Hello World! (にんぎょひめの娘たち-1)


真琴系SS

実感ほのコメと呼んでください(苦笑)

シリーズ:にんぎょひめの娘たち

------
前置き

この物語はフィクションです。
Kanonの登場人物以外の名前、および物語内の出来事に関して
現実の何かに似ていると思われる事物があったとしても
それは偶然の一致です。
ええ、そうですともっ(涙)

-----

Hello World! (にんぎょひめの娘たち-1)
 

「ただいまぁ〜〜〜」
どたどたどた
駆け込んでくる足音。
「こらっ、真美(まなみ)!」
オレは振り返ると、廊下に向かって叫んだ。
「手、洗えよ!」
「うんっ」
元気な返事。
…いつも、返事だけはいいんだけどな…
オレはため息をつくと、ソファから立ち上がって廊下を覗いた。
…やっぱりな。
真美は手先をちょこちょこっと濡らすと、意気揚々と…
「…真美。」
「…あっ」
目が合うと、真美はいつものように愛想笑いを浮かべて
「…えへへ」
「えへへ、じゃない!ちゃんと洗えっ!」
「…あぅー」
真美は口をとがらすと、しぶしぶとまた洗面所へ。
今度は、真面目に洗っている。
「…まったく…」
オレはため息をつくと、ソファに戻りながら
「誰に似たんだよ、ああいういい加減なところ…」
「…祐一に決まってるじゃないのよぅ!」
「…なんだと?」
声に、オレは顔を上げた。
そこに真琴が立っていた。
大きなお腹が重そうに、でもにやにやしながらオレを見ていた。
そして、その手には…肉まんが。
「…真琴。」
「何よぅ!」
「…お前、食ってばっかいないか?」
「…え?」
真琴はオレと、手の肉まんを交互に見て
「…でも、すぐにお腹、膨れるんだけど…すぐに空くんだもん…」
「…だからって…」
「お腹、赤ちゃんが押してる感じでさぁ…胃がね…」
「…お前、実は単に太っただけじゃないのか?」
「あぅー…祐一、酷い…」
真琴は口をとがらすと、上目遣いでオレを見た。
…この顔は、初めてあった頃と全然変わらないな…
オレはちょっと苦笑した。
「…その顔、真美、真似してるぞ。」
「…う、うん…」
「…ていうか、あいつ、お前そっくりだよな。」
「…そうだよね。」
真琴は頷きながら、ソファに座って肉まんをかじった。
「女の子って、どのみち、母親に似るって言うけど…」
「…そうなの?」
「らしいぞ。でも、あいつの場合、最初から…」
「パパ〜〜〜〜。手、洗ったよ〜〜〜〜」
どたどたどた
駆け込んでくる足音。
そして…
「あ、ママっ」
部屋に駆け込むやいなや、真琴の姿を見つけて、真美は満面の笑みで…
「ストップ!」
オレは真琴に飛びつこうとする真美を抱き留めた。
「…あぅー」
不満そうにオレを見る真美に、オレは恐い顔を作って
「あぅー、じゃない!言ってるだろうが!ママに抱きついちゃダメだって。ママは…」
「赤ちゃん、いるから。でしょう?」
「…分かってるなら、するなって。」
「…はぁ〜い」
分かっているのか分かってないのか、いつもの曖昧な返事。
「…真美!」
オレは手をあげると、真美の頭をこつんと…
「…祐一っ!」
と、真琴がオレの手を止めた。
「…なんだよ。」
「ダメっ!頭、叩いちゃ。」
「しかし…」
「ダメなんだからっ!」
真琴はオレをじっと見た。
真剣な顔だった。
…まあ、確かに、それはそうなんだが…たまには、ガツンと…
「…ダメっ」
「…分かったよ。」
オレがしぶしぶ言うと、真琴はオレの手を離した。
「…もうするなよ。」
オレは真美に言うと、真美を押さえていた左手を離した。
「…えへへ。」
真美はオレの顔を見ると、ニコニコしながら真琴の隣りにちょこんと座る。
…なんか、いつもこうなんだよな…
女の子って、普通、お父さんが大好きなもんだって聞いたのに…なぜか真美は真琴にべったり…
「…はあ。」
オレがため息をつくと、真琴はニコニコしながら
「…じゃ、コーヒー、入れようか?」
「…頼むわ。」
「うん!」
真琴は頷くと、ソファから立ち上がって…
「…祐一。」
「…ん?」
何やらおかしな感じの声に、オレは顔を上げた。
真琴が、オレを見ていた。
お腹を押さえて…
「…まさか?」
「…そうみたい。」
………
…うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一瞬、頭の中、真っ白。
「…ど、ど、ど…」
「落ちついてよ、祐一!」
「で、で、で」
「…まだ、大丈夫と思うけど…」
「な、な、な」
「…祐一?」
………
…どうすればいいんだ〜〜〜〜〜〜
「お、オレは、どうしたら…」
「祐一、落ちついてってば。」
真琴は二人めということもあってか、妙に落ちついている。
で、でも、オレは…真美の時は出張中で、帰ってきたら生まれてたんだぞ?
と、とりあえず…病院だっ!
「ま、真美!」
「なあに、パパ?」
何事か分かってない真美は、面白そうにオレを見上げる。
…お前ももうすぐ5才だろうがっ!赤ちゃんが産まれることぐらい、分からんのかっ!
「で、電話、持ってこい!」
「…うん。」
真美は頷くと、すぐに部屋の隅に行って、
「はい、パパ。」
「お、おう。」
オレは電話を受けとると、とりあえず…
「…119番でいいのか?」
「…救急車はいらないぃ…」
「…そ、そうか。」
じゃ、じゃあ、病院の電話番号…
…そんなの、知るかっ!
「ま、真琴…」
オレが真琴を見ると、真琴は自分で電話をとって、もうどこかに…
…あれ?じゃあ、オレが持ってるのは…
「…真美っ!」
「…えへへ。」
オレが持っていたのは…真美のおもちゃの携帯電話じゃないかっ
「こ、こんな時に、遊ぶんじゃないっ!」
「…祐一、うるさいから少し黙っててよっ。」
「…は、はい…」
見ていると、真琴はお腹を押さえながら、電話に頷いている。
「…分かりました。」
電話を切った真琴。
オレは真琴の顔を見て
「な、何だって?」
「…一応、秋子さんに電話したの。」
「…へ?」
「ほら、あたしが入院してる間、秋子さんに真美、頼まなきゃいけないから…」
「…そ、そうか…」
…気づかなかった…そういえば、そうだ…
「で、びょ、病院へは…」
「まあ、車で…」
「お、おう!今、出してくるから…」
「あ、祐一…」
オレは部屋を飛び出すと、車庫へと車を出しにいった。
そして、とりあえず家の前に。
そういえば、何か、毛布をひくって聞いたような…破水したら大変だから、とか聞いた…誰からだっけ?うんと…
…って、そんなのどうでもいいっ!
オレは家に飛び込むと、毛布を取りに寝室へ。
そして毛布を掴むと、リビングに駆け込んで
「い、行くぞ!」
「…え?」
ソファーに寝転んでいた真琴がオレを見上げた。
「祐一…」
「さ、早く!」
「で、でも…」
「生まれたらどうするっ!早く、車に乗れっ!」
「…あぅー」
真琴はゆっくり立ち上がると、お腹を押さえながら廊下へ。
オレも真琴を追いかけて…
って、忘れるところだった!
「真美!」
「…うん!」
「お前も、行くぞ!」
「どこいくの?」
真美はオレを見上げていた。
お出かけのつもりか、うれしそうに…
「いいから、来い!」
オレは真美を右手で抱えると、そのまま廊下を走った。
そして、真琴の腕を取ると、抱えるように後部座席へ。
「も、毛布、あるから」
いいながら、オレは右手の毛布を真琴に…
…って、それは真美だっ!
危ういところで腕を止めて、毛布を真琴に渡すと、真美を助手席に押し込んで、オレは運転席に乗り込んだ。
そして…
「行くぞっ!」
「…うん…」
「パパ、どこ行くの?」
「どこでもいいっ!」
サイドブレーキを外し、車をスタートっ!
「ゆ、祐一、危ない!」
「大丈夫だっ!」
「すごいすごい〜〜〜」
赤信号も何のその
一方通行気にせずに
オレは病院へと全速力でっ!
「ゆ、祐一〜」
「パパ、すごいすごい〜〜〜ジェットコースターみたい!」
「任せとけっ!」
…多分、世界新記録で、オレは病院の入り口へ。
どんなもんだっ!
…まあ、後ろにパトカーが数台、ついてきてるけど…
「ともかく、真琴、受付に行くぞっ!」
「で、でもね、祐一…」
「いいからっ!」
オレは真琴を抱えるように、病院の受付へ向かう。
そして、受け付けに並ぶ爺さん、婆さんたちをかき分けて、看護婦に
「か、看護婦さん!」
「…はい?」
見上げた看護婦に、オレは真琴を見せながら
「う、生まれそうなんです!」
「…え?」
看護婦はオレを見た。
そして…
くすくす笑った。
「…ここは薬局です。受け付けは、向かいです。」
「…へ?」
オレは振り返った。
…そこに看護婦さんが、ニコニコしながら出てくるのが見えた。
…まあいいっ!このくらいの恥は…子供のためならっ!
オレはやってきた看護婦に、真琴を引き渡して
「う、生まれそうなんです!」
「あらあら。」
ちょっと年配の看護婦は、真琴の顔を見た。
「…陣痛は?」
「…まだ、弱くって…間隔も、長いんです。」
「…じゃあ、まだだわね。」
…へ?まだって…
…え?
オレは思わず、ひざまずいた。
ぽん!
その時、肩を叩かれて、オレは振り返った…
「…免許証、見せて。」
警官が、オレを見ていた。
それも、4人も。
…はぅ…
 

