『TRUE LIES』−3rd
 

 詐欺師です。
 あゆの話です。あゆシナリオが大好きな方は…見ないほうがいいかも…
 なんかちょっと複雑です(笑)
 …いえ、今ちょっと別のあゆを書いていたもので…
 それはまた後ほど、ということで。

 これはNo.19695、No.20064の続きです。
 それでは…
 

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     『TRUE LIES』‐3rd
 
 
 

 あゆが、俺を見つめる。
 悲しそうな瞳。
 暮れていく夕日。
 終わる一日。
 終わる命。

「…ねえ、祐一君」

 何度目ともしれない問い。
 答えられなかった問いかけ。
 きっと、今度も…

「ボクのこと…好き?」
 
 
 
 

 あゆの瞳。
 俺の瞳。
 まっすぐに、静かに…
 ただ、みつめあう。
 声もなく。
 動きもなく。
 ただ、お互いの瞳だけを――

 先に口を開いたのは、俺のほうだった。

「俺は……」 
「やめて!」

 しかしあゆが、すぐにその先を止める。

「ごめん…やっぱり、聞きたくない…」 

 俺は開きかけた口をつぐみ、また待つ。
 時を。
 なにかのきっかけとなる、その時を。
 それはあゆがもたらす時。
 俺が、答えなくてはならない時。

「…学校」

 あゆが口を開く。

「ボクの学校…」

 目を伏せたまま、続ける。

「…ここが、ボクの学校」

 赤い光があゆを照らして…

「…今はもう、ボクだけの…」

 うつむくその肩が震えて…

「…祐一君がいたのに…」

 その、声が…

「ずっと昔は、祐一君もいたのに…」

 その言葉が…

「いてくれたのに…」

 夕日が…

「いなくなっちゃったんだよっ!」

「ボクも祐一君も、二人ともいなくなっちゃったんだっ!」
 
 
 
 

 幻が、見えた。
 遠くからこの森を見ていた。
 そこには、一つ高くそびえ立つ巨木があった。
 街のどこからでも見える、とてもとても大きな木…
 それが今、目の前に見えた。
 ただの一瞬だけ。
 
 
 
 

「……あゆ……」

 俺の声は、小さい。
 小さすぎて、あゆには届かないくらいに。
 でも、どんなに大きな声でも、今のあゆには届かなかったかもしれない。
 なぜか、そう思えた。

「…あゆ」

 もう一度。
 届かなくても。

「……あ…」 

「やめてよっ!」

 あゆが声を上げる。
 はっきりとした拒絶の声。

「あゆ…」

 近寄ってその手をとろうとする俺の手を、あゆは邪険に払いのける。

「離してっ!離してよっ!」
「あゆ、落ち着けよ。一体何が…」
「離してったらっ!」
「おい、あゆっ…」

 いつしかそれは口論を通り越していた。
 別れるか否かでもめる恋人同士のような…
 でも、そんな想像も許さないあゆの表情。

「あゆ、いいからとりあえず落ち着けって」
「いやっ!離してよっ!」
「あゆっ!」
「うるさいっ!」
「ちょっと、おい…」
「何も憶えてなかったくせに、偉そうなこと言わないでっ!!」
 
 

 …………え?
 
 
 

 勢いよく俺の腕を振り払った拍子に…

 あゆの手の中から、何かが…
 
 
 
 

 ――ぽとっ。
 
 

 俺の動きが、止まる。
 あゆの動きも止まる。

 二人とも、ただ呆然として。
 
 

「……あ…」

 あゆが小さく声を上げる。
 でも俺は、それすらもできなかった。
 あゆが落とした、天使の人形を見つめて。

 あゆも、慌てて拾おうとはしなかった。
 俺の視線を追うように見つめた後――
 ゆっくりと、それに手を伸ばした。

「……あの、ボク……」

 天使の人形を胸に抱いて、申し訳なさそうにつぶやく。
 それは、さっきの俺への言葉のせいか…
 あるいは…

「……あゆ……」

 震える声をもらす、俺への…
 閉ざしていた記憶の扉を開いてしまったことへの、後悔の念からか…
 俺には…わからなかった…
 

                                 <つづく>

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 あらためまして。詐欺師(問題児)です。
 このシリーズは、終わらせます。それが私の業ですから…
 「詐欺師」は結局、最後まで…
 

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