願ったことは何ですか?

(Forget me, Forgive me / Original Side-2)


栞&あゆSS。ネタバレあり。

シリーズ:Forget me, Forgive me / Original Side

では、どうぞ

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お姉ちゃんと一緒に
                お母さんと一緒に

校門で待ち合わせ
                駅前のベンチで待ち合わせ

一週間の願い
                3つの願い

        そして

あなたと
                キミと

        そして

        ずっと…
 

願ったことは何ですか? (Forget me, Forgive me / Original Side-2)
 

「あの時計の針が、0時をさすまで…」

「…もう…少しですね…」

「そうだ…もう少しだ…」

「…はい」

そして…
 

2月 1日 月曜日
 

全ては終わりました。
もう終わりました。
最後のパステルが
わたしの手から落ちて

白い雪が
白い
白い雪が

白い紙の上に
白い
白い紙の上に

描かれたわたしの笑顔と共に
寝転んだあなたの涙と共に
わたしを抱いて運んでくれた
お姉ちゃんの涙と共に

わたしの幸せは終わりました。
一週間だけだったけど
わたしのこれまでの一生で
最初で最後の幸せは
もう終わりました。
全て終わりました。
だから

ここにいるわたしは
白いシーツに包まれて
ベッドに寝ているわたしは
もう死んだ抜け殻です。
死体です。
だから

ありがとう、わたしの死。
わたしの中のわたしの死。
待っててくれてありがとう。

もう、いいから。
もう、あなたを待たせない。
全てが終わった今だから。
もう、全て終わったから。

涙だってもう出ません。
もしも力が残っていれば
笑いたいくらいです。
全てが終わった今だから。
願ったとおり終わったから。

あゆさん。
もう謝ることもできないけれど
赦されることもないけれど
赦されようとも思わないけれど
祐一さんを返します。
あなたに返します。
だから

どうか、わたしを赦さなくても
わたしを忘れてください。
わたしを忘れさせてください。
祐一さんに忘れさせて
あの人を幸せにしてください。
わたしを忘れて幸せに
だから

あゆさん…

「…月宮あゆ…」

遠くで聞こえるあなたの名前。
夢の中の声のように
わたしの耳に容赦なく
入ってくるあなたの名前。

「…7年間…」

聞こえる声が
くぐもったような声が
夢の中の声のように
わたしの耳に容赦なく

「…特別病棟…」

なぜか気になる
全てが終わったはずなのに
なぜか気になる声が

わたしは目を開ける。

そんなはずはない。

わたしは死んでいるのに。

だからこれは夢。
夢の中だから。

白い部屋。
金属製のベッド。
腕に繋がるチューブ。
窓の外を通り過ぎる白い影。

これは夢の中だから。

腕のチューブを外す。
ベッドから降りる。
床に転がる。

痛みは感じない。
冷たさも感じない。
だって、これは夢だから。
夢の中だから。

わたしは立ち上がり
わたしはふらついて
わたしは歩いて
わたしは這って

闇の中
夜の闇の中
死の闇の中
動く
動かない闇
動く
動かないわたし

病室を
廊下を
動く
動かない闇
動く
動かないわたし

見上げる闇の中
見上げるほの暗い灯
白いドア
白い窓
白い
白い名札

『月宮あゆ』

なんて酷い夢だろう。
思わず笑ってしまうほど
もしも笑えるならば
死んだわたしに笑えるなら
笑ってしまいたいほど
なんて酷い夢だろう。

わたしはふらついて
ドアに手をかける。

ゆっくりと
ゆっくりとドアが開く。
ゆっくりと
ゆっくりとわたしは倒れ込む。
ゆっくりと
ゆっくりと

銀の月の光が
白い月の光が
部屋を照らして
ベッドを照らして

金属製のベッドを
白いシーツを
白く伸びたチューブを
そこに眠るように
寝転がっている

わたしはそばのベッドに
わたしは手をついて
立ち上がって
なんとか立ち上がって

見つめる顔は
月の光に
照らし出される
見つめる顔は

なんて酷い夢だろう。
覚めてしまいたい。
なぜ覚めないのだろう。
夢なのに。
願いもしない夢なのに

わたしは口を開けて
夢の中で叫ぶように
声のない声で

「…なんでこんなところに?」

振り返る
わたし

立っている
立っている

「…なんでだよっ!」

立っている
あゆさん。

「…栞ちゃん…なんでっ!」

立ち尽くして
わたしを見て
立ち尽くして
立ち尽くして

なんて酷い夢だろう。
思わず泣きたくなる
もしもわたしが生きていたら
もしも夢じゃなかったら

何でわたしはこんな夢
死んだわたしが見る夢は
こんな夢
こんな死
こんなものをわたしは

「…なんでだよっ!」

わたしは目を開けた。
あゆさんを見た。
涙で顔を濡らす
あゆさんを見た。

わたしは泣いていなかった。
泣けはしなかった。
笑えもしなかった。
目も閉じられなかった。
もう閉じれなかった。
ただ

ただ立っていた。

これは…夢なのに。
夢のはずなのに
なのに

わたしは立ち尽くしていた
あゆさんは立ち尽くしていた。

<to be continued>

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…筆者です。
「仕切り屋・美汐です。」
…もう…ぼろぼろだね。最低だね。焼き直しだし。それも、二つ。
「…まだ書きますか?」
…オレが…やめた話があるか?途中でやめた話が?
「…愚問ですね。」
…分かってるじゃん。あはは。
「…次回F,F/OS第3回『祈ったことは何ですか?』予定は…」
…次回は、二日後。

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