Deus Irae

- Hello, Again - 5


佐祐理さん系SS。

シリーズ:Hello, Again

では、どうぞ

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Deus Irae  - Hello, Again - 5
 

1月31日 日曜日
 

別に用事などなかった。
ただ、家にいるのが退屈なので出かけただけだった。

いつもの商店街は、いつものように適度の人ごみだった。
オレはあたりを見回しながら、思わずあくびをした。
昨日は舞が来るかと、ずっと待っていたのだ。
結構遅くまで、オレは待っていた。
でも…

「……はあ…」

オレは白い息をつくと、ポケットに手を入れたまま歩きだした。
何をする予定もなかった。
何をしたいということもなく…

…いや、本当は、したいと思うことはある。
本当は、舞の家に行って舞に問い質したい。
なぜ、昨日の夜は校舎に行かなかったのか。
なぜ、昨日の昼間、あんな態度をオレに取ったのか。
なぜ…あんな態度を、佐祐理さんに…

『……舞に…聞いてもらえませんか?今日、どうして先に帰ってしまったか…』

佐祐理さんの声が、蘇ってきた。
佐祐理さんの寂しそうな顔が浮かんできた。
あの時の、佐祐理さんの寂しそうな…

「………あ…」

寂しそうな顔。
一人たたずんでいる…ベンチ。

佐祐理さんが一人、ベンチに座っていた。
座ってぼんやりと足下を見つめていた。

オレがもらした言葉に、佐祐理さんは顔を上げた。
そして、オレの顔に目の焦点が合った。

「…祐一さん…」

つぶやくように言うと、佐祐理さんは小さく息を吐いた。
白い息が佐祐理さんの小さな口から漏れた。

「…佐祐理さん…何をしてるんですか、こんなところで?」

オレが聞くと、佐祐理さんはオレの顔をぼんやり見つめた。
そして、ちょっと困ったような微笑を浮かべた。

「…いえ、ただ…座っていました。」
「………」
「……それだけです。」

言うと、佐祐理さんはまた弱く微笑んだ。
いつもの元気な佐祐理さんの声ではない、力ない声。

オレには理由が分かる気がした。
多分、佐祐理さんは…

「…舞と待ち合わせでもしたんですか?」
「……え?」

佐祐理さんはオレの顔を見上げると、小さく首を振った。

「…いえ、そうじゃないんですけど…」
「………」
「…ただ、やっぱり佐祐理の口から聞いてみようと思って…それで…」
「…舞の家に行ったんですか?」

オレの言葉に、佐祐理さんは頷いた。

「…でも、舞、いませんでした。」
「…いなかったんですか?」
「はい。」
「…それで、商店街にいるかもと思って、来たんですか?」
「………いえ、そうじゃないんですけど…」

佐祐理さんは小さく首を振った。
でも、多分、そうなのだ。
佐祐理さんは舞を捜してここにきて、そしてぼんやり行き交う人を見ていたのだろう。
でも…

「…そういえば、祐一さんは…」
「…え?」
「…昨日、舞に会えました?」
「………」

佐祐理さんにオレは首を振ってみせた。

「…そうですか…」
「…すいません。」

オレが頭を下げると、佐祐理さんは小さく首を振りながら

「…いえー、佐祐理が無理なお願いをしたんですから…」
「………」
「……そうですか。舞に昨日は…会えなかったんですか…
「………」

佐祐理さんはつぶやくように言うと、商店街の方を眺めた。
商店街は、変わらず適当な人ごみでにぎわっていた。
日曜の午後らしく、子供たちや大人たち、あるいは学生たち…

