Sick in Bed? (にんぎょひめの娘たち-5)


真琴系SS

実感ほのコメと呼んでください(苦笑)

シリーズ:にんぎょひめの娘たち

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前置き

この物語はフィクションです。
Kanonの登場人物以外の名前、および物語内の出来事に関して
現実の何かに似ていると思われる事物があったとしても
それは偶然の一致です。
ええ、そうですともっ(涙)

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Sick in Bed? (にんぎょひめの娘たち-5)
 

「パパ〜〜〜遊ぼ〜〜〜〜」
どかん
「…ぐえ…」
オレはふとんから顔を出すと、真美の顔をにらんだ。
「…真美。」
「なあにっ?」
「…パパ、風邪で寝てるんだぞ…」
「え〜〜〜〜」
思いっきり、嫌そうな顔の真美。
「…はあ。」
「…うん?」
オレはため息をつきながら、真美の顔を見ていた。
昨日から少し熱が出て、せっかくの休日だというのにとりあえず寝ていたのだが…
…こいつのおかげで寝てられやしない。
「お〜い、真琴〜〜」
オレはとりあえず、真琴を呼んだ。
しばらくして、真琴が部屋に顔を出した。
「…なあに、祐一。」
「真琴…真美、あっちに連れてってくれよ。」
オレが言うと、真琴はちょっと困った顔になった。
「え…ちょっと…」
「…ん?」
「…紗梨がね…」
「…紗梨がどうかしたのか?」
オレが見つめると、真琴は腕に抱いていた紗梨をオレのほうに見せた。
今度はちょっとオレ似の、凛々しい(苦笑)紗梨の顔…
…何か、発疹が…
「…あせもか?」
「違うのよぅ…多分。」
「多分?」
「うん…」
「…じゃあ、何かの病気?」
「多分、発疹だって、秋子さんが…」
「あ、そう…」
とりあえず、わが家では子供に何かあると、とりあえず秋子さんに相談することにしている。まあ、真琴の母親代わりだし…
「ならいいけどさ…」
「…祐一、冷たいぃ…」
真琴がちょっと恨めしそうにオレをにらんだ。
オレはちょっとふらつく頭を上げて、ふとんに起き上がった。
「…なにが?」
「だって、そうじゃないよぅ…」
真琴はちょっとふくれながら、部屋に入って座ると
「真美の時はさ、ちょっと熱が出たっていったら病院に走ったしさぁ…」
「そりゃ、あれは…初めてだったしな。お前ももうちょっとおろおろしてたじゃないか。」
「え?…うん…」
「まあ…二人目だと、何かとオレたちも馴れてきてるからな…」
「…うん…」
真琴はちょっとすまなそうに紗梨の顔を見た。
…まあ、ちょっとオレたちって、こいつに冷たいかもな…
こういうのって、あとあと子供が傷つくって、誰か言ってたな…北川だっけ?
…あいつ、本気で次男だっけ?うーん…
…って、今はあいつのことを考えている場合じゃないか。
「…じゃあ、ともかく、病院行くか。」
「え?出掛けるの?わ〜〜〜〜い。」
横でつまらなそうに座っていた真美が、うれしそうに叫んだ。
…頭痛い…
「…遊びじゃないぞ。病院に行くだけだ。」
「え〜〜」
「…ついでにお前、注射打ってもらうか?」
「絶対に、ヤッ!」
真美はぶんぶんと首を横に振った。
…何度か痛い予防接種を打たれたせいで、真美はすごく注射嫌いなのだ。
「…じゃ、留守番するか?」
「…え…それもやだ…」
「…でも、病院行ったら、注射されるぞ?」
「…あぅーーーーー」
真美は本気で恨めしそうに、オレの顔を見あげて…
パコッ
「祐一!真美、いじめないでよっ!」
「…そうだそうだぁ!」
真琴が加勢してくれたので、急に元気になる真美。
…お前ら、本気で一卵性親子か?
「…頭、痛い。」
「祐一、おおげさ…」
「そうだそうだぁ!」
…いや、頭痛いのはホントだって。多分、風邪で、だけど…
「…いいよ。」
オレはため息をつくと、真琴の顔を見ながら立ち上がった。
「とりあえず、病院、行ってみよう。」
「…うん。」
真琴は真顔に戻ると、オレを見上げた。
「ともかく、皮膚科に行って、見てもらおう。」
「…そうだね。」
真琴はにっこり笑うと、紗梨を抱いて立ち上がった。
「よし、行こ〜〜〜〜」
真美がニコニコしながら、オレたちに次いで立ち上がった。
…お前、ちょっと病気になって静かにしろ…
オレは思いながら、真美を見下ろした…
と、ちょっとふらついた。
…うーむ、思ったより熱、ありそう…ついでに見てもらってくるか…

