Have a Lunch?

(にんぎょひめの娘たち-9)


真琴系SS

実感ほのコメと呼んでください(苦笑)

シリーズ:にんぎょひめの娘たち

では、どうぞ。

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前置き

この物語はフィクションです。
Kanonの登場人物以外の名前、および物語内の出来事に関して
現実の何か、あるいは誰かに似ていると思われる事物があったとしても
それは…間違いなく、絶対に偶然の一致です。
ええ、そうですともっ(涙)

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Have a Lunch? (にんぎょひめの娘たち-9)
 

きーんこーん

「はぅ…やっと昼か…」
オレはイスに座り直すと、大きく伸びをした。
今日は月曜日。
休み明けの会社は…やっぱり疲れる。
それに、今朝は寝坊をしたおかげで、出勤途中にカ○リーメイトをかじっただけだから…ううっ、腹減った…
オレはともかく鞄を開けると、中から包みを取り出した。
いつもの…弁当の包み。
「あ、相沢さん、今日も愛妻弁当なんですね〜」
「うらやましいですね〜」
お昼を食べに外に出ようと、ちょうど後ろを通りかかった女性社員たち。
オレは…思わず苦笑しながら手を振ってみせて
「いや…そんな大層なもんじゃないって。」
「またまた…」
彼女たちはくすくす笑いながら、部屋を出ていった。
オレはそれを見送って…思わずため息をついた。
…マジで、そんなもんじゃないんだよな…
第一、まずお弁当と呼べる物になるまでが…大変だった。
なんたって、作るのがあの…真琴だからな。
普通のご飯さえ、まともに作れるようになったのは…秋子さんの特訓の賜物で、それも結局は結婚してからも1年以上かかって…
ちなみに、結婚前から…というか、あいつ、特訓は還ってきてからずっとやってたんだよな…なのに…
結婚当初はひどかった。食べれない物でも、出来ればいい方で…鍋は穴開ける…フライパンは黒こげ…洗えば茶わんは一つは割る…一度は、マジでキッチンを吹き飛ばすところだったぞ…近ごろのガス代はガス漏れ防止装置が付いてて、ホントによかったって、その時マジでしみじみ思ったよな…
だいたい、あいつはその上、努力ってもんがいまいち好きじゃないからな…すぐに楽に流れるし。さすがに一度、1週間コンビニ弁当が続いた時は、オレもさすがに…
…ていうか、その頃もう3才になっていた真美が、真琴に『ママ…手抜き』とか言ってくれたおかげで、さすがに真琴も反省してたんだよな…
そんな真琴だから、お弁当もな…まあ、最近はちょっとはマシになってるんだけど。
だから、オレは弁当は要らないと言ってるんだけど…貧乏だし(涙)
しくしく…どうせ、オレの安月給じゃ…
それに、最近は真美の幼稚園のお弁当も作らなきゃならないから、オレの分も一緒に作らなきゃってことで…
…オレは真美のおまけか?
いや…
………
オレは首を振って、包みを開けた。
いつものぴろ似の猫柄のお弁当箱が…
………
…猫柄っていうか…これ…キ○ィちゃん?
いつの間にぴろ、キ○ィちゃんになったかな…
…って、そんなわけないだろっ
「…はあ。」
オレは思わず、ため息をついた。
多分…オレか真琴が朝の慌ただしさの中で間違えたのだろう。
これは…真美のお弁当箱だ。
「…これじゃ、足らないよな…」
真美のお弁当箱だから、当然、オレのものより小さいのだ。
でも…ないよりはましか…
オレはため息をつきながら、弁当箱を開けた。
そして…

トゥルルルルルルルル

オレの目の前の電話が鳴った。
オレはふたを開けた弁当箱を擬視しながらほとんど無意識に電話を取った。
「…もしもし、こちら…」
「あ、祐一?」
それは真琴の声だった。
「ね、祐一…お弁当、もう食べた?」
「……いや、まだ…」
「あ〜〜、よかった。だったらねぇ…」
「……真琴。ちょっと…」
「……何?」
不思議そうに聞いた真琴に、オレはまだ弁当箱の…それもおかずを見ながら、言わないではいられなかった。
「…なあ、真琴。」
「うん?」
「…オレの弁当のおかずってさ…いつもさ…」
「……?」
「ハンバーグって…いつも黒こげで、半分とか、切れてるよな?」
しかし…真美のお弁当は…きれいなハンバーグが丸のまま。
「クリームコロッケって…いつも割れちゃって、中身が出ちゃってるよな。」
…真美のは、きれいなキツネ色で、行儀よく並んでいる。
「煮物も…いっつもおかず入れにそのままで…汁、よく漏れてるよな。」
ていうか、一度なんておかず入れいっぱいに大きな、大きな…こんにゃくが一枚、入っていて。『美容にいいから、いいじゃないっ!』などと真琴は力説していたっけ…そりゃ、いいだろうさ。栄養分、ないんだからさ…
でも…真美のお弁当は、きちんと別のパックに入って、きれいに小分けされていて…
「…それに、ご飯の上にそぼろとか…載ってたことなんてないよな?」
たまにふりかけが一つ、包みに添えられていることがあるが…そういう場合は、おかずが非常に貧弱なだけだったりする…
でも、真美のご飯の上には…そぼろでハート型なんて書いてあったりして…
…いや、こういう物を書いてくれとは、そりゃあさすがに思わないけどさ…
でも…すごく…なんか、違い…ありすぎないか?
「真琴さぁ…」
「…何よ。」
「…なんでオレの弁当と、真美の弁当…ここまで違うんだよ?」
オレが言うと、電話の向こうで真琴は、やれやれと言う感じで小さくため息をついた。
 

「…あたり前じゃないのよぅ!そんな…祐一のお弁当に入れたみたいな、そんなの恥ずかしくて真美に絶対持たせられないわよっ!でも、もったいないじゃない?だから…祐一のお弁当に入れてあげてるのっ!!」

「………」
 

×月×日
相沢祐一
自分のお弁当が娘のお弁当のおまけであるのみならず
失敗処理のためだけに作られていることに
初めて気がつく
 

「…真琴…お前な…」
「そうそう。そんなことはどうでもいいとして…祐一、まだお弁当、手、付けてないんでしょ?だったら…」
「………?」
「今から急いで真美の幼稚園に行って、真美のお弁当と取り替えてきてよ。真美にあんな恥ずかしいお弁当、広げさせるわけに行かないでしょ?だから…」
「…あの…真美の幼稚園まで、片道30分近くかかるんだけど…」
「だから、間に合うでしょっ?かわいそうじゃないのっ、真美がお昼抜きになったりしたら…」
「…でも、オレのお昼休み…」
「お願いね、祐一。じゃあ…」
「…オレの昼飯の時間…」
「え?何?紗梨が泣いちゃってるからさ、じゃね!頼んだわよっ!」

ガチャン

ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ、
 

…しくしくしく…

<to be continued>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…今回のは…実話じゃないです。
「…まだ、ですね。まだ、あなたの娘さんの幼稚園のお弁当は始まってないですからね…まだ。」
………
「だから、まだ、実話じゃないですよね…」
………うるさぁい(涙)

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