「……佐祐理…さん?」
「……はい?」

オレは振り向いた佐祐理さんの顔を見つめた。
ぼんやりとした佐祐理さんの瞳。
オレはその瞳を見つめながら、思い切って

「…もし…よかったら、一緒に…」
「………?」
「………あそこで、しばらく気晴らしでもしませんか?」
「………」

佐祐理さんはオレの指差した方をじっと見た。
オレの指差した場所、それは…

「……でも…」
「……時間は潰せます…よね。それに、商店街の様子も見れますし…」
「………」

佐祐理さんはオレの顔をじっと見つめた。
そして、ちょっと首を傾げた。

「…はい。」

オレは聞こえないように小さくため息をついた。

「…じゃあ、行きましょうか。」
「…はい。」

オレは立ち上がった佐祐理さんの横を、ゆっくりと商店街へと歩いていった。
 

オレが指差したのは、ゲームセンター。
この間のデートの時、既に佐祐理さんがゲームに向いていることは証明済みだった。
そして、そんなお嬢様ぜんとした佐祐理さんに、またたく間にこの間の親衛隊たちが集まったのは言うまでもない。
「…あははーっ、えっと…」
親衛隊に囲まれて、佐祐理さんはちょっと困ったように時折オレを見ていた。
でも、オレは微笑み返しては頷いてみせた。
オレでは佐祐理さんの相手にはならないことは、先日のデートではっきりしていたから。

…デート…
あれをデートと呼んでいいものだろうか。
というよりも、あれをデートと呼ぶことは、オレの…
 

『出会ったんですよ、わたしが頑張れる目標と』
『佐祐理はまだ…まだまだこれからなんです』
『がんばってる最中なんです』
『だから…もう少し待ってくださいね』
 

あの時、オレはその言葉に、ただ申し訳ないだけだった。
そこまで言わせてしまった自分に。
多分、舞が知らないことまで話させてしまった自分に…

…でも、そこまで話してくれたこと。
それが…
 

『だから、いつかは言います』
『それがいつになるかは…佐祐理はダメな女の子だからわからないですけど…』
『いつか、きっと…』
『おはよう、祐一くん』
『って』
 

そして、いつものように笑った佐祐理さん。
その笑顔。
でも、それは…

それは、本当はオレに対しての微笑みじゃなく
それは本当は…
 

『ああ、待ってるよ。別に急いでるわけじゃない』
『ゆっくりいこうぜ』

『はい、祐一さん』
 

…そうオレは言った。
確かに言った。

でも、あの時、オレの中で何か…
何か動いた…それは…

「…あははーっ、えっと…そろそろ…」

佐祐理さんがちょっとだけ、困ったような顔でオレを見ていた。
ちょっとだけ、困ったような…

オレは微笑みながら、親衛隊に囲まれた佐祐理さんに近寄っていった。
 
 

「…あははーっ、また『また明日もお待ちしてます』って言われちゃいましたー」

佐祐理さんは笑いながら紅茶を一口飲んだ。
オレたちはひきとめる親衛隊から逃れて、百花屋で一息ついていた。

「佐祐理さん、ホントに人気者ですよね。」

オレが言うと、佐祐理さんは笑いながら首を振った。

「とんでもないですよ。きっと、みんな佐祐理のことをからかっているんだと思います。」
「違うって。佐祐理さんみたいなお嬢様があんなところにいて、しかもうまいとくれば、もうアイドルになるのは当然なんですよ。」
「…あははーっ、そんなことないですよー」

佐祐理さんはにっこり微笑むと、オレの顔をまじまじと見た。
そして、真顔に戻ると小さく頭を下げた。

「…祐一さん、ありがとうございます。」
「……え?」
「…祐一さん、佐祐理を…慰めてくれたんですね。」
「………いや、そんなこと…」

オレは思わず首を振った。

「…オレはただ…」
「………」
「…ただ、ゲームをしている佐祐理さんが、まあ、見たかっただけなんですけど。」
「…佐祐理は見世物なんですか?」

佐祐理さんはちょっと顔をしかめた。
オレは慌てて手を振ってみせると

「あ、いや…そうじゃなくて…」
「……あははーっ、冗談です、冗談。」

佐祐理さんはにっこり笑うと、またオレに頭を下げた。

「…ホントに、ありがとうございます。」
「……いや…」

佐祐理さんは頭を下げると、オレに微笑んだ。
でも、その瞳は、決して笑っていなかった。
わずかに曇った…大きな瞳。
傾きかけた陽に、陰を作る頭の大きな緑のリボン。
わずかに佐祐理さんが首を傾げた。
途端に、オレの目に太陽が…

