Congratulations!

(にんぎょひめの娘たち-8)


真琴系SS

実感ほのコメと呼んでください(苦笑)

シリーズ:にんぎょひめの娘たち

では、どうぞっ

------
前置き

この物語はフィクションです。
Kanonの登場人物以外の名前、および物語内の出来事に関して
現実の何かに似ている、あるいは髣髴とさせる事物があったとしても
それは偶然の一致です。
ええ、そうですともっ(涙)

-----

Congratulations! (にんぎょひめの娘たち-8)
 

「でも…ホントにちょっと見ない間に、大きくなるわね…」
「うんうん。ホントにそうだよね。」
真琴が抱いている紗梨を、名雪と香里が見つめている。
その隣で、やっぱり紗梨を見ている…北川と秋子さん。
確かにほのぼのな風景なのだが…
…なんでわざわざ、こんなところで…
オレは思わず、あたりを見回した。

ここは…オレの家ではない。といって、秋子さんの家でもない。
ほかでもない…百花屋のテーブルなのだ。
そりゃあ、オレが最初に言い出したんだけど…『とりあえず、どっか行こう』って。
でも、そうも言いたくもなる。
だって…なんだか知らないが、家には入れ代わり立ち代わり、この連中がやってくるし…
それで紗梨や真美を見ながら、いつまでもぺちゃくちゃ話してるし…
だから、ますますいい気になって、真美が落ち着かないし…
「ねっねっねっ、真美にもだっこさせてっ!」
「ほら、真美…あぶないから、手、離しなさいっ」
「あぅー」
…って、言ってるそばからこうだ。
真美は真琴に手を払われて、仕方なく紗梨から離れたけど…それでおとなしくするわけがない。
すぐにオレのところにやってきて
「ねえねえ、パパっ」
「…なんだよ。」
「真美…ジュースほしい。」
「…お前の分、あっただろ?」
「だって〜…もう飲んじゃったもん!」
真美はにっこり笑って、オレを見上げていた。
「…パパのコーヒー、分けてやろうか?」
「いらなぁいっ!!」
真美は顔をしかめると、ぶんぶんと首を横に振って
「だぁってぇ…苦いんだもん!」
「…じゃあ、座ってろ。」
「やだっ」
真美はまた首を振りながら
「…じゃあ、パフェでいいからっ」
…どこが『いいから』なんだ?
オレは真美の顔を見た。
真美はオレを見あげると…にっこり笑って、
「ぱふぇ〜〜〜〜、ぱふぇ〜〜〜〜」
と叫ぶと駆けだそうと…
「待ていっ!」
オレはあわてて真美を捕まえると、その口をふさいだ。
「…もがもが」
何か言いながら、じたばたする真美。
オレはそんな真美を、ともかく逃げ出さないように…
「…何やってるの、相沢くん。」
「……え?」
声に振り返ると、香里がオレを不審そうに見ていた。
そして、同じく見つめる…
「…祐一っ!もう…真美、いじめちゃダメっ!」
…真琴。オレは子供かっ!!
オレは思わず、抗議をしようと立ち上がって…
「………」
気がついた。周り…女子高生ばかりじゃん。
ていうか、ここは元々、そういう喫茶店だし。オレたちみたいな大の大人がいることが、まず珍しいのに…じたばたしている子供の口をふさいで、誘拐犯のようなオレ…
…何か、すっごく視線が…痛いんですけど…
…はう。
オレはともかく、真美を離した。
「…もう、パパの…バカっ!」
「いてっ」
真美はオレを蹴飛ばすと、真琴の方に駆け寄って、オレにアカンベーをすると真琴の腰に抱きついた。
「ママ〜〜〜」
「…それでね…」
でも、真琴は真美を見もせずに、紗梨を抱えて話していた。
…しかし、百花屋に入ってから、かれこれもう…2時間あまり経つのに、全然テンションも落ちずに話し続ける女性陣…
オレはいつもながら、ちょっとあきれていた。
いい加減、ネタも切れないもんかね…
だいたい、何を話してるんだ、さっきから…
オレはほとんど聞いていなかった話を聞くことにした。
「…で、ほら、ずいぶん首が座ってきたでしょ。」
言いながら、真琴が紗梨をテーブルに仰向けにテーブルに載せると、手を引っ張る。
紗梨はニコニコしながら、引っ張られるままに起き上がった。
「ホントだ…首がぐらついてない。」
「でしょ?」
目を丸くする名雪に、真琴はニコニコしながら
「それに、そろそろ寝返りもできるようになったし。」
と、紗梨をテーブルに載せると、手を離して座り込んだ。
もぞもぞと動く紗梨を見つめる真琴、名雪…そして香里。
…なんか、喫茶店まで来てテーブルでそんなことさせられている紗梨って…モルモット?
だいたい、首が座りかけた話って、前にもしてなかったか?なのに、なんでみんなそう真剣にずっと見てられるかな…
「…あ、もうちょっと!」
「…こうなってくると、ホントに…どんどん可愛くなるものね。」
なんだかしみじみと言う香里。隣で頷く名雪。
…確かに可愛いよ。可愛いんだけど…持ってやらなきゃぐずるし…寝る前は寝ぐずるし…今みたいに笑ってるのは、ミルク飲んだ直後しばらくだけだぞ?
それに、隣で真美が騒げば、びくびくして泣くしさ…って、それは真美のせいか…
「あはは、ちょっと顔、赤くなってる。」
「結構、力がいるのかしらね…」
「…そうですね…」
口々に寝返りしようとする紗梨を見て言う名雪、香里…それに、秋子さんまで…
まあ…こんなので2時間以上語っていられるのも…母性本能ってやつなのかね…
オレたち男には…
「…お、やった!寝返ったぞ!!うーん、やっぱり可愛いなあ…」
ころんと回った紗梨に、ひときわ大きな声をあげたのは…
…北川?
「…おい、北川。」
「…あん?」
オレが思わず話しかけると、北川はオレを向いて
「何だよ、今…」
「お前…今日に限って、なにいつまでも一緒になって紗梨、見てるんだ?いつもはいいかげんで飽きるだろ?なのに…どうかしたのか?」
「……え?」
北川はオレの顔を見ながら、目を瞬かせた。
それから、ちらっと香里の顔を見ると
「…いや…」
「………」
香里もいきなり、顔そむけるし。あからさまに怪しい…
「…何なんなんだよ、北川。」
「……えっと…」
また香里を見る北川。
オレも香里の方を見た。
香里…何気に顔、赤くなってきてる気が…
「…ひょっとして!?」
と、同じく香里を見ていた名雪が、ふいに声をあげると
「まさか…香里も?」
「……って、『も』って…名雪?」
香里は、ちょっと赤くなった顔で名雪を見る。
名雪は、ハッとしたように秋子さんをちらっと見て…
…何なんだ、この展開。
名雪も顔、赤いし…
秋子さん…いつもの笑顔…
香里…何か、赤い顔ながらニコニコして…
北川…なんでお前、そんな恥ずかしそうなんだよ…
うーん…これは一体…
「あ、まさかっ!」
その時、オレと同じく不思議そうにみんなの顔を見ていた真琴が、手を叩くと、にっこり笑って
「なんだ、そうだったんだ…それで、みんな紗梨のこと…」
…なにが、そうなんだ?
オレは真琴の顔を見た。
真琴はみんなに頷くと、佐里を抱き上げながらにっこり笑った。
「名雪、香里さん…おめでとう!」
「………ありがと。」
「………ありがとう。」
顔を赤らめながら、頷く名雪と香里…恥ずかしそうに頭を掻く北川…笑っている秋子さん…
…えっと…話、読めないんですけど…
「…何の話してるんだ、真琴?」
オレはしょうがなく真琴に聞いてみた。
「…え?」
真琴はちょっとびっくりしたようにオレを見た。
そして、クスクス笑うと、
「もう…だから祐一、鈍いって言われるのよっ!」
「…悪かったな、鈍くって。で…」
「だからね…」
と、真琴は言葉を切ると、ニコニコしながら名雪と香里を見て
「…二人とも、おめでたなんだってっ!」
…おめでた?
おめでた…めでたい…名雪と…香里?
え?
それって…
「…それって…そういうこと?」
オレは名雪と香里を見た。
二人は顔を見合わせると、ちょっと顔を赤らめながら頷いた。
…そうか…おめでたか…
「で、今、どのくらい?」
「…もうすぐ3ヶ月。」
「…あたしも。」
「そうか…」
オレは名雪と香里の顔をもう一度見た。
…なんか、こいつらが母親になるなんて、想像、つかない…特に、香里…いやいや…
でも…そうか…とうとうか…
「…おめでとう、名雪…香里、北川。」
オレも思わず顔がにやけながら
「そうか…やったな!」

