Eine Kleine Naght Musik 2…Zwei


舞SS。

さあ、悲惨な夜は続くのだっ!

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Eine Kleine Naght Musik 2…Zwei
 

目の中を弾丸が突き抜けた。
そんな感じ。
あるいは、頭を鉄パイプで殴られた感じ。
いきなりの感覚に、オレはしゃがみこむ。
いつか…あの時…覚えがある。
頭の中に…暗闇…少女。
舞?
…まい?
そんなはずはない。
やめろ!
オレには…分からない…
オレにはできないんだったら!
オレは…

ふいに切れた感覚。
オレは目をあげる。
自分の部屋。
震える体。
痛む頭。
でも…

オレは立ち上がった。
舞だ。
舞がオレを呼んでいる。
多分…あそこで。
オレは洋服タンスを開けた。
そして、コートを取り出し、奥からずいぶんしまってあった木刀を取り出した。
あの時も役に立たなかったが…ないよりはましだろう。
オレは部屋を飛び出した。

月の明りに白く浮かぶ校舎。
通いなれた通用口。
静かな、静か過ぎる廊下。
リノリウムのぼんやり光る床。
ほのかに月がさす廊下の先に…
「…舞?」
見慣れた舞の姿。
月の明りに照らされて、シルエットが浮かんでいた。
オレは舞に駆け寄ろうと…
「…!?」

壁。
叩きつけられる。
床に転がる。
息が…できない。
振り返る。
夢中で木刀を振る。
ガキッ
吹き飛ぶ
…オレ。
真っ二つの木刀。
壁。
肋骨がきしむ。
床に転がって…

血。
赤い血。
流れた血。
流れている血…
…舞?
足から血を流し
床にひざまずいている…舞。
見下ろしている…舞。
舞。

「一体…」

ひざまずいた舞がオレを見る。
オレを見つめて口を動かす。

バキッ

立っている舞が、その顔を蹴る。
床に転がる…舞。
足を下ろして、オレに微笑む…舞。
見下ろす舞。
剣を握りしめ
オレに微笑む。
冷たい瞳。
あの頃のような。
いや、それ以上の凍った瞳。

「…お前、誰だ?」

オレは舞を見上げて言った。

「わたし?わたしは…舞。川澄舞。」

冷たい舞が微笑んで言った。
凍る瞳のままで言った。

「違う。舞は…そんな瞳じゃない。」

オレは言った。
冷たい舞はオレに近寄った。
オレの顔をじっと見た。

バキッ

オレは吹き飛んだ。
壁に叩きつけられた。
口に血の味。
肋骨がきしむ。

「…わたしは、舞。あなたの知ってる…でも、あなたの知らない、舞。」

冷たい声が廊下に響く。
見上げると、舞がオレを見下ろしていた。
凍る瞳がオレを見据えた。

「…どういう意味なんだ。」

オレはなんとか声を出した。
肺が痛い。
肋骨が折れているかもしれない。

「そうね…」

オレを見下ろしていた舞は、ゆっくりと倒れている舞に歩み寄った。
そして、舞の頭を踏みつけた。

「こいつとは違う舞。10年の時を待った舞。」

「舞は…舞だって、待ったんだ!」

オレの声に、舞はまた微笑んだ。

「でも、あなたと会えたじゃない。わたしは…会わなかった。二度と会わなかった。」

「…え?」

オレは舞の顔を見た。
凍った瞳を見つめた。

「10年間、わたしは待った。魔物を狩りながら。麦畑で。工事現場で。そして…この校舎で。」

舞は廊下を見回した。

「ずっと待った。待っているうちに…待っていることも忘れて。魔物を狩ることだけ覚えていて。魔物を…わたしを狩って。立ち続けた。夜の校舎で。ここで。ずっと。ずっと。」

と、舞はオレを見た。

「分かる?自分で自分を狩る気分。月の光に…自分を狩る気分…ふふ。」

聞いたことのない
聞き覚えのある笑い。

「でも、ある日、わたしの前に少女が現れた。そして、言った。全ては無駄だって。わたしを狩っても…誰も迎えには来ないって。そして、わたしに見せてくれた。わたしが待っていた人が…他の誰かと幸せそうにしているところ。自分は幸せを手に入れてるところ。待っていたわたしは…夜の校舎で自分を狩っているのに。狩っているのに…ふふふ。」