「…佐祐理…さん…」

オレは思わず目を閉じて、口を開いていた。
揺れる緑の光…緑の闇がオレの目の中を泳いで…

「…一つだけ、聞いてもいいですか?」
「……はい?」

佐祐理さんの不思議そうな声が聞こえた。
多分、オレが何を聞きたいのか、佐祐理さんは分かっていない。

…いや、オレ自身、何を聞きたいのか…

「…佐祐理さんは…舞を幸せに…するんですよね。」
「………」

目を開けると、佐祐理さんはオレの顔をじっと見ていた。
あの時のように、真剣に見つめていた。
 

『出会ったんですよ、わたしが頑張れる目標と』
 

オレを見つめていた瞳。
確信したように、オレを見つめた瞳…

「…ええ。佐祐理は舞を幸せにしたい…そして、一緒に…」
「……それで…いいんですか?ホントに?」

オレの口から出ていたのは…オレ自身、思いもしない言葉。
オレは自分でも驚いていた。
そして、それは佐祐理さんも同じ…

「……え?」

佐祐理さんはオレを、目を見開いて見つめた。
頭の緑の大きなリボンが、また揺れる。
それに連れて、オレの目に入る陽の光…

「…ひとは、ひとを幸せにして、幸せになれる。そう…佐祐理さんは言いましたよね。」
「ええ。」
「……それで…幸せになったら、どうなるんですか?」
「……え?」

佐祐理さんが、舞としあわせになる…
舞と一緒にしあわせに…

…でも、佐祐理さんと舞は、いつまでも一緒なのだろう…か?

「舞が幸せになる…幸せでいるには…佐祐理さんと別れる必要があったら、その時は…佐祐理さんはどうするんですか?」
「それは…佐祐理は、喜んで舞を幸せに…」
「…それで、一緒に佐祐理さんは、幸せになれるんですか?そんなの…オレだったら、できない…」
「………」

佐祐理さんはオレを見つめていた。
大きな瞳が、オレを見ていた。
オレの姿を映している瞳…

ガタッ

ふいに、佐祐理さんは立ち上がった。
慌てて見上げると、その瞳に…

「………」

そのまま、佐祐理さんは顔を背けると、オレの横を…

…バカだ、オレは…何を言った?
オレは…そんなことを、オレは言いたかったのか?
オレは…

「…さ、佐祐理さん…」

オレは慌てて立ちあがると、駆けていこうとした佐祐理さんの腕を掴んだ。
佐祐理さんの細い腕の、その手首をしっかりと握った。

「佐祐理さん、オレ…」

「…離してください」

佐祐理さんは顔を背けたまま、オレの手を振り払おうとした。
オレは掴んだ手に力を込めて、佐祐理さんを引き戻そうとした。

「…痛い!離してっ!」
「佐祐理さん、オレは…」
「…離してくださいっ!」

佐祐理さんは叫ぶと、振り向いてオレの顔を見上げた。
涙で濡れた瞳で、オレを見上げた。
緑色の大きなリボン。
赤くなった瞳…

「…ひどいっ、祐一さん。佐祐理は…」
「……佐祐理さん、オレは…」
「…離してくださいっ!」

佐祐理さんは首を振ると、オレの手を解こうともがいた。
オレは…

「…佐祐理さん、オレは…」
「…離してください!でないと、佐祐理は…」
「…佐祐理さんっ」

…オレは佐祐理さんを抱きしめていた。
掴んだ手を思い切り引くと、バランスを崩した佐祐理さんの体を受け止めて抱きしめていた。
佐祐理さんの頭の大きなリボンが、オレの目の前にあった。
オレの頬に触れて、かすかに揺れていた。
そして、佐祐理さんの体も…

「…ひどいです、祐一さん…佐祐理は…」
「…ごめん、佐祐理さん…オレは…」
「………」
「オレは、ただ…佐祐理さんが…」

オレは佐祐理さんを抱きしめたまま、その髪に…耳につぶやいていた。
つぶやくように、オレの思うことを…
思って…いたことを…

「舞と幸せに…なれるならそれでいい…いいと思ってた。だけど…」
「………」
「…オレは…その時、どこにいるんだろう?オレは舞と…でも、佐祐理さんは…」
「……祐一さん…」
「…でも、オレは…どこにいるんだろうって…オレは…佐祐理さんの…」
「………」