「…ふーん、そうなんだぁ…」
と、その時、真琴の横から真美が顔を出すと、したり顔で頷いた。
そして…

「名雪おばさんと北川のおばちゃん……やっちゃったんだっ!!!」

「………え?」

オレ達は思わず、真美の顔を見た。
真美はにっこり笑うと、もう一度頷いた。
そして…

「おばちゃんたち、やっちゃったんだ〜〜〜〜すご〜〜〜い〜〜」

真美は叫びながら、百花屋の店内を走りだした。

「おばちゃんたち、やっちゃった〜〜〜やっちゃったぁ〜〜〜〜〜」

思い切りでかい声で走り回る真美を
オレ達は呆然と眺めていた…
 

某月某日

相沢家
北川家
水瀬家の面々
しばらく街を歩けなくなる…
 

「何なの、真美っ!あんな…なんであんなこと、叫んだりしたのっ!」
「だって…」
「だいたい、どこでそんな言葉、覚えてきたのよぅ!」
「…あぅー…だって…この間…」
「この間…なに!?」
「…この間…台所でガチャンって大きな音がした時、ママ…やっちゃった〜〜って叫んでたじゃない…」
「…え、えっと…」
「…で、真美が『どうしたの』って聞いたら、ママ、真美にドロップくれて…『あれはいいことがあった時、言う言葉なのっ」って、教えてくれたから…」
「……真琴。それ、この間、オレの茶わんがいつの間にか新しいのに変わってた時のことじゃないのか?」
「…え…あ…あぅー」
「…何か、気分を変えるとか何とかいってたけど…そういうことか?」
「…あぅー」
「…その上、真美に変なこと…教えるなよ…」
「………はいぃ」
「………ママ、どうして叱られてるの?」
「…あぅー」

今回は…オレのせいじゃないぞっ

<to be continued>

-----
…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…久々に…うーん、ほのぼので可愛いやつら。
「…リハビリですか?」
…ていうか…ねえ。まあ…とりあえず、もしも香里の子供が男の子でも、『しおん』とは名づけないだろうなって、そんな感じ(笑)
「…そういう極一部の内輪受けはやめましょう。」
…御意。ま、そろそろコメディシリーズ書こうかっていう、のろしとでも…
「…書けたら、ですけどね。」
…言うなぁ…某長編が…重いの…

<Back< 戻る >Next>
inserted by FC2 system