What's your name? (にんぎょひめの娘たち-2)


真琴系SS

実感ほのコメと呼んでください(苦笑)

シリーズ:にんぎょひめの娘たち

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前置き

この物語はフィクションです。
Kanonの登場人物以外の名前、および物語内の出来事に関して
現実の何かに似ていると思われる事物があったとしても
それは偶然の一致です。
ええ、そうですともっ(涙)

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What's your name? (にんぎょひめの娘たち-2)
 

「…どうしよう…」
オレは漢字辞典片手に、テーブルに前で座っていた。
懐かしい、水瀬家のテーブル。
一時、真美を預かってもらっている水瀬家に、オレはおじゃましていた。
そして…
「そうだね…」
オレの横で、紙を持って頷く名雪。
紙には名前がいくつか書いてある。
つまり…
「…まあ、画数が問題だよね。」
「…それよりも、響きでしょう。」
名雪の言葉に、正面の秋子さんがニコニコしながらツッコミを入れた。
「え〜」
名雪は顔を上げると、秋子さんを見て
「でも、運勢って大切だよ?」
「でも、女の子は結婚すると名字が変わりますから。」
「…わたしは変わらなかったよ。」
そう、名雪は婿養子を迎えたから、今でも水瀬名雪なのだ。
旦那の元の名字は…確か…何だっけ?
…って、そんなの今はどうでもいいか…
「ですけど…」
「わたしはこの、早枝ちゃんなんかいいと思うよ。」
「…それだったら、早霧ちゃんの方が6月らしいでしょう?」
「別に、月は関係ないと思うよ。」
「でも、やっぱり季節感が…」
「でも…」
…オレの子供なんですけど…
二つとも、オレの案にはないんだけど…
「いや、その…」
オレは口を挟もうとした。
「じゃあ、間をとって、早苗ちゃん。」
「…それだったら、苗里なんかもいいですね。」
…だから、オレはそんなの言ってないです…
「じゃあ…恵理なんかどうかな?」
「そうですね…」
「あ、だめだめ。」
と、廊下から声と共に、香里が顔を出した。
「あ、香里…」
「祐一と真美ちゃん、来てるでしょ?」
「あ、北川のおばちゃん!」
つまらなそうに椅子に座っていた真美が、うれしそうに香里に駆け寄る。
「…おばちゃん?」
ピクッと香里のまゆが動いて
「真美ちゃん…」
「なあに、北川のおばちゃん!」
「………」
香里は真美の顔を見た。
真美は香里を見上げて、ニッコリ微笑んだ。
「…香里も、真美ちゃんには形無しだな。」
香里の後ろから、にやにやしながら北川が顔を出した。
「…はあ。」
香里はため息をつくと、真美を連れて寄ってきた。
「…何だよ、お前ら…」
「いや、真琴さんのお見舞いに行ったら、何か、まだ出生届、出してないって聞いてな…」
「見物に来たわけよ。」
…オレは見世物かい!
「でも、恵理はダメよ。あたしの知り合いで、嫌〜な奴がいて。そいつの名前が、恵理だったのよ。」
…じゃあ、香里だってつけないぞ。
「あ、そういえば、あたしの小学校の友達で、美由紀っていう嫌な子、いたよね…」
…名雪だってつけないぞ。
「あ、オレの大学の知り合いで、香奈っていう子がいて、これが可愛くて…」
「…なんですって?」
香里が北川の顔を見た。
北川は、目を背けると頭を掻いた。
「…でも、性格、悪かったんだよ…」
「…そうでしょうね…ねえ?」
「…おう。」
…夫婦げんかは他でやれっつ!
「わたしの知り合いの子供さんで、佐奈っていうかわいらしい子供がいますよ。」
秋子さんがニコニコしながら
「真琴ちゃんも保育所でお世話してましたけどね。」
…保育所の子供と同じ名前はまずいでしょう、秋子さん…
「じゃあ…美恵ちゃんは?」
「相沢美恵…何か、パッとしないわね。」
「奈緒…相沢奈緒…まあまあかな。」
「…今ひとつだよね…」
「相沢愛…」
「…いいかも」
…お前の子供につけろ!
香里に名雪に北川…自分らにまだ子供がいないと思って、遊んでやがる…
「…相沢ミミ…では、何だか芸能人みたいですね。」
「…え?」
オレは声の主を見た。
…秋子さん、あなたまで遊んでるんですか…はぅ
オレはがっくりとして下を見た。
…真美がつまらなそうにオレの足に繋がって、オレを見上げていた。
オレは真美の頭をなでると、聞いてみた。
「真美、お前はどんな名前がいいと思う?」
「…誰の?」
「赤ちゃんのに決まってるだろ?」
「…赤ちゃん…」
真美は首をかしげて、何かを思い出すような顔になると、
「…猿みたい顔だったよね!」
「…おい。」
思わず、オレは真美の頭をぐりぐりと…
「…ぷっ」
「…ぷぷっ」
…オレは顔を上げた。
名雪と香里が…
…お前ら、なに笑いをこらえてるんだよ…
「…お前ら、今日、赤ちゃんの顔を見たんだろ?」
オレは北川と香里の顔を見た。
二人はにやにやしていた顔を、ふと真顔に戻して
「…おう。」
「ええ。」
「………」
「…えっと…」
「…その…」
「………」
「…ホントに、色が白いわよね〜」
「…しっかりした目鼻立ちだったよな。」
…お前ら…それ、誉めるとこがないときの常套句だろうが…
第一、女の子だっ!しっかりした顔で何がいいんだっ!
「…お前ら、他に…」
「猿〜〜〜〜〜さ〜〜〜る〜〜〜〜」
と、そのフレーズが気に入ったらしく、真美がいきなり叫びながら、リビングを駆け回る。
「さ〜〜〜る〜〜〜」
「…相沢さる」
「…ぷぷっ」
「…あははは」
「…ふふっ」
「………」
北川だけは、かろうじて笑いをこらえていた…
…お前ら…秋子さんまで…
ガタッ
オレは黙って立ち上がると、テーブルの上の母子手帳を掴んだ。
「…どうしたの?」
「…どこ行くんだ?」
「…?」
4人が椅子に座って、オレを見ていた。
オレは…
「…出生届、出してくる!」
「え?」
「…名前は?」
「そうだよ…」
「どれにしたの?」
見上げている4人の顔。
オレは…
「…オレが決めるっ!」
オレは一言、言い放つと、真美を抱えて廊下へと出た。
「…え?」
「祐一…」
「相沢くん…」
「祐一さん…」
そして、そのままオレは廊下から玄関へ。
「…さる〜〜〜〜さる〜〜〜」
…まだ、真美は気に入ったらしいフレーズを口ずさんでいた…
 

産婦人科病棟にて。
「さる〜〜〜〜さる〜〜〜〜」
「さるは嫌ぁ…」
「誰がそんな名前付けるかっ!」
「さる〜〜〜〜さる〜〜〜〜」
「静かにしろっ!真美っ!」
「…じゃあ、さり、だったらいいぃ…」
「…そうする。」
 

6月20日
出生届受理。
名前:相沢 紗梨
 

…結局、3秒で決まった…
 

「さる〜〜〜さる〜〜〜」
「猿じゃないっ!」

< to be continued>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…えっと…名前、別にSARRYさんがコメントくれたからじゃありません。実は深い理由が(苦笑)
「…実話?」
…だから、フィクションだってばっ!
「………」
…ほとんどは…
「………」
…多くは語るまい…全ては…では、明日っ!
「…逃げましたね。」

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