オレはそれ以上、何も言えなかった。
何を言うつもりもなかったのに。
オレの口から出る言葉は、もうそこまでだった。
それ以上は…頭の中を、まるで緑色の…佐祐理さんのリボンの、緑のリボンの…

「…佐祐理は…」
「………」

佐祐理さんの声がした。
オレの耳元で声がした。
顔を話すと、佐祐理さんがオレを見上げていた。
緑色のリボンが、まだわずかに揺れていた。
オレを抱きしめている…佐祐理さんの腕のように。
オレを見上げている、その大きな瞳のように…

「…祐一…く…」

と、ハッとしたように佐祐理さんは口をつぐんだ。
不意に腕をオレから離すと、何も言わずに振返った。
そして…
 

カランカラン
 

百花屋の黒い、大きなドアの向こう、佐祐理さんの姿は消えた。

オレは黙って立ち尽くしていた。
何も言えないまま。
何を…言ったのか、言いたかったのか…まだ、自分でも分からないまま…
 
 

夜の帳は、とうに降りていた。
今日も月が明るく道を照らしていた。
いつもより、少し遅い時間の道を…

どうしようか、オレは迷っていた。
舞に会いに、校舎に行くべきか…
でも、今日も舞はいないかもしれない。
だったら…

…いや、それは…言い訳だ。
舞に会わないで済ますための…言い訳に過ぎない。
舞に会わずに…佐祐理さんの…

『……舞に…聞いてもらえませんか?今日、どうして先に帰ってしまったか…』

佐祐理さんは…舞を幸せにしたい。
そして、自分も幸せになる…
それが佐祐理さんの目標で…
だから、オレは…
オレができることは、だから…

腕から下げたビニール袋は、今日は重い。
昨日の饅頭は、名雪と秋子さんのお腹に、なんとか納めてもらった。
今日の夜食は…牛丼。
舞の『相当に嫌いじゃない』食べ物。
そして…舞と佐祐理さんの、思い出の…
 

キイッ

いつもの通用口のドアの、かすかにきしむ音。
真っ暗な校舎に、かすかに響いていく。
オレは通いなれたそのドアを閉じると、リノリウムの床を踏んで歩いていった。

カツン
カツン

自分の歩く音だけが、かすかに響く廊下。
月の明かりに、銀に輝く窓ガラス。
幻想的な光景の中、オレの足音だけが、かすかに…

「………ですから…」

…かすかに、声が聞こえた。
誰かの…声が…

「…ねえ、舞…」
「………」

その声は、いつもの角の向こうから響いてきた。
舞の声ではない…でも、聞き慣れた…

「…どうしたんですか?佐祐理が一体…」
「………」

佐祐理さんの声。
佐祐理さんが来ているらしい。
そして、もう一人…

「昨日も…それに、今日も。一日中、家に帰らないで…まるで、佐祐理が来るのを分かってて、佐祐理に会いたくない…そんな風に思ってしまいますよ…」
「………」

無言で立っている、舞。
佐祐理さんは舞の腕をとって、舞に話しかけていた。
オレは…

「舞?ねえ…」
「………」

声をかけられず、オレは角からぼんやりと二人を見ていた。
佐祐理さんに…舞に…
…オレは…

「いったい…」
「…佐祐理。」

と、舞が佐祐理さんを初めて見た。
構えていた剣を右手だけで持って、地面についた。

「…はい?」
「………」

舞はにっこり微笑んだ佐祐理さんの顔を見つめていた。
銀に輝く窓ガラスに、舞の顔が映っていた。
舞の大きな瞳…

「…佐祐理は…祐一のこと、好き?」
「…え?」

佐祐理さんは息を呑んだ。
舞の顔を見つめた。

「………」
「………」

一瞬の沈黙。
そして…

「……あはははーっ、舞…焼いてるんですか?」

佐祐理さんは笑うと、舞の手をポンポンっと叩いた。
そして、またくすっと笑うと

「バカですねー、祐一さんは舞のこと…」
「…答えて。」

でも、舞は佐祐理さんを見つめたままだった。
どこからか、かすかに風が吹いていた。
かすかな風に、舞の髪の紺のリボンが揺れた。
佐祐理さんの頭の、緑色の大きなリボンも…

