ながら
「…でも、なんなんだ、ノートに書いてある大切なことって。」
「…ふっ」
名雪は微笑むと、
「…学園征服の計画よ。」
…そんなもんのためにオレはこの夜に、学校まで行くんかい…
ますます行く気がなくなったが…
…命には代えられない。オレはコートを着こむと、家の外に出た。

外に出ると、強烈に冷たい風が吹きいていた。。
俺は鼻の下までコートで覆い、駆け足で学校へと急いだ。
校門を乗り越え、学校の敷地内へと入る。
だだっ広い前庭には常夜灯だけが灯り、その向こうで巨大な校舎が虚ろな影となっていた。
その影に向かって、歩いてゆく。
昇降口に辿り着くと、とりあえず、こういう時の常、職員用の扉らしきものをすぐに見つけて押してみた。
きぃ…
眠りから起こされたような軋みをあげて、それが開いた。
ふっ
昔取った杵柄だな。
…何なんだ、オレの昔って…
オレは一瞬、悩みながら、学校に入っていった。
そして、自分の教室まで辿り着くと、そのドアに手をかける。
どこまでずさんな管理なのだろう。
これじゃあ、盗んでくださいってもんだ。
へっへっへ。
んじゃあ、お邪魔しますよっと…
…って、だから、オレの昔って…
ともかく、入り口が開き、早朝一番で乗り込んだときのような、誰もいない教室が目の前に現れた。
静まり返った教室。そして冷え切った空気が俺を迎えてくれる。
その教室を横切り、自分の机まで辿り着く。
なぜだかほっとする。ようやく、現実との接点を見つけたような感覚だ。あまりに、夜の校舎は異質だった。
目的のノートは容易く見つかった。
それを抱えると、足早にきた道を辿って、教室の出口へと向かう。
たん、と俺の足が廊下のリノリウムを叩いた。
「………」
なんか、違う世界に足、踏み込んじゃったかな…
ついさっき、通った時にはこんなもん、なかったはずだがな…
まあ、幻想的という言い方も出来ないでもないけど…
…そこに、白いシーツのようなものをかぶった、何かが立っていた。
ただ白いものがあったらちょっとはびっくりしたんだが…足が出てるんだよな。それも震えてるし…
「…お前、何なんだよ。そこで何してるんだ?」
オレが言うと、そのシーツの中から、小さな声がした。
「…あ、あたしは、魔物を狩る者なのよっ!」
「…ふ〜ん、頑張ってね。」
オレは立ち去ろうとした。
「あ、待ってよぅ!」
あわてて、そいつが追ってきた。
白い布が滑って、中から少女が現れる。
「置いてかないでよぅ!」
「…何やってるんだ、真琴。」
「真琴じゃないわよ。ここでは、舞なの!」
…そういうキャストかい…もうほとんど読まれてたぞ…
「…名雪の方がいいっていう人もいたんだが…」
「…何の話よぅ!」
「…いや、こっちの話。」
とりあえず、オレは立ち止まると、
「…その布、どっから持ってきたんだ。」
「え…その辺の教室。」
…よく見ると、それはカーテンだった。
「家庭科室あたりから持ってきたんだろ。返しておけよ。」
「…え〜…一緒に来て。」
「…お前が持ってきたんだろ。知るかよ。」
「あぅー…だって。」
…恐いらしい。なんか…中途半端な度胸な奴。
「恐いんならそんなところにいるなっ!」
「だって、そういう役なんだもん!しょうがないでしょ!だいたい、こんなとこに一人出立ってるなんて、絶対、変よ!おかしいわよっ!」
…だから、お前が立ってたんだって。
「だいたい、魔物って何なのよっ!おかしいんじゃないのっ!」
…だから、お前が言ったんだって。
「だいたいねえ、おかしいと思わない?魔物を狩るって言いながら、あたしなんか剣も持ってないのっ!絶対、変よっ!」
…だから、お前なんだってば。剣…借りられなかったのか。
「その代わりに、これ、借りてきたんだけど…」
言いながら、舞(真琴)は後ろを向くと、何かを持ってかざした。
…ピンクの…傘?
「…舞。それ、ゲームが違う。」
「え?そうなの?」
舞は驚いたようにオレを見た。
「でも、無口でとっても強情そうな人だったよ。」
…でも、違うんだってば。そっちへ進むとヴェーテルさんのネタだから、これ以上突っ込まないぞ。
「…とりあえず、オレは帰る…」
…ガキッ
どこかで音がした。
「…なに、今の。」
舞がオレにしがみついた。
「…魔物じゃないのか?」
「…ほんとにそんなのいるの?やだなぁ…」
…おいおい。
「…舞、何とかしろよ。お前、魔物を狩る者だろうがっ!」
「そんなの知らないぃ…」
「…おい。お前がさっき…」
ガキィッ
すぐ近くで音。
一瞬、目の前の空間が歪む感じ。
「…あぅー、舞、帰るもん!」
「おい、こらっ!」
オレは舞の首筋を掴むと
「逃げるなっ!きちんと狩れっ!」
「やだっ!」
バキッ!
…ものすごく近くで音がした。
当たり前だ。オレの頭でしたんだから。
「…あ、ご、ごめん〜」
薄れていく意識の中で
舞がピンクの傘を握り締め
その傘がオレの頭にヒットしているのを
感じたけれど
オレは…気を失った。

どうでもいいけど、みんなやる気なさ過ぎ…

<to be continued>

-----
…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…なんか…原作に戻そうとしたのに…
「まあ、今さらですね。」
…はぅ…いいっす。原作通り、そしてヴェーテルさんのMiscasing Kanon通り、このまま1月12日に行って、どとーのエンドだっ!
「…終わるんですか?」
…ふっ(にやり)ヴェーテルさんのエンドとも違う、LOTH流の最終回を…見てな。ふっふっふっ
「そこまで言って…面白くないと、大変ですよ」
…はぅ…言わないでぇ…

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