そして…

(Forget me, Forgive me / Original Side-4)


栞&あゆSS。ネタバレあり。

シリーズ:Forget me, Forgive me / Original Side

では、どうぞ

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あなた
                キミ

わたし
                ボク

死ぬ
                消える

        そして

あなたと
                キミと

        そして

        生きて…
 

そして… (Forget me, Forgive me / Original Side-4)
 

わたしは転がっていた。
天井が見えた。
白い天井だけが
銀の月の光が

なんて酷い現実
これがわたしの現実
わたしの中の死が
迫ってくるのを感じる

わたしは顔を向けた。
あゆさんが見えた。
涙で濡れた顔
涙で濡れた瞳

なんて酷い現実
これがあなたの現実
あなたが消えていくのが
だんだん消えていくのが分かる

これがわたしの
これがあなたの
たった一つの現実
わたしは死んで
あなたは死んで

たった一つの望み
たった一つの願い
たった一つの祈り
それさえも

わたしたちには

許されて

いなかった

これがわたしたちの現実

それが現実

わたしはあゆさんを
あゆさんはわたしを
濡れた瞳が
涙で霞む目で

あゆさんが顔を上げて
床に手をついて

わたしは顔を向けて
あゆさんを見つめて

どうしてわたしが
どうしてあなたが

どうしてわたしたちが
こんな目に遇わなければならないの?
わたしたちがいったい
何をしたというのだろう

何を望めばよかったの?
この酷い現実に

何を願えばよかったの?
この冷たい現実に

何に祈ればよかったの?
こんな現実の中で

そして

あゆさんの手が

そして

わたしは手を伸ばし

そして

わたしたちの手が

繋がって

その手は
まだ
暖かくて

わたしはあゆさんを
あゆさんはわたしを
まだ
感じることができる

だから

「あゆさん…」

だから

「栞ちゃん…」

わたしは
あなたは

わたしたちは

「信じ…ませんか。」

「信じ…よう。」

それだけでいい。
分かっているから。
この酷い世界で
この冷たい世界で
この現実の中で
わたしたちは信じたい。
わたしたちだけは信じたい。
だから

「これは…夢、だよね。」

「これは…夢、です。」

「栞ちゃんの…夢」

「あゆさんの…夢」

「だから、奇跡は起きるんだ。」

「奇跡は、起きます。」

ただの逃避かもしれない。
わたしと
あなたと
逃げているだけかもしれない。
だけど

「もしも…」

「奇跡が…」

「ボクの…」

「わたしの…」

「奇跡が…」

「…一人だけ、だったら…」

あゆさんは、黙った。
わたしは、黙った。
だけど

思っていることは
一つ。
一つだけ。
分かっている
一つだけ。

「祐一くん。」

「祐一さん。」

わたしたちは
同じ人を
愛したから

「忘れて」

「忘れさせて」

「わたしのこと」

「ボクのこと」

「そして」

「幸せに」

あゆさんはわたしに
わたしはあゆさんに
笑って
笑って

ここは酷い世界。
ここは酷い現実。
だけど

この握った手は
暖かい手は
これは現実で
これは夢で

これはあなたの夢
これはわたしの夢
きっとあなたが愛した
きっとわたしが愛した
あの人も
この世界も
愛したくて
愛していた

「これは…夢だから。」

「これは…夢ですから。」

「ボクたちの」

「わたしたちの」

あゆさんの笑い
わたしの笑い

消えていく瞳

わき上がってくる死

銀の月の光の中で

見つめる消えそうな瞳で

見つめる涙で霞む目で

握った手の温もりが

笑顔が

わたしの死が

わたしの

あなたの

死が

しっかりと握って

温もりが

消えそうな

死が

わたしたち
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

望み

願い

最後に一つだけ

望み

願い
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

祈り

この祈りは

誰にしたらいいの?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

そして…

<to be continued>

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