「……もちろん、好きですよー。だって…お友達ですからー」

佐祐理さんの微笑み。
舞を安心させる、そんな微笑み…

でも、舞は首を振った。

「…佐祐理、ただの友達に、昔の…あの話をするはずない。」
「…え、えっと…」

佐祐理さんの頭のリボンが揺れた。
見つめている舞の顔をオレから隠すように、リボンが揺れて…

「それは、祐一さんは…舞が祐一さんを好きだから、だから…」
「……嘘つき」
「…舞?」

舞の言葉。
佐祐理さんは凍ったように舞を見つめた。

舞は佐祐理さんを見つめていた。
大きな瞳で見つめていた。
そして、静かに、でも確かにまた一言

「……嘘つき…」
「………」

佐祐理さんのリボンが、震えた。
舞の腕を掴んでいる、佐祐理さんの腕…

オレは一歩、足を踏みだした。

それ以上、舞の言葉を止めようとした。
いや、佐祐理さんの言葉…
…いや…ひょっとしたら、オレは…
 
 
 
 
 
 
 

でも

オレが踏み出した時にはもう遅かった。
 
 
 
 
 
 
 

確かに、オレは感じた。

景色が揺れるのを

揺れる銀の廊下

舞と佐祐理さんの、すぐ後ろで
 
 
 
 
 
 

「…おいっ、舞っ!!」

オレは駆け出しながら、舞に叫んだ。
 

舞はオレに気がつき、
次の瞬間、振返った。
 
 
 

「………!」
 
 
 
 
 
 
 

遅い
 

何もかも
 

オレの足も
 

舞が気付いたのも
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「あ、祐一さん、いったい…」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「佐祐理さん、逃げろっ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「………佐祐理さんっ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ドカッ
 
 
 
 
 
 
 

佐祐理さんは、吹き飛んだ

舞が佐祐理さんを突き飛ばした
 
 
 
 
 
 
 

そして…
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「佐祐理さん、伏せろっ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ガキッ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

黒い物が宙を舞った
 

宙を
 

舞って
 
 
 
 
 
 
 
 

ドサッ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

落ちた。
 

まるで、マネキン人形のように
 

命ない人形を投げ出したように
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

髪が広がっていた。
オレの手のそばに広がっていた。
長い髪がまるで扇のように
伏せたオレの手のそばに
 
 
 
 
 
 

オレが覆いかぶさった佐祐理さんの手のそばに
 
 
 
 
 
 
 
 

赤い色
 

赤い色が
 

動かない黒い体の下
 

広がった黒い髪の下
 

オレの手の下
 

佐祐理さんの手の下
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

佐祐理さんは手を持ち上げた。
その手をじっと見つめた。
銀の月の光の下
震えている手
 

赤く染まった手
 
 

赤い
 
 

濡れた
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「………いやぁぁぁぁぁぁぁ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 

血に赤く染まり
血に赤く塗れた
震える手で
佐祐理さんは
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「舞ぃぃぃぃぃぃぃぃっっっっっ」

<to be continued>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…クスクス。やっとここまで来たねえ…クスクス
「…楽しいんですか?」
…別に楽しくはないよ。ただ…言ったとおりだろ?これは…佐祐理さん版Dream/Realだって。オレって…なんて正直なんだろうって、我ながら笑っちゃうじゃん。
「…書く前からネタをバラしてたんですからね。」
…そういうこと。それにさあ、この手のシーン…もう何度目かねえ…なんか、慣れちゃったって言うか(笑)もう…どうして俺のこと、猟奇系作家に認定してくれないんだろうって感じ(爆)
「…切れたんですか?」
…違うよ。オレはね、今…SS書き始めて以来、最高に平衡がとれてるよ。大丈夫。思惑通り、構成どうり…書いてるから。クスクス
「…では、なぜ笑っているのですか?」
…楽しみだから。次回の後書きを書くのが…さ。それが書きたくて…早いとこ次回、書きたかったりするのさ。あはは。さ、美汐さん、仕切り、お願いね。
「…次回、Hello, Again第6回、題名は…『Lacrimosa』」
…訳はね…『涙の日』なんだってさ。佐祐理さんの心情ぴったしだよね…あはは。
「………」
…では、次回まで…

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