うつろな笑いが廊下に響く。

「おかしいでしょ。笑ってしまう。無駄なこと。無駄な10年。無駄な…無駄なわたし。おかしいでしょ。笑うでしょ。ふふふ…」

うつろな笑いが廊下を包む。

「…笑いなさい!」

舞が足元の頭を踏みつける。
横たわった舞がうめく。
踏みつけている舞が、オレを見て、微笑んだ。

「だから…わたしは旅立った。その子と…わたしの力と。知ってる?わたし達の隣には…たくさんの私たちがいることを。みんな同じような…でも、違う。微妙に違う。わたし達はさまよった。たくさんの世界を…たくさんの時間を…さまよった。さまよって…あてもなくさまよって…ここに、たどり着いた。この、酷い世界にね!」

舞が頭を蹴った。
床に転がる舞。
廊下の端まで転がった。

「わたしはさまよっている…あいつはあなたと一緒にいる。分かる?あなたが他のやつと一緒にいるのは…もういい。そう、もういいこと。だけど…あいつがあなたと一緒にいることは…許せない!絶対、許さない!」

転がった舞が、弾き飛ばされた。
反対側の壁に。
ぶつかって
転がって

「…なぜだ?」

転がっている舞は、動こうとしていた。
オレは転がっている舞の方に、ゆっくりと近づいた。
立っている舞の方を見ながら。

「…なぜ?あたり前じゃない?」

舞は大きく息をしながら、転がる舞を見つめていた。

「こいつのおかげでわたしは…知らされた。わたしが…救われたかもしれないってことを。あの無駄な10年から、あの冷たい校舎から、自分を狩り続けた日々から救われたかもしれないんだって、目の当たりに知らされた。救いがあって…わたしには回ってこなかったってことが!!」

オレは弾き飛ばされた。
壁にぶつかった。
骨が折れる音。
左腕を走る激痛。

舞はオレの顔を見た。
凍った笑みを浮かべ
手にした剣を床に落とした。
そして、転がっている舞に近寄った。

「だから…殺すの。」

「…え?」

オレはかろうじて体を起こした。
左腕は動かなかった。
目はふらついていた。

「あなたの目の前で…こいつを殺すの。そのために、呼んだの。」

舞はオレを見ながら、転がっている舞の胸ぐらを掴んだ。
そして、しゃがみこむと、両手を舞の首に回した。

「ま、待ってくれ。オレは…」

オレは舞に近寄ろうとした。
しかし、力がオレをはばんだ。
まるで壁のようにはばんだ。

「こいつが救われたみたいに、わたしが救われる道は、これだけ。こいつを殺すこと。」

「ばかな!そんなことをしたら、オレは…」

「あなたなんて、もうどうでもいい。わたしは救われたい。わたしが救われることなどなかったってことで、わたしは救われる。分かる?」

舞はオレを見つめた。
凍る瞳で見つめた。

「救われなかった者の気持ちは、あなたには分からないでしょうね。でも…もう、どうでもいい。こいつを殺して、わたしは救われる。わたしは救われることはなかったんだって思えるから。だから…」

「待て!」

オレは叫んだ。
でも、舞の首に回した手に、凍った瞳の舞は力を込めた。
オレの顔を見ながら。
微笑を浮かべながら。
ゆっくりと
でも確実に
力を

「…やめろ!!」

<to be continued>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…あはははは。SFだろ。元来のオレらしいだろ。多重次元理論だよ。元々のEine Kline...は2つの時間線理論だった。でも…時間は二つじゃないかもしれないから。
「…あなたは舞さんを救う気があるんですか?」
…だから、どっちの、だよ。一度は救われた舞?救われなかった舞?
「………」
…考えても見ろ。救いだの、キャラへの愛だのなんて嘘なんだ。オレが真琴の話を書くために、何回、舞を夜の校舎に置き去りにした?何回、栞に会わないように名雪と道に迷った?何回、あゆを夕暮れに見送ったよ?他のキャラを書くために、何回、真琴を熱の中に消した?ほら、見ろ。優しさなんて嘘なんだ。偽善なんだよ。オレたちは平然とキャラたちを見殺しにするんだ。してきたんだ。だから…
「しかし…」
…2日の猶予をやるよ、美汐。その間に、オレを説得できそうになかったら…オレはオレの結末を書く。オレの結末は…今のオレの気分だからさ…あははは…

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