翌日
6月18日の朝、9時13分。
重さ:3115g
性別:女
相沢祐一、真琴の第二子が誕生した。

オレは…待ち疲れて、真美と一緒に病院の簡易ベッドで眠っていた…

<to be continued>

-----
…筆者です。
「仕切り屋・美汐です」
…この物語は…フィクションだっ!
「…誰も何も言ってませんが。」
…はぅ…まあ、その…この掲示板広しと言えど、こんな話を書けるのは、多分、ここではオレだけだと思うぞ(苦笑)
「…で?」
…でも…フィクションですっ!
「………」
…ホントだよ…
「………」
…えっと…設定ですけど…ここに出てくる祐一と真琴は、オレが初めて完結させたシリーズ『風の音・鈴の音』の二人なんだよね…詳しくは、オレのページをご覧くださいっ!
「でも、この話には関係ないのですね?」
…そう…って、せっかく宣伝しようと思ったのにぃ(涙)
「…まあ、好きにしてください。ごく一部、苦笑してますよ。」
…まあ…ねえ…何で実感ほのコメなのか、とか(苦笑)でも、続けます。ネタ、いっぱいあるから(爆)また明日っ!
「明日は『夢・夢』では?」
…それも書くって。

<Back< 戻る >Next>

inserted by FC2 system