病院はいつものように患者でいっぱいで、紗梨が見てもらえたのは病院についてから30分後だった。
オレは待合室の熱気でちょっと当てられて、ますます頭が痛くなっていた。
「相沢さん〜相沢紗梨さん〜」
「あ、は〜い。」
紗梨の名前が呼ばれたので、真琴が紗梨を抱えて立ち上がった。
「真美も行く!」
「こらこら」
オレは一緒に行こうとする真美を、あわてて抱き留めた。
「お前は行かなくていいの。」
「え〜〜〜、真美も行きたい…」
指をくわえて言う真美。
オレは真美の顔を、わざと恐い顔で見た。
「じゃあ、お前も注射、されてくるか?」
「…え?」
またも効果覿面。真美はオレの顔をおとなしく見上げた。
「…真美も?」
「…おう。」
「…注射?」
「…もちろん。」
「…あぅーー」
真美はちょっと泣きそうな顔で、床を見た。
そして…
「…じゃあ、真美、行かない。」
「それでいい。」
オレは頷いた。
真美は神妙な顔のまま、オレの顔を見あげた。
「…じゃあ、ご本、持ってくるね…」
「おう。読んでやるから。」
「うん。」
真美は暖房でちょっと赤らんだ顔で頷くと、待合室の子供用の絵本を取りに、本棚へ。
オレはそばの椅子に、取り合えず腰をおろした。
しかし…待合室って暑い。何か、ぐったりする…風邪で頭も痛いしなぁ…
ため息をつきながら、オレは座って真美を見た。
真美は…あ〜あ、あのバカ。看護婦さんにぶつかってるし。落ち着きのないところ、真琴そっくりだよな…
…ん?看護婦さんと真美、こっちに…
「すいませんが、この子のお父さんですか?」
真美を連れてきた看護婦が、オレを見ていった。
「うん。パパだよっ!」
うれしそうに言う真美。
…お前に聞いてないって…突っ込む気力も今はないなぁ…
「…はい。そうですが…何か?」
オレは看護婦の顔を見た。
看護婦は真美を心配そうに見ながら、オレに向かって
「…この子、なんですけど…」
「あたし、真美だよっ!」
ニコニコしながら言う真美。
「…真美ちゃんですけど…」
「…はあ。」
「…具合、悪くないですか?」
「…え?」
オレは看護婦さんの顔を見つめた。
具合が悪いのは、紗梨であって…真美じゃないぞ。
「…今日は、もう一人の子を見せに来たんですけど…真美は、元気ですよ。見てのとおり。」
「いえ…」
もう一度、看護婦は真美の顔を見て、言った。
「…この子、診てもらった方がいいですよ。わたしも小児科なんですが。」
「…は?」
「この子…熱がありますから。」
「…はあ?」
オレは真美の顔を見た。
真美はオレの顔を見て、ニッコリと愛想笑いを浮かべた。
「…いや、そんなこと…」
「いえ、あります。それに、頬が赤いですし…」
「…それは、ここが暑いから…」
「ここはそんなに暑くないですよ?」
看護婦さんはオレの顔をじっと見た。
そして、オレの額に手を置いた。
「…真美ちゃんのお父さん…」
「…相沢です。」
オレは看護婦さんの手の冷たさを、気持ちよく感じながら答えた。
看護婦は、手を外すとオレの顔をじっと見た。
そして…
「相沢さん、あなたも診てもらった方がいいですよ。」
「…え?」
オレは看護婦の顔を見た。
看護婦は、真剣な顔で
「…多分、真美ちゃんに移されたんでしょうね。」
「…は?」
「二人とも、多分…おたふく風邪です。」
「……え?」
オレは思わず、立ち上がろうとして…
…急に上がった熱で力が出なくて、動けなかった…
 

「…間違いないですね。おたふく風邪です。」
「…祐一…真美…」
「お母さん、紗梨ちゃんはおたふく風邪は、もう…?」
「いいえ、あたしも紗梨もまだで…」
「…じゃあ、旦那さんの熱もひどいことだし、入院させて下さい。」
「…お願いします…」
 
 

7月某日
相沢祐一
おたふく風邪で入院…
 
 

「…結局、お見舞いに来なかったな、真琴…」
「だって…あたし、かかったことないから行くなって、秋子さんが…」
「……まあ、確かに…」
「………」
「…いいって。」
「…うん。あ、でも…」
「…ん?」
「北川さんがご夫婦でうちに来たの。紗梨と真美のお見舞いだって。」
「…オレのとこには来なかったぞ…」
「そんなの、あたし、知らないよぅ…で、その時、変な事言ってたよ。」
「…ん?変なことって?」
「香里さんが、『もう二人も子供が出来た後でよかったわね』って。どういう意味か、祐一、知ってる?」
「………」
「…祐一?」
「……北川に移してやる…」
「……?」

<to be continued>
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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…だんだん、コメディ色がなくなって、ただのほのぼのになってきてるぞ…
「しょうがないでしょう。だんだん、実話ほのコメになってきてますし。」
…言うなぁ(涙)うーん、これからこのシリーズ、どういう方向にしようか…
「一つだけ、分かっていることがありますが。」
…なんだよ。
「シリアスにだけは、ならないでしょうね。」
…なるわけないだろっ!

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